メタバースアプリとは?開発に必要な機能や技術、費用を解説
メタバースアプリとは?開発に必要な機能や技術、費用を解説
メタバースとは「超(メタ)」と「宇宙(ユニバース)」を組み合わせた造語で、インターネット上に存在する3次元の仮想空間を指します。3次元の仮想空間といえば、VR(Virtual Reality)のようにゴーグルを着けて、空間へ没入するサービスを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、メタバースは特別なデバイスがなくても、パソコンやスマホから利用できます。また、近年ではメタバースを体験できるスマホアプリが続々とリリースされており、手軽に始められるサービスとして注目を集めているのです。
今回の記事では、メタバースの解説に加えて主要なスマホアプリを紹介します。併せて、メタバースアプリの開発を検討している方に向けて、必要な機能や技術・費用や開発時の注意点も解説します。
話題の「メタバース」とは?
メタバースとは、インターネット上に存在する3次元の仮想空間のことです。メタバースでは、現実世界を超える体験ができるだけでなく、現実世界と同等の経済活動を生み出しています。 ユーザーは、仮想空間で自分の分身(アバター)を通して自由に動き回り、他のユーザーとコミュニケーションをとることで、さまざまな商品やサービスの売買を行うのです。
メタバースが注目されるようになったのは、2021年に「Facebook」が「Meta Platforms」に社名変更したことが挙げられます。また、新型コロナウイルス感染症のまん延によるオンライン需要の増加を契機に、企業がメタバース市場へ続々と参入し始めたのも注目を集める大きなきっかけです。
スマホでもメタバースは楽しめる?
メタバースはパソコンやVR機器が無くてもスマホでプレイできます。スマホならちょっとした空き時間を使って、ゲーム感覚でサクサクとメタバース体験ができるのです。ユーザー同士の交流を重視したものやゲームに特化したものなど、スマホで楽しむためのアプリもそろっています。
ここでは、スマホで楽しめるメタバースを4つのタイプ別に見てみましょう。
・SNS型
ユーザー同士の交流を重視したもので、アバターを通してメタバース上でチャットやボイスチャットなどでコミュニケーションが取れます。
・ゲーム型
ゲームに特化したメタバースは、遊べるだけでなく自分で作れる点が魅力といえます。ゲーム好きの方はもちろん、モノ作りが好きな方にもおすすめです。
・イベント型
自分の好きなアバターやアーティストを目の前で見られるのが、イベントやライブに参加する醍醐味です。参加している他のユーザーとも同じ空間を共有できるため、現実のライブと同じような、ファンとアーティストとの一体感をメタバース上で楽しめます。
・EC型
これまでECで買いづらかった商品をメタバース上で購入できます。例えば、家具は「サイズやデザインが自分の部屋に合うか」、洋服であれば「自分に似合っているか」などが確認でき、イメージしやすくなるでしょう。
スマホでメタバース体験ができるアプリとは?
メタバースには、気軽に始められるスマホアプリがそろっています。ここでは、特色の異なる3つのアプリを紹介します。メタバースアプリの開発を検討するなら、ぜひ触っておきましょう。
cluster(クラスター)
「cluster(クラスター)」は日本で開発され、次世代SNSとして国内を中心に注目されているメタバースアプリです。スマホとパソコンのどちらにも対応しており、アカウント登録をすれば無料でメタバース体験ができます。渋谷を再現した「バーチャル渋谷」がさまざまなメディアで取り上げられ、一躍有名になりました。
「cluster」は数あるメタバースプラットフォームの中でも、ユーザー同士の交流やイベントが活発なことで知られています。
REALITY
「REALITY(リアリティ)」は、自分で作成したキャラクターをアバターにして、顔を出さずにライブ配信できるバーチャルライブ配信アプリです。豊富なアイテムの中から目や口・髪型などを選べ、自分好みのアバターが作成できます。
また、「REALITY」で作成したアバターを前述した「cluster」と連携して使用できます。さらに「REALITY」では人気に応じて収入も得られるのが特徴です。
VARK
「VARK」は、バーチャルライブ特化型のサービスです。「VARK」では、 バーチャル空間でさまざまなエンターテイメントコンテンツが楽しめます。アーティストの生パフォーマンスだけでなく、 Vtuberのトークライブも頻繁に開催され、バーチャルならではの体験ができるのです。なお、ライブに参加するには、現実と同様にあらかじめチケットを購入しなければなりません。
メタバースアプリに必要な機能・技術とは?
