アプリの重要指標「DAU・WAU・MAU」とは?大企業で改善を行うプロが解説
アプリ運営について調べていると「DAU を伸ばそう」「MAU が重要」「WAU も見るべき」という話をよく耳にします。
「DAU・WAU・MAU って何の略?」「3 つの違いがよく分からない」「どれを重視すればいいの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
◆DAU、WAU、MAU の定義
- DAU(Daily Active Users): 1 日間にアプリを利用したユニークユーザー数
- WAU(Weekly Active Users): 1 週間(直近 7 日間)にアプリを利用したユニークユーザー数
- MAU(Monthly Active Users): 1 ヶ月間(直近 30 日間)にアプリを利用したユニークユーザー数
これらはアプリの健康状態を測る基本指標で、アクティブユーザーとは特定期間内に実際にアプリを起動・操作したユーザーを指します。
実際のところ、これらの指標はアプリの健康状態を測る最も基本的で重要な指標です。適切に活用することで、ユーザーの行動パターンを理解し、効果的な改善施策を立てることができます。
本記事では、アプリ開発会社の株式会社ペンタゴンで代表を務める筆者が、DAU・WAU・MAU の基本から具体的な活用方法まで、詳しく解説していきます。
ちなみに、直近では、大手人材系アプリのWAU改善を支援しており、お客様のアクティブ率改善のサポートをしています。アプリの分析・改善でお悩みの方は、ぜひ一度、株式会社ペンタゴンまでご相談ください。
そもそも「アクティブユーザー」とは?
アクティブユーザーとは、特定の期間内に実際にアプリを利用したユーザーのことを指します。
単にアプリをインストールしただけでなく、実際にアプリを開いて何らかの操作を行ったユーザーがアクティブユーザーとしてカウントされます。
◆アクティブユーザーの定義例
- アプリを起動した: 最も基本的な定義
- 特定の機能を利用した: ログイン、投稿、購入など
- 一定時間以上利用した: 30 秒以上の利用など
- 複数の画面を閲覧した: アプリ内での行動量を重視
アプリの種類や目的によって、何をもって「アクティブ」とするかは異なりますが、一般的にはアプリを起動して何らかの操作を行うことがアクティブと定義されます。
アプリの「アクティブ率」を知ることはなぜ重要なのか?
DAU・WAU・MAU はいずれもユーザーの「アクティブ率」を示すものであり、アクティブ率の分析がアプリにとって重要な理由は以下の通りです。
多くの企業が「アプリをリリースしたらユーザーが使ってくれるだろう」と考えがちですが、実際には、インストールしたユーザーの約 80%が 3 日以内にアプリを使わなくなるというデータもあります。(New data shows losing 80% of mobile users is normal,and why the best apps do better)だからこそ、アクティブ率の継続的な監視と改善が不可欠なのです。
理由 ① ユーザーエンゲージメントの測定
アクティブ率が重要な理由は、アプリがユーザーに価値を提供できているかを計測する指標となるからです。アクティブ率は、ユーザーがアプリにどの程度関心を持ち続けているかを示します。高いアクティブ率は、アプリがユーザーの日常生活に根付いている証拠です。
単にダウンロード数が多いだけでは、真のユーザー満足度は測れません。実際に継続的に利用されているかどうかが、アプリの真の価値を表します。高いアクティブ率を維持できているアプリは、ユーザーにとって欠かせない存在となっており、長期的な成功につながります。
理由 ② 収益予測の基盤
多くのアプリビジネスでは、アクティブユーザー数が収益に直結します。アクティブ率を正確に把握することで、将来の収益を予測できます。
広告収益モデルでは DAU が広告表示回数に影響し、サブスクリプションモデルでは MAU が継続課金率に関係します。アクティブ率の推移を分析することで、収益の変動要因を理解し、適切な事業計画を立てることができます。
理由 ③ 改善施策の効果測定
新機能のリリースや UI 改善の効果は、アクティブ率の変化で測定できます。施策前後のアクティブ率を比較することで、改善効果を定量的に評価できます。
例えば、プッシュ通知の最適化により DAU が 10%向上した、オンボーディングの改善により Day7 継続率が 15%改善したなど、具体的な数値で施策の成果を把握できます。これにより、効果的な施策は継続・拡大し、効果の低い施策は見直しや停止を判断できます。
DAU・WAU・MAU とは?アプリ運営に欠かせない基本指標
