クロスプラットフォーム開発とは?異なるアプリを同時に開発する技術
クロスプラットフォーム開発とは、複数の異なるプラットフォーム(例えば、iOSとAndroid)で動作するアプリやソフトウェアを一度に開発することを指します。
これにより、開発者は一つのコードベースで複数のプラットフォームに対応することができ、時間と労力を節約することができます。クロスプラットフォーム開発には、さまざまなフレームワークやツールがありますが、最も一般的なものにはReact Native、Flutter、Xamarinなどがあります。これらのツールを使用することで、開発者は複数のスマートフォンやタブレットのプラットフォームに対応したアプリを開発することができます。
クロスプラットフォーム開発とは?
クロスプラットフォーム開発とは何か、そのメリット・デメリットについてYouTube動画でもわかりやすく解説しています。これからアプリの制作を検討している方はぜひ参考にしてください。
クロスプラットフォーム開発のメリットは大幅にコストカットできることです。
クロスプラットフォーム開発のメリットをいくつか紹介します。
1. コストの削減
クロスプラットフォーム開発は、複数のプラットフォームで別々に開発するよりも効率的です。1つのコードベースで複数のプラットフォームに対応できるため、開発コストを削減することができます。
アプリのランニングコストも抑えることができます。
iOS・Androidの別々のアプリを運用している場合、iOS側に修正を加え、更にAndroidに修正を加える、といったように2回の修正作業が発生しますが、クロスプラットフォームでは1回の修正で済みます。
2. 時間の節約
クロスプラットフォーム開発では、複数のプラットフォームに対応するために複数の開発チームを必要とせず、1つのチームで開発が可能です。このため、開発にかかる時間を短縮することができます。
従来のアプリ開発では、iOSアプリ開発チームとAndroidアプリ開発チームに分けて2つのチームで開発することが一般的でした。クロスプラットフォーム開発では、iOS・Android開発チームを1つに統合することができ、より効率的な開発をすることができます。
3. 一貫性の向上
クロスプラットフォーム開発は、同じコードベースを使用するため、異なるプラットフォーム上でのアプリケーションの一貫性を保つことができます。ユーザーは、どのプラットフォームを使っていても同じような体験を得ることができます。
iOS・Androidの別々のアプリを運用している場合、iOSとAndroidで挙動や仕様が異なるなど、差が生まれしまうことがあります。クロスプラットフォーム開発では、こういった差分が生まれにくいので、一貫したユーザー体験を提供する可能です。
4. ユーザー層の拡大
クロスプラットフォーム開発により、複数のプラットフォームに対応することができます。これにより、より多くのユーザーにアプリケーションを提供することができるため、ユーザー層を拡大することができます。
日本では、iPhoneユーザーが多いため、従来の開発手法ではまずはiPhoneアプリを開発した後に、しばらくしてAndroidアプリを別途開発する、という流れが主流でした。クロスプラットフォーム開発技術の普及により、iOS・Androidアプリを同時に開発・リリースすることができるようになったので、iPhone・Androidユーザーに一気にアプローチすることができます。
クロスプラットフォーム開発のデメリット制約があることです。
メリットが多いクロスプラットフォーム開発ですが、デメリットも存在します。
1. パフォーマンスの制限
クロスプラットフォーム開発では、複数のプラットフォームをサポートするために抽象化されたフレームワークやライブラリを使用することが一般的です。そのため、ネイティブ言語での開発に比べてパフォーマンスが制限される可能性があります。
2. 機能の制約:
各プラットフォームは独自の機能を持っています。クロスプラットフォーム開発では、これらのプラットフォーム依存の制約をクリアしながら開発する必要があります。例えば、Android端末だとセンサー機能が豊富だったりますが、これらのセンサー情報にクロスプラットフォームのツールがアクセスするためのライブラリが存在しないケースがあります。これにより、開発の自由度が制限される可能性があります。
3. インターフェースの一貫性の欠如
複数のプラットフォームに対応するために、クロスプラットフォーム開発では各プラットフォームのインターフェースに合わせた調整が必要です。そのため、各プラットフォームのデザインベストプラクティスに則った一貫性を保ちにくい場合があります。
例えば、あとで紹介するFlutterという技術であれば、基本的には、マテリアルデザインと呼ばれる、Android風のアプリデザインを採用しています。デフォルトで、iPhoneらしいデザイン「シンプルで美しい」デザインは実現できない形になります。
「iPhoneやこういうデザインで、Androidはこういうデザインで表示する」と調整すれば、それぞれのOSらしいデザインに仕上げることもできるのですが、これをするとソースコードを2重に管理することになるので、クロスプラットフォームの旨味が失われてしまいます。