メタバースではどのような機能・コンテンツが提供されており、どのような技術が使われているのでしょうか。ここでは、メタバース開発に必要な機能や技術を解説します。
メタバース内で提供されるおもな機能・コンテンツ
ゲーム | メタバースの代表的な機能。・3次元の仮想空間でリアリティのあるゲーム・大人数のユーザーが同時に参加できるゲームなどメタバース空間内で遊べるコンテンツ。 |
音声通話・ビデオ通話 | アバターを介し、仲間や同僚と同じ空間で通話やビデオ通話 |
ショッピング | ・3Dの仮想店舗を作る「バーチャルショップ」・既存のメタバースショッピングモール上に3Dのショップをオープンする「メタバースEC」 など |
イベント・ライブ | アーティストがメタバース内でライブを開催・実在するアーティストやVtuberなどのバーチャルライブ |
LAND(土地) | プラットフォームが展開する空間の一部分のこと。空間の一部分をNFT(デジタルデータ)としてNFTマーケットプレイスで販売されている。 |
必要な技術
AR(拡張現実)VR(Virtual Reality)技術 | ユーザーの没入型体験であるメタバースの核。 |
AI(人工知能)技術 | メタバースのバックグラウンドで動いている技術。自動翻訳や自然言語処理・リアルなアバターの作成や仮想空間での五感の再現など。 |
3Dモデリング技術 | 現実世界に限りなく近い仮想空間を作る技術。 |
エッジコンピューティング技術 | サーバーを分散配置して処理速度を高める技術。ユーザーがより質の高い没入感を体験するために必要。 |
5G技術 | メタバースが高速でデータ転送をするためには、最新の通信技術である5G技術が必要。 |
ブロックチェーン技術 | 鎖(チェーン)でつながれているブロック(データのまとまり)同士の情報を「ハッシュ値」として保持する技術。仮にデータが改ざんされても、前後のブロックが保持している情報が異なるため、すぐに検知できる。 |
NFT技術 | Non-Fungible Token=非代替性トークン。他に同じものが無いただ一つだと証明する技術。 |
「スマホアプリ」と「Webアプリ」の違い
メタバースはスマホアプリ、Webアプリのどちらのプラットフォームでも既に提供されています。どちらのプラットフォームを選択すべきか、参考にそれぞれの特色をご紹介します。
スマホアプリは名前の通りスマートフォンで使用するアプリケーションです。アプリをインストールするだけである程度の体験ができるという手軽さが魅力の一つです。
近年はほとんどの人がスマホを所持しているため、スマホアプリはより多くのユーザーに体験してもらえる可能性が高いといえます。
一方、インターネット上で稼働するサービスの中でもWebブラウザで動作するアプリを「Webアプリ」といいます。WebアプリはWebサーバー上で稼働しているため、ユーザーはWebブラウザがあればすぐサービスを体験できます。
スマホアプリのようにダウンロードをする必要がなく、Webサイトへアクセスするだけでサービスを利用できるため、スマホアプリよりもさらに手軽といえます。
また、Webアプリの場合はブラウザが動作するさまざまなデバイスで利用できるため、一つのアプリでさまざまなデバイスやOSに対応可能です。
ただし、オフラインで動作させられなかったり、モバイルアプリよりも処理性能の制約が厳しいなどデメリットもあります。
メタバースアプリの開発は外注がおすすめ
メタバースアプリの開発は外注がおすすめですが、外注するとどのようなメリットが得られるでしょうか。ここでは、自社開発と外注それぞれのメリット・デメリットを比較しながら解説します。
自社開発のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・開発コストを抑えられる・仕様変更などによるスケジュール調整が柔軟にできる | ・外注に比べ、アプリのクオリティが劣る恐れがある・十分な開発経験を持たない場合、スケジュールやコスト管理に支障が出る |
外注のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・開発経験の豊富なプロに依頼できる・アプリのクオリティが高い・納期リスクが低くなる | ・自社開発に比べコストが高い・イメージの共有が不十分だと、求めていたものとは異なるアプリができてしまう |
社内にメタバースアプリ開発の人材や開発環境が整っている場合は、自社開発を検討しても良いでしょう。しかし、人材や開発環境が不十分もしくはそろっていない企業は、迷わず外注をおすすめします。
外注はコストが高いと思われがちですが、コストを抑えるために無理して自社開発を推し進めた場合のほうが、かえってコストがかかってしまう恐れがあります。また、自社開発にこだわって人材の確保や開発環境の整備に着手する場合でも予算は必要です。
自社開発にかかるトータルコストや開発できるアプリのクオリティなどを総合的に考慮して判断しましょう。
外注先の企業を選ぶときのポイントについて、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
メタバースアプリの「開発期間」「費用」とは?
