モバイルアプリ開発の流れと、依頼の際に知っておくべき注意点を解説

アプリ開発の流れは「目的定義→パートナー選定→プロジェクト計画→設計・デザイン→開発→テスト→公開→運用保守」といったようにように進みます。初めてモバイルアプリ開発をする企業は、開発工程を把握していないために、何をどのように進めたらよいか分からない場合もあるでしょう。そこで今回の記事では、モバイルアプリの開発工程と開発を外部に依頼した場合の注意点についてご紹介します。

アプリ開発全体の流れ

初めてのモバイルアプリ開発を成功させるために「よくある失敗例」を学んでおきましょう。こちらの資料では、ありがちな4つの失敗事例をもとに、同じ失敗をしないために知っておくべき対策をご紹介しています。アプリ開発を進める際はぜひご覧ください。
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モバイルアプリの開発手法

モバイルアプリの開発には、自社内で開発する自社開発と外部発注があります。外部発注の場合、開発手法として主に「ウォーターフォール型」または「アジャイル型」が採用されます。ここでそれぞれの開発手法の違いを見ていきましょう。

ウォーターフォール型

ウォーターフォール型は、以下のように企画からアプリのリリースまでのプロセスを段階的に進めて行く開発手法です。

企画 → 計画 → 設計 → デザイン  → 実装 → テスト → リリース

ウォーターフォール型のメリットは、リアルタイムで開発の進捗状況が可視化できるので、どこまで開発が進んでいるのかを把握しやすい点です。一方デメリットとして、仕様や設計をしっかりと固めた上で開発に入るため、時間がかかってしまう点や開発途中での仕様変更に対応しづらくなる点が挙げられます。

アジャイル型

アジャイル型は、国内外のスタートアップ企業で広く活用されており、近年主流となりつつある開発手法です。アジャイル型の開発工程は、「計画→設計→実装→テスト」といった工程を、機能単位の小さいサイクルで何度も回して開発を進めていきます。

アジャイル型のメリットは、機能単位で開発しているため、開発途中の急な仕様変更にも柔軟に対応できる点です。一方デメリットは、具体的な予算や開発工程を判断することが難しいので、予定よりも開発工程がかかり、その分費用がかさんでしまう場合のある点が挙げられます。

モバイルアプリの開発依頼〜公開の手順

モバイルアプリ開発は、いくつかの手順を踏んで行います。ここでは、モバイルアプリの開発依頼から、公開までの流れをポイントと併せて解説します。

自社内で企画を決定する

「企画」は、アプリを開発する目的やイメージを明確にするための重要な工程です。企画段階で目的やアプリのイメージが曖昧ですと、依頼先の制作会社にとってもイメージがつかめず、望んでいたアプリが完成する可能性が低くなってしまいます。

そのため、企画段階で大事なことは目的やイメージを明確化することです。ユーザーのターゲット層や、どういったアプリを開発するかアイデアを出し合いながら内容を明確化することで、理想のアプリを開発してもらうことが可能になります。

アプリ開発を外注する場合、アプリの企画書を用意しておくとスムーズに商談が進みます。アプリの企画書の書き方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

依頼先のパートナーを選ぶ

企画段階でアプリのイメージや目的が明確化できたら、次は制作会社を選ぶ工程です。自社開発できない場合は外部に依頼する必要があり、3つの依頼先があります。

1つ目は、開発会社に依頼する手段です。エンジニアの腕でアプリの完成度が左右されるので、技術力を求めるのであれば大手企業の開発会社がおすすめです。大手企業は優秀で実績のある人材が豊富に揃っており、開発スピードが早いのがメリットになります。

ただし、大手は開発費用が高い傾向なので、費用を抑えたいのであれば中小企業の開発会社に依頼するのも良いでしょう。中小企業でも大手企業に劣らない優秀な人材がいる場合もありますが、設備や人員が少ないため開発スピードが下がってしまう可能性がある点には注意が必要です。

2つ目は、フリーランスに依頼する方法です。しっかりとディレクションをすることができれば、開発会社に依頼するよりも費用を抑えた依頼が可能です。ただし、アプリをリリースするまでに期間がかかる、開発途中で失敗するリスクがあります。また、最適なフリーランスの人材を探す手間がかかります。