4. 新しい機能への対応の遅れ
クロスプラットフォーム開発は、新しい機能の登場に対して対応が遅れることがあります。新しい機能に対応するためには、クロスプラットフォーム開発ツールやフレームワークがそれをサポートする必要がありますが、それが十分にリリースされるまで時間がかかることがあります。
5. ツールの不安定さに悩まされることも
クロスプラットフォームの開発ツール自体に不具合があることで、開発がスムーズに進まないケースがあります。アプリ自体のバグ修正ではなく、開発ツールの不具合に時間を要する場合があります。
おすすめのクロスプラットフォーム技術はどれ
後ほど、クロスプラットフォームのツール一覧を紹介しますが、結論、Flutterがおすすめです。
私自身10年ほどアプリ開発していますが、その実体験から、最も安定しているクロスプラットフォームのツールがFlutterだと考えています。また、最近では、ネイティブ言語での開発からのFlutter移行を実施する会社も増えて来ています。弊社でも「コストを削減したいので、ネイティブ言語での開発からFlutterに移行したい」というご相談をいただいております。
FlutterとReact Nativeのどっちが良いのか、という話がよく議論になりますが、React Nativeはあまり良い噂を聞かないのも事実です。React Nativeに移行したけどネイティブ言語に戻す、という事例を聞いたりします。もしReactやJavaScriptが扱えるメンバーが社内で揃っていて、内製でアプリを開発していくなら、React Nativeの採用はありだと思います。
2022 年にstatistaが実施した開発者調査によると、Flutter は世界の開発者の多くが使用するモバイルフレームワークに成長しています。同調査によると、Futterは年々数値が増えており、反対にReact Nativeは減少気味です。
クロスプラットフォームのフレームワーク比較
Flutter
Flutter(フラッター)は、Googleが開発したオープンソースのフレームワークです。Flutterは、モバイル、ウェブ、デスクトップ向けのアプリケーションを作成するためのツールセットを提供しています。
Flutterでは、1つのコードベースでiOS、Android、Webなど様々なプラットフォームに対応することができます。プログラミング言語としては、Dartを使って開発します。
また、FlutterはUIのレンダリングに独自のエンジンを使用しており、高速で滑らかなアニメーションの実現やカスタマイズ性に優れています。さらに、ウィジェットという再利用可能なUIの部品を使用することで、開発効率を向上させることができます。
Flutterを使用することで、開発者はより短期間で高品質なアプリケーションを開発することができます。
近年、最も注目を集めているアプリ開発の技術になります。
Flutterとは?Flutterの特徴・メリット・デメリットを専門家が解説
開発者 | |
リリース年 | 2017年 |
レンダリングエンジン | Skiaグラフィックスエンジン |
プログラミング言語 | Dart |
React Native
React Nativeとは、メタ社(旧フェイスブック)が開発したオープンソースのモバイルアプリケーションフレームワークです。JavaScriptを使用してiOSおよびAndroidの両方のプラットフォーム上で、ネイティブアプリのようなユーザーインターフェースを作成することができます。
React Nativeは、既存のWeb開発スキル(特にReact)を活用してモバイルアプリを開発するため、Web開発者にとっては学習コストを抑えることができます。また、豊富なサードパーティのライブラリもあるため、開発効率を向上させることができます。
Reactは”Learn Once, Write Anywhere” という、一度学べばどのプラットフォームの開発でも使える言語を目指しています。社内の開発をすべてReactに統一し、プログラミング言語の学習コストを抑える戦略の企業もあります。
開発者 | Facebook (現Meta) |
リリース年 | 2015年 |
レンダリングエンジン | ネイティブプラットフォームのレンダリングエンジンを使用 |
プログラミング言語 | JavaScript (React) |
Unity
Unity(ユニティ)とは、ゲーム開発やアプリケーション開発のための総合的な開発環境であり、3Dや2Dのゲームを制作するために使用されます。
Unityはさまざまなプラットフォーム(Windows、Mac、iOS、Androidなど)で動作し、開発者が同じコードベースから複数のプラットフォームに対応することが可能です。
Unityの特徴の一つは、視覚的なエディター環境です。これにより、プログラミングをせずに、直感的かつ効率的にゲームオブジェクトやシーン、アニメーションなどを制作することができます。さらに、Unityは既存のプラグインやアセットを利用することもでき、制作の効率がUPします。