それぞれの指標の詳細な定義について解説します。
DAU(Daily Active Users:日間アクティブユーザー数)
DAUの定義 :1 日間にアプリを利用したユニークユーザー数
DAUの特徴
- 最も即効性のある指標
- 日々の施策効果をリアルタイムで確認可能
- 曜日による変動が大きい
DAU は最も短期間でのユーザー行動を測る指標です。平日と休日で大きく変動することが多く、ビジネス系アプリは平日が高く、エンターテイメント系アプリは休日が高くなる傾向があります。この変動パターンを理解することで、アプリの利用特性を把握できます。
DAUの活用例
- プッシュ通知の効果測定
- 新機能リリース直後の反応確認
- キャンペーン効果の即日分析
プッシュ通知を送信した日の DAU 変化を見ることで、通知の効果を即座に判断できます。また、アプリアップデートや新機能リリース後の DAU 推移により、ユーザーの反応を素早く把握し、必要に応じて改善策を講じることができます。
WAU(Weekly Active Users:週間アクティブユーザー数)
WAUの定義: 1 週間にアプリを利用したユニークユーザー数
WAUの特徴:
- DAU の変動を平滑化した指標
- 週単位のトレンド把握に適している
- 多くのアプリで安定した指標となる
WAU は DAU の日々の変動を平均化し、より安定したトレンドを把握できる指標です。週末の利用パターンや平日の利用習慣を総合的に評価でき、アプリの真の成長性を測るのに適しています。
WAUの活用例:
- 週単位でのユーザー行動パターン分析
- アップデート効果の中期的な評価
- 競合分析での比較基準
週単位での分析により、特定の曜日に依存しない真のユーザーエンゲージメントを測定できます。また、アプリアップデートの効果を評価する際、一時的な変動に惑わされることなく、持続的な改善効果を判断できます。
MAU(Monthly Active Users:月間アクティブユーザー数)
MAUの定義: 1 ヶ月間にアプリを利用したユニークユーザー数
MAUの特徴:
- 長期的なトレンド把握に最適
- 投資家や経営陣への報告指標として重視される
- 季節性の影響を把握しやすい
MAU は最も長期的な視点でのユーザーエンゲージメントを示す指標です。月単位での成長率や季節的な変動パターンを把握でき、事業の長期的な健全性を評価するのに最も適しています。
MAUの活用例:
- 事業計画の策定
- 投資判断の材料
- 年間を通じた成長率の評価
投資家向けの報告や事業計画の策定では、MAU の成長率が重要な指標となります。また、年末年始やゴールデンウィークなどの季節的な変動パターンを理解することで、マーケティング予算の配分や新機能リリースのタイミングを最適化できます。
DAU・WAU・MAU はどのように使い分けるべき?
各指標は異なる期間におけるアクティブ率を示すため、アプリの種類やサービス提供形態によって重視すべき指標が変わります。
利用頻度別の使い分け
◆ アプリ種類別の重要指標
アプリ種類 | 主要指標 | 理由 | 目標値例 |
---|---|---|---|
ニュースアプリ | DAU | 毎日の情報収集に使われる | DAU/MAU: 20-30% |
SNS アプリ | DAU | 日常的なコミュニケーションツール | DAU/MAU: 25-40% |
ゲームアプリ | DAU | 継続的なエンゲージメントが重要 | DAU/MAU: 15-25% |
EC アプリ | WAU/MAU | 週 1 回程度の利用が一般的 | WAU/MAU: 30-50% |
金融アプリ | WAU/MAU | 週次での残高確認や取引 | WAU/MAU: 25-40% |
ヘルスケアアプリ | DAU | 毎日の習慣化が重要 | DAU/MAU: 30-50% |
旅行アプリ | MAU | 月 1 回程度の利用 | MAU 成長率を重視 |
この表から分かるように、アプリの性質によって最適な指標は大きく異なります。ニュースや SNS のように日常的に利用されるアプリでは DAU を重視し、EC や金融のように計画的に利用されるアプリでは WAU や MAU を重視する傾向があります。
ビジネスモデル別の重視ポイント
広告収益モデル: DAU 重視
広告収益は表示回数に比例するため、日々のアクティブユーザー数が重要です。ユーザーが毎日アプリを利用することで、より多くの広告露出機会が生まれ、収益向上につながります。
サブスクリプションモデル: MAU 重視
月額課金のため、月間の利用継続が収益に直結します。1 ヶ月間のうちに一度でも利用してもらえれば継続率が維持される可能性が高く、解約防止につながります。
