システム開発の要件定義とは?進め方から成功のコツまで徹底解説
- 1. はじめに
- 2. 要件定義とは
- 3. なぜ要件定義が重要なのか
- 4. 要件定義の進め方
- 5. 要件定義のおすすめ手法とポイント
- 6. 要件定義を進める上での注意点
- 7. 要件定義を成功させるコツ
- 8. 要件定義を支援するサービス・ツール
- 9. セキュリティ・運用の要件もお忘れなく
- 10. 要件定義と設計・テストの関連性
- 11. 要件定義のアウトプットは誰のため?
- 12. 自社に合った要件定義のやり方を見つけよう
- 13. 要件定義とソフトウェア会社の役割
- 14. 要件定義を外部に発注するときのポイント
- 15. 要件定義は企業のDXを支える基盤
- 16. DX時代の要件定義のあり方
- 17. 要件定義力を高めるために
- 18. まとめ
はじめに
システム開発プロジェクトを成功に導くためには、要件定義が非常に重要です。 要件定義とは、システムに求められる機能や性能などの要件を具体的に定義し文書化することです。 この要件定義が曖昧だったり、抜けや漏れがあると、のちのちシステム開発に大きな影響を与えてしまいます。 そこで本記事では、システム開発における要件定義の基本から、進め方のコツ、よくある失敗例まで、要件定義について詳しく解説します。
要件定義とは
まず要件定義の定義を確認しましょう。 要件定義とは、システム開発において、利用者や発注者の要求をもとに、開発するシステムがどのような機能を持ち、どのような性能を発揮すべきかを明確化し、文書化する作業のことを指します。 つまり、システムを作る前の計画段階で、システムの青写真を作成する非常に重要なプロセスなのです。
要件定義と要求定義の違い
要件定義と似た言葉に「要求定義」があります。 要求定義は利用者の抽象的で大まかな要望を示すのに対し、要件定義はそれをシステム開発者が具体的な形で実現可能な要件として定義したものになります。
要件定義書に記載すべき主な項目
要件定義の成果物である要件定義書には、以下のような項目を記載します。
- 業務要件(システム化の目的、期待される効果)
- 機能要件(システムが実現すべき機能の詳細)
- 非機能要件(性能、信頼性、使用性など、機能以外の要件)
- 制約事項(納期、コスト、技術的制約など)
このように、システム開発に必要な要件を洗い出し、できるだけ具体的に文書化するのが要件定義の目的です。
なぜ要件定義が重要なのか
では、なぜ要件定義が重要視されるのでしょうか。 ここでは、要件定義がシステム開発プロジェクトの成否を分ける理由を説明します。
開発の目的と目標を明確にできる
要件定義を行うことで、システム開発の目的や達成すべき目標を明確にできます。 漠然とした要望を具体的な要件として可視化することで、プロジェクトの関係者全員が開発の方向性を共有することができるのです。
手戻りを防ぎ、コストと納期を抑えられる
曖昧な要件定義のまま開発を進めると、後工程で思わぬ手戻りが発生し、コストと納期が大幅に超過してしまうリスクがあります。 要件を確実に固めることで、手戻りを未然に防ぎ、プロジェクトを計画通りに進められます。
利用者の満足度を高められる
利用者の要望を的確に要件定義書に落とし込むことで、利用者の求めるシステムを提供でき、満足度を高められます。 逆に要件定義が不十分だと、出来上がったシステムが利用者の期待とかけ離れてしまう恐れがあります。
このように、要件定義はシステム開発プロジェクトの成功に直結する重要なプロセスなのです。
要件定義の進め方
それでは、要件定義は具体的にどのように進めればよいのでしょうか。 ここからは、要件定義の基本的な流れを追って説明していきます。
1. 要求のヒアリング・分析
まずは利用者や発注者から要求をヒアリングし、分析します。 ヒアリングでは5W1H(When/Where/Who/What/Why/How)を意識し、要求の背景にある真の課題を掘り下げることが重要です。 ヒアリング結果はユーザーストーリーなどの手法で整理し、システムに求める要件のラフスケッチを作成します。
2. システム化の方針決定
次に、ヒアリング結果をもとに、システム化の方針を決定します。 システム化の目的・目標、実現すべき業務要件、システム化の範囲、対象ユーザーなどを整理し、大まかなシステムのイメージを固めていきます。
3. 要件定義書の作成
方針に従って、先ほど挙げた業務要件、機能要件、非機能要件、制約事項などを具体的に定義し、要件定義書を作成します。 最終的には発注者や利用者に内容を確認してもらい、要件の確定を行います。
