アプリ開発者が解説!ハイブリッドアプリの利点と使いどころ
ハイブリッドアプリとは、Web技術(HTML、CSS、JavaScript)で構築されたアプリをネイティブアプリの容器に包み込み、複数のプラットフォームで動作可能にしたアプリのことです。
ハイブリッドアプリは、以下のような状況において採用を検討するのに適しています。
状況 | 理由 |
開発コストと期間を抑えたい場合 | 単一のコードベースで複数プラットフォームに対応できるため、 開発・保守コストが削減され、開発期間も短縮可能です。 |
情報提供型アプリの場合 | 主に情報を表示するアプリでは、複雑なネイティブ機能が不要であり、 ハイブリッドアプリで十分なパフォーマンスと機能が提供可能です。 |
継続的な更新が頻繁に必要な場合 | ハイブリッドアプリはWeb技術を活用しているため、 サーバーサイドでの更新が容易で、頻繁な更新が迅速かつ低コストで実施可能です。 |
チームがWeb技術に精通している場合 | HTML、CSS、JavaScriptなどのWeb技術を用いて開発できるため、 Web技術に精通した開発チームがそのままアプリ開発を行うことが可能です。 |
本記事では、アプリ開発会社「株式会社ペンタゴン」で代表を務める筆者が、「ハイブリッドアプリのメリット・デメリット」「ネイティブアプリと具体的にどう違うのか?」について詳しく解説します。アプリの開発を検討中の方は、ぜひ株式会社ペンタゴンまでご相談ください。
株式会社ペンタゴンのハイブリッドアプリ制作事例
まずはハイブリッドアプリのイメージを理解していただくために、当社での「ハイブリッドアプリ」の制作事例をご紹介します。※NDAの関係上、詳細は伏せております。
◆プロジェクト概要
大手鉄道会社のアプリケーション内において、お客様WebサイトをWebViewで表示し、JavaScriptを介して、ログイン情報の取得、GPS情報の取得、アプリ画面の輝度操作(明るさ調整)の機能実装を行いました。
◆WebViweを使ったハイブリッドアプリの設計イメージ
この実装により、Webサイトの開発チームが任意のタイミングで、GPS情報を取得したり、アプリの輝度を操作できるようになりました。
このように、アプリ開発チームとWeb開発チームとがある大規模なアプリでは、一部機能をハイブリッドアプリとして設計することによって、円滑に機能実装することができます。
ハイブリッドアプリ・ネイティブアプリ・Webアプリの違い
ここでは、ハイブリッドアプリとネイティブアプリの違いを詳しく見ていきましょう。大まかに3つの違いがあります。以下の表は、ハイブリッドアプリ・ネイティブアプリ・Webアプリの違いをまとめたものです。
◆各アプリの比較表
Webアプリ | ハイブリッドアプリ | ネイティブアプリ | |
①仕組み | Webブラウザで動作 | WebView上で動作 | モバイルOS上で動作 |
②動作速度 | やや遅い | やや遅い | 速い |
③対応するOS | ブラウザアクセスができる全てのOS | マルチデバイスに対応可能 | OSごとに開発環境が変わる |
それでは、詳しく解説していきます。
(1)仕組みの違い
ネイティブアプリは、モバイルOS上で動作します。端末上で動き、端末の機能を直接呼び出せるのが特徴です。その点、ハイブリッドアプリはWebView上で動作します。WebViewとは、スマホアプリ上でWebページを読み込んで表示する機能のことです。スマホの機能を利用してアプリを動作させるのではなく、Web上にあるサイトを利用してアプリを動作させます。
(2)動作速度の違い
ネイティブアプリは、特定のデバイス・特定のOSに最適化されるように開発されているため、スムーズな動作を実現できます。一方、ハイブリッドアプリはWebアプリがベースであるため、ネイティブアプリよりも動作速度は遅くなる傾向があります。
(3)対応するOSの違い
ネイティブアプリはマルチデバイスに対応しておらず、Androidで動作するアプリをiPhoneで操作したり、逆にiPhoneで動作するアプリをAndroidで動かしたりできません。そのため、アプリをAndroidとiPhoneの両方で動作させたい場合は、iOS・AndroidそれぞれのOSに対応するように、別々に開発する必要があります。
これに対しハイブリッドアプリは、マルチデバイスに対応しておりOS関係なく動作することができるのです。
また、こちらの記事でも各アプリの違いについて詳しく解説しているので、詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
ネイティブアプリ開発とは?Webアプリ,ハイブリッドアプリとの違いを比較解説
各アプリが向いているケース・向いていないケースとは?