3つ目は、クラウドソーシングを利用する方法です。クラウドソーシングは、不特定多数に業務を外注するサービスです。クラウドソーシングのメリットは、費用を抑えて必要な人材を必要なだけ増やすことができる点です。そのため、アプリ開発工程ごとに作業を分担させることもできます。

ただし、クラウドソーシングは基本的にやりとりがすべてオンラインになるので、お互いにどんな人物かが把握しづらく、信頼できる人材かどうかの判断が難しい場合や、納品物の内容や品質についてのイメージの共通認識を持ちづらい場合があり、こちらもしっかりとしたディレクションが必要です。

見積もり

アプリ開発を依頼する場合に必要になるのが「要件定義書」です。要件定義書とは、企画段階で定まったアプリ開発の目的やイメージをまとめたものを記した資料です。要件定義書の内容が分かりやすいと、開発する会社から具体性のある案を提供してもらえる効果があります。

要件定義書に記載する内容については、アプリ開発に至った経緯やアプリの概要・構想、デザイン、画面レイアウトの種類、機能要求などがあります。

設計

依頼するパートナーが決まったら、要件定義書を基に設計していきます。設計段階は、「外部設計」「内部設計」「テスト設計」で構成されています。

外部設計

外部設計は、アプリの操作方法やアプリの構成を決める設定工程です。これは、アプリのリリース時に実際に利用するユーザーが見たり触れたりする部分となります。そのため、設計基準としてはいかに使いやすくできているかが重要です。外部設計で行う具体的な設計内容は、以下の通りです。

(1)方式設計

方式設計では、アプリを実行するインフラストラクチャや、フレームワークやプログラミング言語といったアプリ開発に必要とされる環境を決定します。アプリ全体の構成を決めるだけでなく、セキュリティ対策やコーティング基準などのポリシーについても確定させる工程です。

(2)画面設計

画面設計では、どのような画面が必要とされるのか、ボタンやテキストエリアといった部品にどのようなものが必要なのかを決定すると同時に、デザインを決定します。また、画面デザインだけではなく、どれだけユーザーが直感的で使いやすいアプリを開発するのか、ポリシーを決定することも重要です。

画面設計の工程をスムーズに進めるために必要となるのが「ワイヤーフレーム」です。ワイヤーフレームを作ることで完成イメージが視覚的に共有され、品質向上のための磨き上げ工程が進めやすくなります。

ワイヤーフレームの意味や活用のポイントについては、以下の記事にて詳しく紹介しています。アプリ開発のワイヤーフレームとは何か?ポイントと作り方、ツールなど基本を解説

(3)機能設計

機能設計では、要件定義で定められた機能を満たすために、ログイン時の条件やボタンを押した時の動作など、実装するすべての機能を具体的に洗い出します。また表面上の可動部分に加え、データベース設計やバッチ設計など、アプリ開発の裏側の処理についても決定する必要があります。

内部設計

外部設計で定めた内容を実装させるため、内部設計ではプログラミングに必要な情報や手順などを詳細に設計します。内部設定で行う具体的な設定内容は、以下の通りです。

(1)モジュール設計

プログラムでは、さまざまな処理で同じような機能を組み込むことになります。例えば、画面でボタンを押した時の動作を設計しようとしたとします。ボタンを押した時の動作が、異なる複数の画面で同じ場合、画面単位で実装するのではなく、モジュールとして同じような機能を使い回すのが一般的です。

このように、モジュールをより細かく分割し、具体的に設計するのがモジュール設計なのです。

(2)データ設計

データ設計ではデータの流れを決めたり、データをファイルやデータベースに保存したりするための具体的な場所を決定する工程です。例えば、ユーザーがログイン画面で入力した情報と、データベースに保存されているデータが一致していることを、具体的にどう確認するかを決定します。

(3)プログラム設計

プログラム設計の工程では、設計した内容を担当プログラマーが理解できる水準になるまで、具体的に落とし込みます。プログラムを、そのまま日本語にカスタマイズしたような設計書が作成されるようなイメージです。例えば、ログイン処理のサンプルがあるとします。ログイン情報を入力しボタンを押した時の処理として、「ユーザーIDおよびパスワードがデータベースに格納されているデータと一致するか」、「一致する場合はホーム画面にページ移動する」、「一致しない場合は画面にエラー表示をする」などの内容のことをいいます。

