動画共有サイト・アプリを開発するポイントとは?構築の手法や注意点も解説
近年、YouTubeなどの動画共有サイトの人気が急速に高まりました。動画共有サイトは、個人の情報収集やエンターテイメントの他、企業によるプロモーション動画の投稿など幅広く活用されています。そのため、動画共有サイトやアプリを開発し、ビジネスとして成功させたい方もいるでしょう。
しかし、動画共有サイト・アプリは、ポイントを押させてしっかり構築しなければ、ビジネスでの成功は難しいのが現状です。
この記事では、動画共有サイト・アプリの概要や、構築の手法および注意点などについて解説します。
動画共有サイトとは?
動画共有サイトとは、ユーザーが動画を投稿することで、不特定多数のユーザーに共有できるサイトです。動画共有サイトは、2000年代前半から世界各国でさまざまなサービスが登場しています。まずは、代表的な動画共有サイトやさまざまな使い道を見てみましょう。
代表的な動画共有サイト
代表的な動画サイトには、以下のようなサービスがあります。
(1)YouTube
動画共有サイトの中でも最大手である「YouTube」は、全世界で月間約25億人以上がログインしており、知名度の高い動画共有サイトです(2023年1月現在)。YouTubeは動画の再生回数に応じて収益が発生するのが特徴です。YouTubeの収益で生活する、いわゆる「YouTuber(ユーチューバー)」という職業も誕生しており、画期的なサービスと言えるでしょう。
参考:Most popular social networks worldwide as of January 2023, ranked by number of monthly active users
(2)ニコニコ動画
ニコニコ動画は、株式会社ドワンゴが運営する動画共有サイトです。ニコニコ動画の最大の特徴は、「視聴者のコメントが動画上に流れる」点にあります。この機能により、視聴者がコメントをしながら、視聴者同士で一体感を持って動画を楽しめるのです。
(3)Dailymotion
Dailymotionは、フランスで誕生した動画共有サイトで、現在ではヨーロッパを代表するサービスとなっています。Dailymotionは、動画の長さは最大1時間と限定されているものの、比較的収益化しやすいのが特徴です。
(4)TikTok
TikTokは、中国の企業であるバイトダンス株式会社が運営する動画共有サイトです。SNS型であることが特徴で、音楽に合わせたダンス動画など短い動画を撮影し共有します。TikTokは若者を中心に流行しており、現在ではさまざまな世代に利用される、最も勢いがある動画共有サービスと言えるでしょう。
動画共有サイトのさまざまな使い道
動画共有サイトには、以下のような使い道があります。
(1)動画コンテンツによる販売促進
最近では、YouTubeなどの動画共有サイトを活用した販売促進も一般的になってきました。動画コンテンツによる販促は、紙媒体などと違って視覚・聴覚両方に訴求できるうえ、印象に残りやすいため販促効果が期待できます。
(2)動画コンテンツの販売
動画共有サイトを通して、動画コンテンツの販売も可能です。また、サブスクリプション方式でサービスを提供したり、e-ラーニングビジネスなどを行ったりもできます。
e-ラーニングのアプリ開発について興味がある方は、以下の記事もぜひご覧ください。
(3)社内向けの研修やマニュアルに活用する
動画コンテンツを社内向けの研修に活用することも方法の一つです。動画による研修には、以下のような効果があります。
・日時や場所に捉われず実施できる
・対面による研修より品質が安定する
・対面による研修よりコストや時間を削減できる
・反復学習できるので理解を深めやすい
また、動画コンテンツは社内向けのマニュアル作成にも活用できます。動画コンテンツに具体的な手順を収録すれば、紙によるマニュアルより具体的なイメージがつかみやすいため、理解しやすくなるでしょう。
動画共有サイト・アプリが持つ主な機能・特徴とは?