アプリ内課金モデル: DAU・WAU 両方重視
日々のエンゲージメントが課金機会を創出します。ゲームアプリなどでは、毎日ログインすることでアイテム購入の機会が増え、週単位でのイベント参加により大きな課金が発生することが多いためです。
EC・マーケットプレイスモデル: WAU・MAU 重視
購入は週単位・月単位で発生することが多く、商品の検討期間も必要なため、中長期的な利用継続が重要です。毎日利用される必要はありませんが、購入検討時に最初に思い浮かべてもらえるアプリである必要があります。
DAU・WAU・MAU の計算方法
基本的な計算方法
DAU: 1 日間にアプリを起動したユニークユーザー数
例:1月15日のDAU = 1月15日にアプリを利用したユニークユーザー数
WAU: 直近 7 日間にアプリを起動したユニークユーザー数
例:1月15日のWAU = 1月9日〜1月15日の期間にアプリを利用したユニークユーザー数
MAU: 直近 30 日間にアプリを起動したユニークユーザー数
例:1月のMAU = 1月1日〜1月31日の期間にアプリを利用したユニークユーザー数
計測・集計する際の注意点
注意① ユニークカウントの重要性
同一ユーザーが期間内に複数回利用しても、1 ユーザーとしてカウントします。重複排除が正しく行われているかを確認することが重要です。
例えば、あるユーザーが 1 日に 5 回アプリを起動しても、その日の DAU には 1 としてのみカウントされます。セッション数(アプリを起動した回数)とアクティブユーザー数(実際に利用したユーザーの数)は異なる指標であることを理解し、目的に応じて使い分けることが重要です。
注意② タイムゾーンの統一
グローバル展開しているアプリでは、基準となるタイムゾーンを決めて統一する必要があります。
日本のアプリでも海外ユーザーがいる場合、どのタイムゾーンを基準とするかで数値が変わってきます。一般的には、主要ユーザーが多い地域のタイムゾーンを基準とするか、UTC(協定世界時)を統一基準とする方法があります。
注意③ アクティブの定義統一
「アプリ起動のみ」なのか「特定アクション実行」なのか、チーム内で定義を統一し、途中で変更しないよう注意が必要です。
アプリを起動しただけでアクティブとする場合と、ログインや投稿などの具体的な行動を行った場合のみアクティブとする場合では、数値に大きな差が生じます。どちらが正しいということはありませんが、一度決めた定義は継続して使用し、変更する場合は明確に記録することが重要です。
DAU・WAU・MAU を計測する方法
アプリ分析に必要なツールと設定方法をご紹介します。
主要な解析ツール
- Google Analytics for Firebase: 無料で高機能
- Adobe Analytics: エンタープライズ向け
- Mixpanel: イベント追跡に特化
- Amplitude: ユーザー行動分析に強み
計測実装のポイント
- SDK 導入: 選択したツールの SDK をアプリに組み込み
- イベント設定: アクティブユーザーとして計測するイベントを定義
- ユーザー ID 設定: 正確なユニークカウントのためのユーザー識別設定
- テスト実行: 正しくデータが取得できているかテスト
Google Analytics for Firebase は無料でありながら、DAU・WAU・MAU の基本的な計測機能を備えており、中小規模のアプリには十分な機能を提供します。より詳細な分析が必要な場合は、Mixpanel や Amplitude などの専門ツールを検討することをお勧めします。
アプリのアクティブ率を高めるための5つのポイント
「数値は測定できているけど、具体的に何をすれば改善できるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
ここでは、アクティブ率を実際に改善するための具体的な手法と、その効果を最大化するための重要なポイントをご紹介します。実際の改善事例も含めて解説しますので、自社アプリの改善に役立ててください。
ポイント ① オンボーディングの最適化
新規ユーザーの初回体験を改善
新規インストール後の最初の体験が、その後のアクティブ率を大きく左右します。チュートリアルの長さ、分かりやすさ、価値体験までの時間を最適化することが重要です。
優秀なアプリでは、インストール後 3 分以内にユーザーがアプリの主要価値を体験できるよう設計されています。長すぎるチュートリアルは離脱の原因となるため、最小限の説明で核となる機能を体験してもらい、段階的に他の機能を紹介していく設計が効果的です。
◆改善の具体例
- EC アプリ:商品検索からカート追加までの一連の流れを 2 分以内で体験できるように設計し、Day1 継続率を改善する