4. 要件定義書のメンテナンス
プロジェクト期間中は、要件の変更に柔軟に対応できるよう、定期的に要件定義書のメンテナンスを行うことも重要です。 この際、変更管理の仕組みを用意しておくとスムーズに対応できます。
要件定義のおすすめ手法とポイント
要件定義を進める上で、どのような手法を用いるかは重要な検討事項です。 ここでは、要件定義のおすすめ手法とそのポイントを紹介します。
1. ユースケース駆動法
ユースケース駆動法は、ユーザーの利用シーンを中心に要件を定義する方法です。 ユースケースを用いることで、システムの全体像を把握しやすくなり、網羅的に要件を洗い出せます。 ポイントは、ユーザーの業務フローを正確に理解し、ユースケースを具体的に記述することです。 ユースケース記述のテンプレートを用意しておくと効率的です。
2. エッセンスによる要求開発手法
エッセンス(Essence)は、ソフトウェア開発プロセスを改善するための知識体系です。 要求開発手法では、エッセンスのフレームワークを用いて、要件定義のプロセスを可視化・標準化します。 ポイントは、チームメンバー全員がエッセンスの考え方を理解し、プロセスに沿って進めることです。 エッセンスを用いることで、プロジェクトの進捗や課題が明確になり、チーム全体の生産性が向上します。
3. プロトタイピング法
プロトタイピング法は、早い段階でシステムの試作品(プロトタイプ)を作成し、ユーザーに評価してもらう方法です。 ポイントは、プロトタイプを通じてユーザーの潜在的なニーズを引き出すことです。 紙やExcelを使った簡易的なプロトタイプでも効果的です。 プロトタイプを改善しながら要件を詰めていくことで、ユーザー満足度の高いシステムを実現できます。
これらの手法は、プロジェクトの特性に合わせて使い分けるとよいでしょう。 例えば、大規模プロジェクトではエッセンスによる要求開発手法が、アジャイル開発ではプロトタイピング法が適しています。 要件定義の手法は一つに決める必要はありません。 プロジェクトの目的や制約に合わせて、複数の手法を組み合わせることも有効です。
要件定義を進める上での注意点
要件定義を進める際には、一定の手順に沿って作業を行うことが重要です。 ここでは、要件定義の一般的な進め方と、各ステップで注意すべき点を説明します。
1. 要件定義の目的と範囲の明確化
まず、要件定義の目的と範囲を明確にします。 システム化の目的は何か、どの業務範囲を対象とするのかを関係者で合意しておきます。 曖昧な状態で要件定義を始めると、後々スコープの食い違いなどの問題が発生するリスクがあります。
2. 現状の業務フローと課題の把握
次に、現状の業務フローを可視化し、課題を洗い出します。 業務フロー図やタスク分析などの手法を用いて、業務の全体像を把握することが重要です。 現状分析を十分に行わないと、真の課題が見えてこず、適切な要件を定義できません。
3. To-Beの業務フローと要件の定義
現状分析をもとに、あるべき姿(To-Be)の業務フローを設計します。 その上で、実現すべきシステム要件を定義します。 機能要件、非機能要件、制約事項など、漏れのないように要件を洗い出すことがポイントです。
4. 要件の優先順位付けと絞り込み
洗い出した要件に優先順位を付け、実現する要件を絞り込みます。 予算や納期などの制約条件を考慮しながら、優先度の高い要件から実現していくことが重要です。 優先順位付けには、MoSCoW分析などの手法が活用できます。
5. 要件定義書の作成とレビュー
最後に、これまでの検討結果を要件定義書としてまとめます。 要件定義書には、システム化の目的、業務要件、機能要件、非機能要件、制約事項などを記載します。 作成した要件定義書は、関係者でレビューを行い、内容の妥当性を確認します。
以上が要件定義の一般的な進め方ですが、プロジェクトの特性に応じて、手順や内容は異なります。 例えば、アジャイル開発では、詳細な要件定義は行わず、大まかな要件を決めた後は、スプリントごとに要件を見直していきます。
また、要件定義を進める上では、以下の点に注意が必要です。
- 関係者を巻き込み、コミュニケーションを密にとる
- ユーザー部門とIT部門の認識の違いを埋める
- 専門用語を多用せず、わかりやすい表現を心がける
- システムの利用シーンを具体的にイメージする
- 定期的に要件の見直しを行い、変化に対応する
要件定義は、一朝一夕にはできない難しい作業です。 しかし、手順を踏まえて着実に進めていくことで、プロジェクトの成功確率は格段に上がります。 システム開発の上流工程である要件定義は、時間をかけて丁寧に行うことが何より重要だと言えるでしょう。