動画共有サイトを開発および企画するにあたり、既存の動画共有サイトがどのような機能や特色を持っているかを把握しておくことは重要になります。理由として、動画共有サイトに持たせる機能が多いほど開発費や期間が長くなり、どのような特徴を持たせるかによって開発内容も大きく変わってくるからです。
動画共有サイトが持つ基本的な機能は以下の通りです。
- 会員データ管理機能
- 動画のアップロード機能
- ライブ配信機能
- アップロードした動画の管理機能
- 動画視聴機能
- 動画検索機能
- 決済機能
- コメント機能
- 違反動画の報告機能
- 違反ユーザーのブロック機能
など
このうち動画の「配信」部分についてもう少し掘り下げてみましょう。
動画共有サービスの「配信」は方法の選択も重要
動画共有サイトの開発は、保存動画を共有するのみなのか、生配信を行うかどうかによっても大きく変わります。そのため、構築する動画共有サービスにどの機能を持たせるか、方法の選択が重要です。
動画共有サービスの配信方法には、以下のような種類があります。
(1)ダウンロード型の配信
デバイスに動画データを全てダウンロードしたうえで、再生を行う配信方式のことです。ダウンロード配信には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・動画を一度端末にダウンロードしてしまえば、オフライン環境でも再生可能
・サーバーへの負荷が少ない
・コストが安く済む
デメリット
・動画がコピーされるリスクがある
近年の動画共有サイトには、後述のストリーミングやライブ形式と合わせてダウンロード機能も備えたものが多数あります。例えばYouTubeの場合、有料会員になると動画の一時保存機能が使えるようになり、オフライン環境でも視聴が可能です。
(2)ストリーミング配信
ストリーミング配信とは、動画ファイルのデータを小さな単位に分割し、受信した分から順次再生していく配信方式のことです。ダウンロード配信と違い、動画ファイルを受信しながら順次再生できるため、少ない待ち時間で視聴できます。ストリーミング配信のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
・再生開始が早い
・ライブ放送が可能
・コピーされるリスクが少ない
デメリット
・配信コストが大きくなる
また、ストリーミング配信には、大きく2つに分けられます。
・オンデマンド配信
サーバー上に事前に用意された動画ファイルにアクセスし、動画を見る形式のことです。視聴者は、自分の見たいタイミングで見たいコンテンツを視聴できます。
・ライブ配信
ライブ配信とは、視聴者がリアルタイムで配信される動画を見る形式のことです。配信者と視聴者の間でコミュニケーションが可能で、臨場感を伝えやすいといったメリットがあります。
(3)プログレッシブダウンロード配信
プログレッシブダウンロード配信とは、動画データをダウンロードしながら、同時に再生できる配信を言います。ストリーミング配信に似ていますが、プログレッシブダウンロード配信では、動画データをデバイスに一時ファイルとして保存しながら再生するのが特徴です。プログレッシブダウンロード配信のメリット・デメリットは、それぞれ以下の通りです。
メリット
・一度ダウンロードされたところまでの動画ファイルは、オフライン環境でも再生可能
・ストリーミング配信に比べ配信コストが低い
デメリット
・デバイスに動画ファイルがダウンロードされるため、コピーされるリスクがある
配信方法によってメリット・デメリットは異なるため、目的に合った形式のものを選びましょう。
動画共有サービスはサイトを作るべき?アプリを作るべき?
動画共有サービスの開発を検討する際、「Webサイト」と「アプリ」のどちらを作るべきなのか悩むケースもあるでしょう。ここでは、サイトとアプリでサービスを展開するメリット・デメリットを紹介するとともに、選ぶ際のポイントを解説します。
Webサイトでサービスを展開するメリット・デメリット
動画共有サービスをWebサイトで展開する場合、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・アプリのダウンロードが不要でアクセスすればすぐに利用できる
・ページ内の情報量に制限がない
・サイト側に加えた変更はユーザー側にも素早く反映されるため、いつでも最新情報を表示できる
デメリット
・頻繁に通信を行う必要があるため、インターネット環境の影響を受けやすい
・動画のダウンロード機能の提供が難しい
・Webプッシュ通知は個人情報と紐づけられず、できることが限られる
Webサイトは、情報を検索して到達したユーザーに対してアプローチする使い方になるでしょう。
アプリでサービスを展開するメリット・デメリット
アプリで動画共有サービスを展開するメリット・デメリットは次の通りです。
メリット
・ホーム画面からすぐにアクセスが可能
・Webサイトに比べて通信の頻度が低く、結果的に通信が早い
・ユーザー情報を活用した多機能なプッシュ通知ができる
・動画のダウンロード機能を提供しやすい
デメリット
・ユーザーが利用するにはアプリのダウンロードが必要になる
・Webサイトに比べ掲載できる情報が少ない
・Webサイトに比べ導入コストが高くなるケースがある
・定期的にアップデートが必要で、ユーザー側にも更新をしてもらう必要がある
企画内容やユーザー層によって展開方法を判断しよう
アプリ、webサイトのどちらで動画配信サービスを作るかは、アプリの内容やターゲットとなるユーザー層が判断基準となります。
新しくサービスを立ち上げるのであれば、新規ユーザーに気軽に触れてもらいやすいWebサイトでの展開の方が適している場合があります。一方、アプリが適しているケースとしては、すでに会員を持っている動画共有サイトのリピート顧客維持に活用する場合や、移動中に気軽に見てもらえるようなサービスにする場合などが当てはまります。ターゲットとなる世代がスマホ所有率の高い若年層が中心となる場合も、アプリ展開の方が向いているかもしれません。