スマートフォンアプリの開発方法には、大きく分けて「ネイティブアプリ」「Webアプリ」「ハイブリッドアプリ」の3つの選択肢があります。それぞれに特徴があり、プロジェクトの目的や要件によって最適な選択は異なってきます。本記事では、各アプリケーションタイプの特徴と、それぞれが適している・適していないケースについて詳しく解説します。
ネイティブアプリ:高機能・高性能を追求するための選択
ネイティブアプリは、スマートフォンのOSに最適化された形で開発されるアプリケーションです。AndroidやiOSそれぞれのプラットフォームに特化した開発言語を使用し、端末の機能を最大限に活用することができます。
ネイティブアプリが適しているケース
ネイティブアプリの最大の特徴は、その優れた動作性能です。3Dゲームのような処理負荷の高いアプリケーションでも、スムーズな動作を実現できます。ユーザー体験において動作のレスポンスが重要となるアプリケーションには、ネイティブアプリの選択が有効です。
また、オフライン環境での利用を想定したアプリケーションにも適しています。アプリのデータを端末にダウンロードすることで、インターネット接続なしでも機能を利用できます。これは、移動中や通信環境の不安定な場所での使用を想定する場合に大きな利点となります。
収益化の観点からも、ネイティブアプリには強みがあります。アプリ内課金システムを実装できるため、ユーザーは簡単な操作で決済を行うことができます。この機能は、ゲームアプリやサブスクリプションサービスを提供する際に特に重要です。
ネイティブアプリが適していないケース
一方で、ネイティブアプリ開発には課題もあります。最も大きな課題は、開発にかかるコストと時間です。AndroidとiOSの両方に対応する場合、それぞれのプラットフォーム向けに別々の開発が必要となります。また、各アプリストアでの審査プロセスも必要で、これには一定の時間がかかります。
さらに、ユーザーがアプリを利用するためには、アプリストアからのダウンロードとインストールが必要です。この導入のハードルは、サービスの普及を目指す際の障壁となる可能性があります。
Webアプリ:手軽さと開発効率を重視する選択
Webアプリは、ブラウザを通じて利用できるアプリケーションです。インストールが不要で、URLにアクセスするだけで利用できる手軽さが特徴です。
Webアプリが適しているケース
開発効率の面で大きな利点があります。一度の開発で複数のプラットフォームに対応でき、アプリストアの審査も不要なため、素早いリリースと更新が可能です。また、コンテンツの更新も容易で、全ユーザーに即時に反映できます。
ユーザーの導入障壁を下げたい場合にも適しています。インストールが不要なため、気軽に試してもらいやすく、端末の容量も消費しません。特に、一時的な利用や情報提供が主な目的のサービスには最適です。
Webアプリが適していないケース
デバイスの機能を深く活用する必要がある場合には不向きです。カメラやGPS、プッシュ通知といった機能の利用に制限があり、オフライン対応も困難です。また、ネイティブアプリほどの処理性能は期待できません。
ハイブリッドアプリ:バランスを重視する選択
ハイブリッドアプリは、Webアプリとネイティブアプリの特徴を組み合わせたアプローチです。Web技術を使用しながら、ネイティブアプリとしてインストールできる形式で提供されます。
ハイブリッドアプリが適しているケース
開発効率とネイティブ機能の両立が求められる場合に適しています。特に、既存のWebサイトやWebアプリをベースにモバイルアプリを展開する場合、既存の資産を活用しながら段階的にネイティブ機能を追加できます。
中程度のパフォーマンスで十分な場合や、一部のネイティブ機能のみを必要とする場合にも、バランスの取れた選択肢となります。
ハイブリッドアプリが適していないケース
ハイブリッドアプリは、高度なパフォーマンスが要求される場合には適していません。ネイティブアプリほどの処理速度や滑らかな動作は期待できず、複雑なアニメーションや3D処理には向いていません。