要件定義を成功させるコツ
要件定義を成功させるためのコツを4つ紹介します。
1. 現行業務/システムをしっかり把握する
新しいシステムを定義する前に、現行の業務やシステムの課題をしっかりと把握しましょう。 その際、利用者へのヒアリングだけでなく、実際の業務を観察することも重要です。
2. 優先順位をつけて要件を整理する
ヒアリングで収集した要求をすべて要件として盛り込むのは現実的ではありません。 優先度を明確にし、コストと効果のバランスを考えながら要件を取捨選択することが求められます。
3. 専門知識を持ったメンバーを巻き込む
要件定義はビジネスの知識とシステムの知識の両方が必要です。 それぞれの分野の専門家をメンバーに巻き込み、システム部門と利用部門をつなぐ役割を担ってもらいましょう。
4. 定期的なレビューと合意形成
要件の抜け漏れを防ぐため、定期的に関係者を巻き込んだレビューを行います。 その際、利用イメージを共有できるよう、画面や帳票のサンプルを準備するのも効果的です。 最終的には関係者の合意を取り付け、要件を確定させましょう。
要件定義を支援するサービス・ツール
要件定義を効率的に進めるためには、適切なサービスやツールの導入が効果的です。 ここでは、要件定義を支援する代表的なサービス・ツールを紹介します。
要件定義支援ツール
要件定義書の作成をサポートするツールとして、以下のようなものがあります。
- Sparx Systems Enterprise Architect
- IBM Rational DOORS
- Atlassian Jira + Confluence
これらのツールでは、要求の管理、トレーサビリティの確保、ステークホルダー間のコミュニケーション支援など、要件定義に必要な機能が網羅されています。 ツールを活用することで、手作業では管理が難しい大規模プロジェクトでも、要件の一元管理が可能になります。
クラウドサービス
近年では、クラウドサービス上で要件定義を行うケースも増えています。 以下は、要件定義に利用できるクラウドサービスの一例です。
- Cacoo(オンラインの図面作成ツール)
- Google スプレッドシート(オンラインの表計算ツール)
- Dropbox Paper(オンラインのドキュメント共有ツール)
クラウドサービスを使えば、社内だけでなく取引先とも要件定義書をリアルタイムで共有しながら作成できます。 ツールの導入コストを抑えつつ、場所を選ばずコラボレーションできるのが大きなメリットと言えるでしょう。
セキュリティ・運用の要件もお忘れなく
要件定義では機能要件の検討に注力しがちですが、セキュリティや運用の要件も重要な検討項目です。 特に、個人情報を扱うシステムを構築する際は、セキュリティ要件の定義が必須です。
セキュリティ要件の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 不正アクセスの防止
- 情報漏えいの防止
- ウイルス対策
- アクセス制御
また、運用要件としては、以下のような項目を検討します。
- バックアップ体制
- 障害対応手順
- リリース手順
- 教育・トレーニング体制
セキュリティと運用の要件は、システム設計や実装にも大きく影響します。 後工程で手戻りが発生しないよう、要件定義の段階から漏れなく定義しておきましょう。
要件定義と設計・テストの関連性
要件定義は、単独で完結するプロセスではありません。 設計工程やテスト工程とも密接に関連しており、これらの工程と連携することで、初めて高品質なシステムを構築できます。
要件定義書の内容は、設計工程に引き継がれ、システムの詳細設計に反映されます。 設計工程では、要件定義書に記載された機能要件や非機能要件をもとに、具体的なシステムの仕様を決定していきます。 つまり、要件定義の質が、設計の質に直結すると言えるでしょう。
一方、要件定義とテスト工程も深い関わりがあります。 要件定義書は、テストケースを作成する際の重要な input 情報となります。 テスト工程では、要件定義書に記載された機能や性能を満たしているかを検証するため、網羅的にテストを実施します。 要件定義が曖昧だと、テストの精度も下がってしまうのです。
このように、要件定義は上流工程であると同時に、下流工程とのつながりを強く意識する必要があります。 設計やテストの視点を持ちながら、品質の高い要件定義を行うことが、システム開発の成功につながるのです。
要件定義のアウトプットは誰のため?