テスト設計

テスト設計は、アプリが実際に正常に作動するか確認するための設計工程です。テスト項目や方法、手順を決定した上で実施します。この工程を経ることで、後の単体テストや複合テストが円滑に行えるようになります。

開発・テスト

設計工程が完了したらいよいよアプリの開発段階に移行します。ここでは、開発や、設計通りに動くかの動作確認、修正を行います。開発工程をスムーズにするためには、プログラミング担当者や開発にかける工数が具体的に決まっているかが重要です。

テスト工程には、単体テストと複合テストの2種類があります。

単体テストは、要件定義書通りにアプリが起動してデータ登録が正確に行われるか確認します。複合テストは、複数のプログラムと結合させた場合に、設計通りにデータのやりとりができているかをチェックします。

また、2つのテスト工程とは別に受け入れテストがあります。受け入れテストで確認することは、ユーザーにとって使いやすいアプリであるか、目的に沿ったアプリとなっているかの確認です。さらに、受け入れテストでは仕様変更が正しく反映されているか、不具合が生じていないかの確認も行います。

アプリのリリース

テスト段階で問題がなければ、アプリをリリースする段階に入ります。アプリのリリース手順は3つに分けられます。

(1)ストア申請を行う

モバイルアプリの場合、iOSとAndroidではリリース手順が異なります。

iOSの場合、iTunes Connectに登録し、AppStoreにアプリ情報を登録すると申請可能です。アプリ申請は、1週間~2週間程度かかります。

Androidの場合は、Google Playデベロッパーに登録し、アプリ情報を登録すると申請可能です。審査には、最大で7日程度が目安となりますが、例外的に7日以上の日数を要する場合があります。

アプリ完成後も、公開に向けた審査には日数を要する点に注意しましょう。審査にかかる期間の目安について、こちらの記事でご紹介していますのでぜひご覧ください。

(2)告知や宣伝を行う

せっかく機能性の高いアプリを公開しても、ユーザーに認知されなければ利用されることはありません。そのため、自社サイトやSNS、レビューサイトなどを活用し開発したアプリの告知や宣伝を行う必要があります。ユーザーが気軽に試せるように、リリースキャンペーンなどを行いましょう。

(3)運用・保守を行う

アプリを公開したあとに、不具合が多発するようでは多くのユーザーが離れてしまいます。そのため、ユーザーが快適にアプリを利用し続けられるように運用・保守を適切に行い、不具合があれば早急に対応を行うことが重要です。ユーザーからの問い合わせに対応できるように、問い合わせ窓口を設置すると良いでしょう。

モバイルアプリの開発依頼を行う際に知っておくべき注意点

ここでは、外部に依頼する場合の注意点を6つご紹介します。

外注のメリット・デメリットを把握しておく

外部開発のメリットは、専門家に依頼することで効率の良いアプリ開発が実現できることです。自社開発よりもクオリティが高く、依頼する範囲によってはアプリリリース後の運用やサポートも請け負ってくれるので安心です。

一方、外部開発のデメリットは、自社が企画したアプリのイメージをしっかり共有できていないと、求めていたものとは異なるアプリが完成してしまう可能性がある点です。

また、専門家であっても得意なジャンル・不得意なジャンルが存在するため、依頼時には見極める必要があります。例えば、ショッピングアプリ開発が得意な開発会社にゲームアプリ開発を依頼することは、クオリティの面で劣る可能性があるからです。

特にゲームアプリ開発は、他のアプリ開発とは異なる特殊で複雑なシステムを構築するため、経験やスキルが必要になります。外部開発を依頼する際は、事前に過去の実績を調べておくと良いでしょう。

アプリ開発を外注する際、重要となるのが外注先企業の選定です。こちらの記事ではそのコツをご紹介していますので、ぜひご覧ください。

開発にかかる期間を把握しておく

アプリ開発にかかる工数は、開発するアプリの種類によって異なります。

簡単な検索アプリやショッピングアプリの開発は3ヶ月ほどで開発することができますが、ゲームやSNSアプリの開発は最低でも半年~1年以上の期間が必要です。

また、アプリの開発形態によっても開発工数は異なります。開発形態には、フルスクラッチ型とクラウド型があります。

フルスクラッチ型は、ゼロからアプリ開発を行う開発形態です。ゼロからの開発なので1年以上の開発工数がかかる可能性もあります。フルスクラッチ型は、開発工数や開発費用は高額になりますが、搭載する機能を細かく調整することが可能です。独自性や自由度が高く、他のシステムに連携する際も柔軟な対応ができます。