- フィットネスアプリ:初回起動時に簡単な 3 分間ワークアウトを体験してもらい、「手軽に運動できる」体験を提供し、初回完了率を改善する
- 学習アプリ:長いチュートリアルを廃止し、初回から実際の問題を 1 問解いてもらうことで、離脱率を減少させる
ポイント ② プッシュ通知の戦略的活用
適切なタイミングで価値のある情報を配信
過度な通知は逆効果ですが、ユーザーにとって価値のある情報を適切なタイミングで配信することで、再訪問を促進できます。
成功しているアプリでは、ユーザーの利用パターンを分析し、個人ごとに最適なタイミングで通知を送信しています。例えば、ニュースアプリでは通勤時間に、ゲームアプリでは過去のログイン時間帯に合わせて通知を配信することで、開封率とアプリ起動率を向上させています。
ポイント ③ コンテンツの継続的更新
ユーザーが飽きない仕組みづくり
定期的な新コンテンツの追加、イベントの開催、機能のアップデートにより、ユーザーの継続利用を促進します。
月 1 回の大型アップデートよりも、週 1 回の小さな更新の方がユーザーエンゲージメントを維持しやすい傾向があります。新しいコンテンツや機能への期待感を継続的に提供することで、ユーザーがアプリから離れにくい環境を作り出せます。
ポイント ④ パーソナライゼーション
ユーザー個別最適化
ユーザーの行動データを分析し、個人の興味関心に合わせたコンテンツや機能を提供することで、エンゲージメントを向上させます。
機械学習アルゴリズムを活用して、ユーザーの過去の行動パターンから最適なコンテンツを推薦することで、アクティブ率の大幅な改善が期待できます。EC アプリでは商品推薦、ニュースアプリでは記事推薦、音楽アプリでは楽曲推薦など、アプリの種類に応じたパーソナライゼーションを実装することが重要です。
ポイント ⑤ ユーザーフィードバックの活用
継続的な改善サイクル
アプリストアレビューやユーザーアンケートから得られたフィードバックを基に、ユーザビリティを継続的に改善します。
定期的なユーザーアンケートの実施、アプリ内でのフィードバック収集機能の実装、カスタマーサポートでの問い合わせ内容分析など、様々なチャネルからユーザーの声を収集し、それを基にした改善を継続的に行うことで、ユーザー満足度とアクティブ率の向上が実現できます。
アクティブ率改善のためのアクションプラン
「具体的に何から始めればいいの?」という疑問を持つ方のために、アクティブ率改善のための実践的なアクションプランをご紹介します。
30 日間で実施できる改善プラン
Week 1:現状把握と目標設定
▢ DAU・WAU・MAU の正確な計測環境を整備
→ Google Analytics や Firebase の設定確認、テストデータの除外
▢ 競合他社および業界平均との比較分析
→ 自社の現在位置と改善目標を明確化
▢ 最優先改善ポイントの特定
→ 新規ユーザー獲得、継続率改善、再アクティベーションのうち最もインパクトの大きいものを選択
Week 2-3:施策の設計と実装
▢ オンボーディングフローの最適化
→ チュートリアルの簡素化、初回体験の改善
▢ プッシュ通知の最適化
→ 送信タイミング、メッセージ内容、頻度の見直し
▢ A/B テストの設計と開始
→ 1-2 個の主要改善施策について効果を測定
**Week 4:効果測定と改善**
▢ A/B テスト結果の分析と最適化
→ 統計的有意性の確認、効果の高い施策の全面展開
▢ 次の 30 日間の改善プラン策定
→ 今回の結果を受けて、次の改善サイクルを計画
改善効果の目安
上記のプランを実施した場合の改善効果の目安:
- Day7 継続率:5-15% の改善(アプリ種類により変動)
- MAU 成長率:月次 3% 程度の成長率を達成
改善効果はアプリの現在の状態や競合環境によって大きく左右されます。最初の 30 日間はベースラインとなるデータを収集し、次のサイクルでより大きな改善を目指すことが重要です。
まとめ
DAU・WAU・MAU は、アプリの健康状態を測る最も基本的で重要な指標です。
重要ポイント
- アプリの種類により重視すべき指標が異なる
- 正確な計測設定が分析の前提
- 指標の改善には継続的な施策実行が必要
- ビジネスモデルに応じた目標設定が重要
今回ご紹介した「DAU・WAU・MAU の活用方法」を参考にして、アプリのアクティブ率改善を検討しましょう。もし「自社アプリの適切な指標設定を知りたい」「アクティブ率改善の具体的な施策を相談したい」などお考えでしたら、アプリ開発会社の株式会社ペンタゴンをご検討ください。
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