要件定義のアウトプットである要件定義書は、多くのステークホルダーに関係する重要なドキュメントです。 では、要件定義書は誰のために存在し、どのように活用されるのでしょうか。
エンドユーザー
エンドユーザーは、システムを実際に利用する立場の人たちです。 要件定義書には、エンドユーザーの業務要件や利用シーンが記載されているため、エンドユーザーは自分たちの要望がシステムにどう反映されるのかを確認できます。 システムのイメージを具体化し、開発への理解を深めるためにも、要件定義書はエンドユーザーにとって重要な資料となります。
開発チーム
開発チームにとって、要件定義書はシステム開発におけるバイブルとも言えます。 設計者は要件定義書をもとに設計を行い、プログラマは要件定義書に記載された仕様に従ってコーディングを行います。 また、テスト担当者は要件定義書を参照しながらテストを実施します。 このように、開発チームは常に要件定義書を参照しながら、プロジェクトを遂行していきます。
経営層
経営層は、要件定義書を通じてプロジェクトの全体像を把握します。 特に、プロジェクトの目的や期待される効果は、経営判断に直結する重要な情報です。 要件定義書には、システム化の費用対効果や投資判断に必要な情報が記載されているため、経営層の意思決定を支える重要な資料となります。
このように、要件定義書はプロジェクトに関わるさまざまな立場の人たちに価値を提供します。 ステークホルダーごとの視点を意識しながら、わかりやすく、具体的な要件定義書を作成することが重要だと言えるでしょう。
自社に合った要件定義のやり方を見つけよう
要件定義の進め方は、企業や組織によって異なります。 自社の文化や体制、プロジェクトの特性に合った要件定義のやり方を見つけることが重要です。
例えば、大手SIer企業では、品質や納期を重視するため、しっかりとしたドキュメントの作成や形式的なレビューが求められます。 一方、スタートアップ企業では、スピードを重視するため、ドキュメントはシンプルにし、対面でのコミュニケーションを重視するかもしれません。
また、プロジェクトの規模や難易度によっても、要件定義のやり方は変わってきます。 小規模なプロジェクトでは、1〜2名の要件定義担当者がヒアリングからドキュメント作成までを一貫して行うことも可能です。 一方、大規模なプロジェクトでは、役割分担を明確にし、チームで協力して要件定義を進める必要があります。
自社に合った要件定義のやり方を見つけるためには、過去のプロジェクトを振り返り、うまくいった点・改善点を洗い出すことが有効です。 また、他社の事例を参考にするのもよいでしょう。 業界や規模が似ている企業の事例は、自社の参考になるはずです。
要件定義のやり方に正解はありません。 自社の強みを活かしながら、さまざまな手法を試行錯誤し、自社に最適な要件定義のやり方を追求していくことが重要です。
要件定義とソフトウェア会社の役割
システム開発プロジェクトにおいて、要件定義とソフトウェア会社の役割は異なります。 しかし、両者は密接に関係しており、連携することでプロジェクトの成功につながります。
要件定義は、顧客の業務要件をシステム要件に落とし込むプロセスです。 何を実現するシステムなのか、どのような機能が必要なのかを明確にすることが目的です。 要件定義は、通常、顧客側の担当者が中心となって行います。
一方、ソフトウェア会社は、要件定義の結果をもとに、システムの設計・開発を行います。 要件定義書に記載された内容を正確に理解し、実現可能な形で設計に落とし込むことが求められます。 また、要件の抜け漏れやわかりにくい点があれば、積極的に顧客に確認し、要件の明確化に協力します。
ただし、ソフトウェア会社が要件定義をすべて顧客任せにしてしまうのは得策ではありません。 なぜなら、要件定義の品質が低いと、その後の工程に大きな影響を与えるからです。 ソフトウェア会社は、自社の知見やノウハウを活かし、要件定義の段階から顧客をサポートすることが重要です。
具体的には、以下のような支援が考えられます。