アプリケーションタイプの選択には、以下の要素を総合的に検討することが重要です。
- 1. 開発リソース(予算、期間、開発チームのスキル)
- 2. アプリケーションの要件(必要な性能、機能、オフライン対応の必要性)
- 3. ビジネス要件(収益化方法、リリース頻度、ユーザー獲得戦略)
これらの要素を慎重に評価し、プロジェクトの目的や制約に最も適したアプローチを選択することで、効果的なアプリケーション開発が可能となります。
ハイブリッドアプリの5つのメリット
ハイブリッドアプリの長所は、大きく分けて5つあります。以下にハイブリッドアプリのメリットをご紹介します。
メリット①OS関係なく開発できる
先述しましたが、ハイブリッドアプリの最大の特徴は、動作環境が使っているデバイスに左右されない点です。
ハイブリッドアプリはマルチプラットフォームに対応しているため、OSやデバイスなど、アプリケーションを起動する環境を選びません。1つの開発工数でiOSとAndroidの両方に対応したアプリを開発できるため、少ない開発工数で早期にリリースできる点も魅力です。
メリット②ネイティブ機能を利用できる
ハイブリッドアプリでは、ネイティブ機能を利用できます。カメラやGPSといったデバイスの機能を活用できるので、モバイル端末ならではの機能を提供可能です。
また、ハイブリッドアプリは「Google Play」や「App Store」などからダウンロードして利用できるため、信頼性や認知度の向上といった効果も得られます。
メリット③コストを抑えて開発できる
iOSとAndroidのOS毎に開発する必要がないため、開発コストも大幅に削減できます。Webアプリの開発経験者であれば開発を行えることから、iOSとAndroidのそれぞれのアプリ開発に精通した人材を採用する必要はなく、人件費を抑えて開発を進めることが可能です。
開発コストを抑えることができれば、その分アプリのプロモーション活動に費用を投下するなど、ダウンロード数を伸ばすための施策に注力できるようになります。
アプリのプロモーション施策については、こちらの記事で詳しくご紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
メリット④メンテナンスが簡単
ハイブリッドアプリはマルチプラットフォームを採用しているため、1度のメンテナンスで複数のOSに対応できます。従来のネイティブアプリは、各OSがバージョンアップされたり、アップデートする必要があったりする場合は、それぞれのアプリを修正しなければなりませんでした。しかし、ハイブリッドアプリの場合はWeb上で表示されるため、OSやデバイスの影響を受けません。アプリの内容を変更する際にも、サーバー側の変更のみで簡単に反映することができます。
メリット⑤高速なリリース
ハイブリッドアプリは、高速なリリースが可能という点で新規事業やサービス展開を急ぐお客様に適しています。一度の開発でiOSとAndroidの両方に対応できるため、ネイティブアプリ開発のように複数のプラットフォーム用コードを別々に書く必要がありません。また、開発フレームワークの豊富なライブラリやツールを活用することで、効率的なプロトタイプ作成や機能追加が可能です。さらに、変更が必要な場合もコードの修正が一箇所で済むため、迅速なアップデートやリリースが実現します。これにより、市場への投入スピードを大幅に短縮し、競争優位性を高めることができます。
ハイブリッドアプリには注意すべき3つのデメリットがある
ここまで、ハイブリッドアプリは開発工数が少ないこと、これによりコストが抑えられてメンテナンスも簡単にできるとご紹介しました。しかし、ハイブリッドアプリにもデメリットは存在します。アプリ開発はそれなりに開発費用がかかることから、思い通りのアプリを制作するには事前にメリット・デメリットを理解したうえで開発を進めることが大切です。
ここからは、ハイブリッドアプリのデメリットを大きく2つの項目に分けてご紹介します。
デメリット①動作が重い