新規ユーザーとリピーターの比率や年代といったユーザー層を分析し、企画内容も踏まえたうえでサイト・アプリのどちらにするか判断しましょう。
ちなみに、コストはかかりますが、サイトとアプリを併用する方法もあります。サイトとアプリを併用すれば、新規ユーザーをWebで獲得しながら、アプリ取得を訴求してリピート率向上も見込めます。もし予算に余裕があれば、サイトとアプリの併用も選択肢に入れてみるとよいでしょう。
動画共有サイト・アプリの開発方法
流れを押さえて動画共有サービスの開発を進めれば、成功する確率は高まるでしょう。ここでは、動画共有サイト・アプリの開発方法を解説します。
企画を作成する
まずは、企画を作成します。搭載する機能やターゲットとするユーザー層など、どんな方向性で企画を進めていくのかを明確にしましょう。例えば、「YouTube」では世界中の人が無料で登録でき、誰でも気軽に投稿できます。一方、「ニコニコ動画」では日本国内をメインに、視聴者のコメントが動画上に流れるなど独自の文化が根付いているのが特徴です。こうしたターゲット層や搭載する機能を明確に決めることは、競合との差別化に欠かせません。
アプリの企画書の作り方についてはこちらの記事にてテキスト・動画で解説していますので、ぜひご覧ください。
開発の外注先を決定
次に、開発の外注先を決定します。動画共有サービスを開発する会社はいくつかありますが、それぞれ得意とする分野は異なります。例えば、パッケージの提供をメインとする会社もあれば、ゼロの状態からシステムを構築できる会社などです。
そのため、開発の外注先を選定する際は、過去の実績を調べたうえで求める開発会社を選びましょう。システム構築には高い技術力が必要になるため、条件に合いそうな開発会社をいくつかピックアップしておきます。ピックアップした会社の中から、相見積もりや実際の相談内容を踏まえて、信頼できる開発会社を選ぶと安心です。
外注先の企業を選ぶときのポイントについて、こちらの記事でも解説しています。
要件定義
外注先の決定まで終わったら、要件定義を進めていきます。要件定義とは、システム開発の前段階で、必要な機能や要求などをまとめる作業のことです。具体的には、以下の項目でまとめていきます。
・使用するサーバー
・システム全体における設計
・システムに搭載する機能やデザインなど
要件定義が不明確な状態で外注先と打合せを始めてしまうと、希望するイメージが正しく伝わらず、希望する動画共有サイトの方向性に狂いが生じるでしょう。そのため、求めるイメージを正確に伝えられるように、できるだけ細かく文書や画像で仕様書をまとめることが大切です。
開発・実装
いよいよ開発と実装を進めます。開発会社に依頼してから実装までの期間は、既存のプラットフォームによるパッケージを利用した場合では約2ヵ月が目安です。一方、ゼロからシステムを開発し独自の機能を実装する場合は、さらに長い期間がかかります。そして、実装が終わった後は、動画共有サイトの動作テストを行う段階に移ります。
リリース
ここまできて、ようやくリリースの段階に移ります。リリースに必要な作業内容をよく確認し、万全の体制で臨みましょう。また、動画共有サイトは、リリースして終わりではありません。リリース後にバグが発生することも十分に考えられるため、動作確認を念入りに行う必要があるのです。
このとき、開発会社だけに任せるのではなく、依頼者側もしっかりとチェックしましょう。依頼者側もチェックを行うことで、詳細なフィードバックを開発会社に伝えられ、より良いサービスにつながります。
動画共有サイト・アプリを開発する場合の注意点
動画共有サイト・アプリを開発する際は、「サーバー」が必要です。サーバーとは、「情報やデータといったコンテンツを提供するコンピュータ―」を指します。
一般的なサーバーでも動画配信は可能ですが、回線の送信データ量が少ないため、配信が途中で止まってしまうなどのトラブルが起きる恐れがあります。また、一般的なサーバーは同時にアクセスできる数も限られるため、視聴者が多いとサーバーがダウンしてしまう場合もあるでしょう。
配信形態にもよりますが、動画配信を行う場合は、ストリーミングに特化したサーバーを利用する必要があります
ストリーミングサーバーを選ぶ際は、「転送量」と「ディスク容量」が大きなものを選ぶことが大切です。転送量とは「アクセスがあった際、サーバーからアクセス元に送られる文字・画像・動画といったデータ量」の合計を表します。つまり、転送量が大きいほど、視聴者が動画を視聴する際の回線の混雑が軽減されるのです。一方、ディスク容量とは、「動画や画像などのデータを保管するスペースの大きさ」を指します。動画ファイルはデータサイズが大きくなりやすいため、ディスク容量も一定以上の大きさが求められるのです。
サーバーの転送量やディスク容量が大きいほど性能が高くなる一方で、運用コストが高くなる点には注意が必要です。必要な規模に応じて、コストパフォーマンスの良いものを選びましょう。
まとめ
動画共有サイトは、マーケティングにおける販売促進や社内向け研修への活用など、さまざまな使い方があります。動画共有サイトにはいくつか種類があり、それぞれ機能や特徴、配信方法が異なるため、動画共有サイトの開発を検討する際は目的に合ったものを選びましょう。また、実際に動画共有サイト・アプリの開発をする際は、手順を一つひとつ理解することが大切です。開発には多くの手間や時間、コストがかかるため、スムーズに開発ができるよう、ポイントや注意点を押さえておきましょう。
アプリ開発において知っておくべきポイントについて、こちらの記事に詳しくまとめています。ぜひチェックしてみてください。