- 業務フローや業務ルールのヒアリングへの同席
- 要件定義書のレビューや改善提案
- 要件の実現可能性の検討や技術的な助言
- 他社の事例や自社の過去プロジェクトの知見の共有
このように、ソフトウェア会社が要件定義に積極的に関与することで、システム全体の品質向上につながります。
ただし、ソフトウェア会社があまりに要件定義に深く入りすぎるのもよくありません。 要件定義はあくまで顧客主導で行うべきプロセスだからです。 ソフトウェア会社は、顧客の意思決定を支援する立場であることを忘れてはいけません。
顧客とソフトウェア会社が、それぞれの役割を理解し、うまく連携することが、要件定義の成功の鍵を握ります。 お互いの強みを活かし、win-winの関係を築くことが何より重要だと言えるでしょう
要件定義を外部に発注するときのポイント
自社で要件定義を行う体制が整っていない場合、要件定義の一部または全部を外部企業やフリーランスのコンサルタントに発注するケースがあります。 要件定義を外部発注する際は、以下の点に留意しましょう。
1. 発注先の選定
要件定義の経験が豊富で、自社の業界や業務に詳しい発注先を選ぶことが重要です。 発注先候補の過去の実績や評判を確認し、信頼できるパートナーを見つけましょう。 また、発注側のニーズを正しく理解し、柔軟に対応してくれる発注先かどうかも重要なポイントです。
2. 役割分担の明確化
外部に発注する業務範囲と、自社で対応する業務範囲を明確にしておく必要があります。 曖昧な責任分担のまま進めると、のちのちトラブルの原因になります。 また、外部メンバーと社内メンバーのコミュニケーション方法やエスカレーション方法なども事前に決めておきましょう。
3. 納入物の定義
外部発注する際は、納入物の内容と納期を明確に定義することが重要です。 要件定義書のテンプレートや記載項目、想定ページ数などを指定するとよいでしょう。 納入物の品質基準を定め、受け入れ条件を明示することで、高品質な成果物を得ることができます。
4. 知的財産権の取り扱い
要件定義の過程で生まれるアイデアやノウハウは、重要な知的財産です。 これらの知的財産権の帰属や利用条件を、契約書で明記しておく必要があります。 適切に知的財産を保護することで、自社の競争力を維持することができます。
5. 予算と支払い条件
要件定義の予算と支払い条件も、事前に合意しておくべき重要な項目です。 外部発注する業務の内容に応じて、適切な予算を設定しましょう。 支払いは、納入物の検収が完了してから行うことが一般的です。 万が一、納期遅延や品質不良が発生した場合のペナルティについても契約書に記載しておくとよいでしょう。
要件定義を外部発注することで、自社にない知見やスキルを活用できるメリットがあります。 一方で、コミュニケーションコストや調整コストが発生するデメリットもあります。 自社の状況を踏まえて、最適な発注方法を検討する必要があります。
いずれにしても、要件定義は、発注側と受注側が一体となって進めるべき重要なプロセスです。 緊密に連携し、WIN-WINの関係を築くことが何より大切だと言えるでしょう。
要件定義は企業のDXを支える基盤
ここまで説明してきたように、システム開発プロジェクトにおける要件定義は、単にシステム構築の前工程というだけでなく、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える重要な基盤と言えます。
企業がDXを推進し、新たなビジネスモデルを構築するためには、業務とITの連携が不可欠です。 要件定義は、業務部門とIT部門が協力して、業務要件をITの力でどのように実現するかを検討するプロセスです。
つまり、要件定義は業務とITの架け橋となり、企業のDX推進の原動力になるのです。 経営層も交えて要件定義に積極的に取り組むことで、DXの成功確度は格段に上がるでしょう。
要件定義の高度化は、これからのIT活用の鍵を握っています。 本記事で解説した知識を活かし、自社のシステム開発プロジェクトにおいて、質の高い要件定義を行っていただければ幸いです。