Unityは、ゲームやアプリケーション開発において多くの開発者に利用されており、幅広いジャンルの作品が制作されています。そのため、Unityは開発者同士が情報を共有し、助け合うコミュニティも盛んです。
総合的な機能と開発者間のコミュニティの活発さから、Unityはゲームやアプリケーション開発のための有力なツールとして広く認知され、多くのプロジェクトで使用されています。
開発者 | Unity Technologies |
リリース年 | 2005年 |
主要な用途 | ゲーム開発、VR/ARアプリケーション |
プログラミング言語 | C# |
Kotlin Multiplatform Mobile
Kotlin Multiplatform Mobile(KMM)は、Kotlinプログラミング言語を使用してネイティブモバイルアプリケーションを開発するためのフレームワークです。KMMを使用すると、iOSとAndroidアプリの共通部分を1つのソースコードにまとめて開発することができます。
プログラミング言語としては、Kotlinを使って開発します。Kotlinは、Javaとの互換性があり、シンプルで読みやすい言語です。
もしKotlinの知識があれば、効率的なモバイルアプリ開発を実現できます。KMMは共通のビジネスロジックを一度書くだけで済みます。したがって、プラットフォーム固有のコードを最小限に抑えることができ、開発が迅速になり、保守も容易になります。
2020年に登場した新しい技術なので、他のツールに比べて、まだ利用者数が少ないのが懸念点です。
項目 | 詳細 |
開発者 | JetBrains |
リリース年 | 2020年 (KMMのベータ版リリース) |
主要な用途 | クロスプラットフォームモバイルアプリ開発 |
プログラミング言語 | Kotlin |
Xamarin
Xamarin(ザマリン)は、マイクロソフトが提供しているソフトウェアプラットフォームです。Xamarinは、C#を使用してネイティブなモバイルアプリケーションを開発するためのツールキットを提供します。
2011年にリリースされた技術で、歴史が長いのが特徴です。社内にC#のエンジニアが多い場合は、Xamarin(ザマリン)の採用をまずは検討するのが良いでしょう。
※「Xamarin」は2024年5月1日にサポートを終了する予定です。
開発者 | Xamarin, Inc. (マイクロソフトに買収され現在はマイクロソフトの一部) |
リリース年 | 2011年 |
主要な用途 | クロスプラットフォームモバイルアプリ開発 |
プログラミング言語 | C# |
Ionic
Ionic(アイオニック)とは、クロスプラットフォームのモバイルアプリ開発フレームワークです。IonicはHTML、CSS、JavaScriptを使用してアプリを開発するため、一度のコーディングでiOS、Androidなどの複数のプラットフォームに対応したアプリを作成することができます。IonicはAngularJSやReactといった人気のあるフレームワークとも組み合わせることができ、アプリの開発がより簡単で効率的になります。さらに、Ionicはプリセットのデザインやコンポーネント、テーマを提供しており、アプリの見た目やパフォーマンスも向上させることができます。
開発者 | Drifty Co. (現在のIonic Team) |
リリース年 | 2013年 |
主要な用途 | クロスプラットフォームモバイルアプリ開発 |
プログラミング言語 | HTML, CSS, JavaScript (Angular, React, Vueをサポート) |
Cordova
Cordova(コルドバ)とは、Apache Cordovaとも呼ばれ、モバイルアプリケーション開発フレームワークの一つです。Cordovaは、HTML、CSS、JavaScriptを使用してクロスプラットフォームのモバイルアプリケーションを開発することができます。
開発者 | Apache Software Foundation |
リリース年 | 2009年 (元々PhoneGapとしてリリースされ、後にApache Cordovaに改称) |
主要な用途 | クロスプラットフォームモバイルアプリ開発 |
プログラミング言語 | HTML, CSS, JavaScript |
コストを抑えるならガワアプリという手段も
ガワアプリとは、アプリ内ブラウザを使用して特定のWebサイトを表示するアプリです。既存のWebサイトをベースにしてアプリを作成できるため、比較的小規模な開発で済みます。故に、開発費を抑えることができます。ユーザーには通常のアプリと同様に見え、App StoreやGoogle Playからインストールし、使用することができますが、Webブラウザと同程度の性能となります。
まとめ
2024年時点で、スマホアプリを開発する場合、まずはネイティブ言語で開発するかクロスプラットフォームで開発するか検討しましょう。クロスプラットフォームを活用する場合、基本的にはFlutterかReact Nativeのどちらを採用するか比較検討します。基本的にはFlutterを推奨しますが、社内にReactを使えるエンジニアがいるのであれば、React Nativeを選ぶのもありです。なお、ゲームを開発する場合は、Unityを採用するのが王道です。