メタバースアプリの開発期間や費用は、開発手法によって大きく異なります。主に、オリジナルで開発する手法と、既存のメタバースを利用する手法に分けられます。それぞれの開発期間と費用を比較してみましょう。
全てオリジナルで開発する場合
開発期間 | ヒアリングを含めて4か月以上 |
費用 | 1,000万円以上 |
メタバースの開発は、さまざまな技術の複合体といえるため、オリジナルで開発する場合は難易度が高くなります。そのため、開発にかかる費用は高騰する傾向にあり、依頼する企業によって多少の差はあるものの、基本的に1,000万円以上が相場となっています。
また、支払い方法も月額払いやパッケージプラン、初期費用+月額費用がかかるものなどさまざまです。開発にかかる期間も、オリジナルの場合は長くなります。要望に沿った開発を実施してもらうため、ヒアリングを含めて4か月以上かかるケースが多い傾向です。
メタバース機能の開発コストを抑えるには...
一方、既存のメタバースの開発キットを利用することで、オリジナルと比べて開発期間や費用を数分の1に抑えられる場合があります。実現したい内容をもとに、オリジナルで作るか、既存メタバースを活用するかを適切に選択しましょう。
一般的なアプリ開発の費用についてはこちらの記事でも解説しています。
【相場】モバイルアプリの開発費用はいくら?開発費を抑える方法も紹介
メタバースアプリ開発における注意点
ここでは、メタバースアプリを開発する際の注意点を解説します。以下の点を押さえ、円滑に開発を進めましょう。
アプリ開発の目的、ターゲットへの理解
「何のために」アプリを開発するのかを明確にすることは、企画を検討する上で重要なポイントです。また、目的を明確にするためにも、企画や開発の前にアプリのターゲットを定義します。「どのようなニーズに応えたいのか」「どのような層に届けたいのか」を検討すると良いでしょう。
ユーザーにメリットをもたらす機能があるか
ユーザーの立場になって、「メリットとなる機能はあるか」「ニーズを満たせているか」をしっかり検討します。
スマホアプリ、Webアプリのどちらにすべきか
企画段階で「スマホアプリ」か「Webアプリ」かを選ぶ必要があります。どちらのアプリを開発するかによって、かける予算も必要な技術も変わってくるため、慎重に決定しましょう。
どのプラットフォームやデバイスに対応させるか
スマホアプリの場合、iOS端末/Android端末のどちらに対応させるか、あるいは両方に対応させるか、プラットフォーム(OS)を決めなければなりません。また、対応デバイス(対応機種)についても検討する必要があります。プラットフォームや対応デバイスによって、かかる費用が大きくかわるため、企画段階で明確にしておきましょう。
最低限盛り込みたい機能
最近のアプリ開発は競合他社に先を越されないため、最低限の機能を実装した段階でスピーディーにリリースするスタイルが主流です。リリース後はユーザーの反応を見ながら改善や機能追加を実施するため、立ち上げ時に最低限実装したい機能と、段階的に実装する機能をあらかじめ決めておく必要があります。
「ユーザー思考」と「ビジネス(収益)」のバランスはとれているか
アプリ開発にはユーザー目線の考え方が必要です。しかし、同時にビジネスとして成り立つか考えた上で企画しなければなりません。「どの程度の収益が見込まれるか」「ユーザーはなぜアプリに対価を支払ってくれるのか」などビジネスの視点で考えることによって、長期的に利用されるビジネスモデルを作る必要があります。
アプリの容量
スマホやタブレットにダウンロードして使用するスマホアプリの場合、アプリの容量への配慮も必要になります。ユーザーが使用している機種や使用状況によっては、大きすぎるアプリ容量がネックになる場合があるからです。
「デザイン」と「ユーザビリティ」に対する開発者の理解
アプリは見た目の美しさだけでなく、誰もが直感的に操作できることが重要です。一緒に開発を進める開発者が、「デザイン」と「ユーザビリティ」に理解のある人なのかがカギとなります。
まとめ
3次元の仮想空間といえば、ひと昔前までハイスペックなパソコンと特別なデバイスで体験するものでした。しかし、メタバースならスマホで十分楽しめるのが魅力です。最近では、メタバースアプリが登場し、手軽に始められるサービスとして注目を集めています。
メタバースは、企業にとっても拡大が見込まれており、魅力的といえます。まだ参入していないのであれば、今が市場拡大の機会です。しかし、メタバースアプリを開発するにあたって、費用やエンジニアの確保がネックになっている企業は少なくありません。メタバースアプリの開発にお悩みの方は、ぜひ今回の記事を参考に企画の作り込みや自社でできることを模索してみましょう。また、メタバース開発のサービスを展開している企業に依頼するのも一つの方法としておすすめです。
アプリ開発において知っておくべきポイントについて、こちらの記事に詳しくまとめています。ぜひチェックしてみてください。
【モバイルアプリ開発のはじめかた】開発の流れや外注の方法を解説