DX時代の要件定義のあり方
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中で、要件定義のあり方も変化しつつあります。 DX時代における要件定義の留意点を以下に整理します。
1. 業務そのものの変革を視野に入れる
従来のシステム開発では、現状の業務をそのまま電子化することが中心でした。 しかし、DXでは、業務そのものを抜本的に見直し、新しい価値を生み出すことが求められます。 要件定義の段階から、業務変革の視点を持つことが重要です。
2. データ活用を前提とした要件定義を行う
DXの本質は、データの利活用にあると言っても過言ではありません。 データをどのように収集し、分析し、活用するのかを要件定義の段階から考える必要があります。 データ活用を前提とした業務設計が求められます。
3. 柔軟性と拡張性を重視する
DXの世界では、ビジネス環境の変化が速く、システムに求められる要件も刻々と変化します。 そのため、柔軟性と拡張性の高いシステム構成が求められます。 要件定義の段階から、変化に対応できるアーキテクチャを意識する必要があります。
4. 新しい技術の活用を検討する
AI、IoT、ブロックチェーンなど、DXを支える新技術が次々と登場しています。 これらの技術を業務にどのように活用するのかを、要件定義の段階から検討することが重要です。 新技術の適用可能性を探ることが、DXの成功の鍵を握ります。
5. ユーザー視点に立った要件定義を行う
DXでは、ユーザー(顧客)視点に立ったシステム設計が何より重要です。 ユーザーの行動様式や利用シーンを深く理解し、ユーザーにとって価値のあるシステムを要件定義することが求められます。 ユーザー視点を持つことで、DXの真の目的を見失わないようにしましょう。
このように、DXの時代においては、従来とは異なる発想で要件定義を行うことが必要です。 単なるシステム化ではなく、ビジネスの変革を見据えた要件定義が求められるのです。
もちろん、すべてを一度に変えるのは難しいかもしれません。 しかし、一歩ずつでも、DXの視点を取り入れた要件定義を心がけることが重要です。 時代の変化に対応し、競争力のあるシステムを構築するために、要件定義のあり方も進化させていく必要があるでしょう。
要件定義力を高めるために
要件定義力を高めるためのポイントをまとめておきます。
- 業務知識や技術知識を積極的に習得する
- 要件定義の手法や事例を学ぶ
- コミュニケーション力を磨く
- プロジェクトマネジメントのスキルを身につける
- 自社の要件定義のやり方を継続的に改善する
要件定義力は一朝一夕には身につきません。 日々の業務の中で意識的に要件定義スキルを磨き、経験を積み重ねることが重要です。 また、チーム内で知識を共有し、互いに学び合う文化を築くことも欠かせません。
要件定義は、システム開発の成功を左右する重要なプロセスです。 本記事で紹介した知識やポイントを活かし、自社の要件定義力を高めていただければ幸いです。 より良いシステム開発を通じて、お客様に価値を提供し続けられることを願っています。
まとめ
本記事では、要件定義の進め方と注意点、外部発注時のポイント、DX時代の要件定義のあり方について解説しました。 要件定義は、システム開発の成功を左右する重要なプロセスです。 一朝一夕にはできない難しい作業ですが、コツをつかみ経験を積むことで、誰もがスキルを高められるはずです。
特に、DXが加速する今、要件定義力は、これまで以上に重要な競争力の源泉になります。 新しい視点と発想を取り入れながら、要件定義のスキルを磨いていきましょう。 より良いシステム、より良いサービスを生み出すために、要件定義のプロフェッショナルを目指してください。
最後になりますが、要件定義は、システム開発に携わるすべての人に関わる重要なプロセスです。 関係者が一丸となって取り組むことが何より大切です。 本記事が、読者の皆さまの要件定義の実践に少しでもお役に立てれば幸いです。