一方クラウド型は、開発会社が持つ既存アプリをもとに開発する形態です。プログラミングの作業がシステム連携以外にないので、開発工数も3ヶ月ほどで開発可能です。既存のアプリをもとに開発を行うことで費用を抑える効果がありますが、独自性がなく、開発途中の仕様変更や機能追加によって開発工数が伸びる可能性があります。

作りたいアプリはできるだけ明確に

外部開発には発注内容の明確化は不可欠です。依頼内容がはっきりしていないと、開発会社側もイメージがわかず再現できないため、出来上がりも変わってきます。作りたいアプリを明確にするには関係者でしっかり議論し、以下のような項目に留意しましょう。

(1)ユーザーのニーズを明確にする

ユーザーのニーズは何か、明確にした上で具体的な要件を洗い出していく必要があります。ユーザーのニーズと合致していないと、アプリを開発しても利用されない恐れがあります。

(2)アプリ開発の目的を明確にする

アプリ開発の目的を明確にすることも大切です。ユーザーにどのように利用してもらうのか、そのためにどのようなマーケティングを行うのかなど、アプリをリリースした後のイメージを明確に持ち、それを社内や依頼先のパートナーとも共有できるようにしておきましょう。

アプリ開発を成功させるためには、企画の作りこみが重要です。こちらの記事では、動画付きでアプリの企画書作成のポイントをご紹介していますので、ぜひご覧ください。

依頼先のパートナーにどこまで依頼できるか

アプリ開発を依頼するにあたり、どこまで依頼するべきか判断が難しい場合があります。

例えばiOS対応のモバイルアプリの場合は、審査を通過しないとリリースすることができません。自社で審査手順を把握している場合は問題ありませんが、分からない場合手間がかかってしまい申請に時間がかかる可能性があります。また、審査が通らなかった場合に自社で修正しなければならないケースも生じます。

外部開発を依頼する際には、アプリの審査や審査を通らなかった時の対応まで依頼するのがおすすめです。ただし、機能レベルで審査が通らなかった可能性も視野に入れて、依頼時点で前もって相談しておくことが重要です。

見積もりは複数社に

アプリ開発のコストは、様々な要因によって変動するため、相場がはっきりと定まっていないのが現状です。そのため、複数の会社に見積もりを依頼すると費用に大きな差が生まれる場合があります。

見積書から会社の特色や強み、企業規模を把握することで自社に適した企業を見つけ出すことができるので、必ず見積もりは複数社に依頼しましょう。

価格以外にも大事なポイント

外部開発では、見積もりを安く見積もって受注を増やそうとする企業がいます。たしかに費用が安いことは依頼先を決める1つの要素ですが、エンジニアの技術力や過去の実績も重要視するべき判断材料の1つです。

過去の実績を把握することで、自社で企画したアプリと類似しているアプリを過去に開発しているか、得意なアプリ開発のジャンルが分かります。

また、依頼する会社とのコミュニケーションも重要なポイントです。コミュニケーションがアプリ開発の成功のカギと言っても過言ではありません。やりとりが少ないと双方の認識のずれが生じ、失敗の要因にもなります。

そのため、依頼先選びにおいては担当者との相性も重要になります。相性が悪いとやりとりを重ねても、認識の齟齬が起こり、満足できるアプリ開発にならない可能性があります。一方で担当者との相性がよければ、スムーズに開発に進みイメージ通りのアプリを実現してくれます。

適切なパートナー選びをするためには、見積もりの項目や金額の決まり方について知っておく必要があります。この資料では企業によって見積もり金額に差が出る理由をはじめ、アプリ開発のお金にまつわる基礎知識をご紹介します。
【資料を読む】なぜアプリ開発費の見積もりはこんなにも差が出るのか?

そのほか、お金以外の知識についてはこちらの記事に幅広くまとめていますので、ぜひご覧ください。

まとめ

今回の記事では、モバイルアプリ開発工程の手順と外部開発の場合の注意点について説明してきました。自社のイメージしたアプリの制作を外部開発で実現するには、自社に適した会社の選定が必要です。

開発会社を選定する際は、費用だけに捉われずに、エンジニアの技術力や過去の実績、コミュニケーションの取りやすさも合わせて判断しましょう。

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