ハイブリッドアプリは、比較的少ない開発工数で、ネイティブアプリよりもさまざまな機能を搭載することができますが、ネイティブアプリほどアニメーションのバリエーションが豊富ではなく、動作の滑らかさも劣ります。動作が重く、スムーズに起動しないとユーザーにストレスを与えてしまい、継続的に利用してもらえない可能性もあります。特に、3Dのゲームは動作が重くなってしまうため、ジャンルに応じてハイブリッドアプリとネイティブアプリを使い分けるようにしましょう。
デメリット②細かな変更が難しい
詳細部分の変更が臨機応変に行えないことも、ハイブリッドアプリのデメリットです。ハイブリッドアプリは制作の段階で大まかなフレームワークに沿って作成されるため、フレームから外れる修正を施しにくいという特徴があります。
また、ネイティブ機能を利用する際はプラグインを使用しますが、利用の可否はプラグインの有無に左右されます。プラグインの多くは個人開発なので、欲しいプラグインがない場合は自社で開発する必要も出てきます。
デメリット③デバッグやメンテナンスの困難さ
ハイブリッドアプリでは、異なるプラットフォーム間で動作するコードを一元管理しますが、その分、デバッグが複雑になる場合があります。特に、プラグインやフレームワークの互換性問題が発生した場合、ネイティブコードやWebコードの両方を調査する必要があり、トラブルシューティングに時間がかかることがあります。また、フレームワークのアップデートによりコードが非互換になるリスクもあります。
ハイブリッドアプリを開発する5つのステップ
ハイブリッドアプリは、Webとネイティブのメリットを組み合わせることで、開発効率と機能性の両立を実現できる開発手法として有効的です。ここでは、ハイブリッドアプリを開発する際の具体的な進め方について、実践的な視点から解説します。
ステップ①どの部分をハイブリッド化するか決める
まず、ハイブリッドアプリ開発で最も重要となるのが、アプリのどの部分をWeb技術で実装し、どの部分をネイティブで実装するかの判断です。この決定は、アプリの性質や要件に基づいて慎重に行う必要があります。例えば、ゲーム性の高い画面や複雑なアニメーション、リアルタイム処理が必要な機能については、パフォーマンスを重視してネイティブ実装が推奨されます。一方、ニュースフィードや商品カタログ、キャンペーン情報など、頻繁な更新が必要なコンテンツについては、Web実装が効率的です。
また、カメラ操作やGPS、位置情報、プッシュ通知、ファイルシステムなど、デバイスの機能を使う部分については、ネイティブ実装が必要となります。利用規約やヘルプページ、設定画面といった静的なコンテンツについては、Web実装で十分対応できます。
ステップ② 開発環境の構築
開発環境の構築においては、各プラットフォームのSDKや統合開発環境、バージョン管理システム、ビルド・デプロイツールなどの整備が必要です。また、実機デバッグ環境やエミュレータ、ログ収集・解析ツールなどのデバッグ環境も重要です。
ステップ③アプリの設計と実装
アプリの設計と実装においては、プラットフォーム共通のデザインガイドラインの作成やレスポンシブデザインの適用が重要となります。また、WebViewとネイティブコードとのやりとりのインターフェース設計、オフライン時の動作設計、データのキャッシュ戦略なども考慮が必要です。セキュリティ面では、データの暗号化や安全な通信の実現、アクセス制御の実装、プライバシー保護対策が欠かせません。
ステップ④ テストと最適化
テストと最適化のフェーズでは、単体テストから結合テスト、UIテスト、パフォーマンステストまで、包括的なテスト計画の立案が必要です。異なるOSやバージョン、画面サイズ・解像度、デバイスの性能差による互換性の確認も重要です。また、読み込み時間の短縮やメモリ使用量の最適化、バッテリー消費の抑制といったパフォーマンスの最適化も必要となります。
ステップ⑤デプロイと保守
デプロイと保守の段階では、アプリストア登録用の各種資料作成やプライバシーポリシーの整備、マーケティング資料の準備が必要です。また、モニタリングシステムの構築やエラー検知・報告の仕組み、ユーザーサポート体制の整備も重要です。さらに、利用状況の分析やパフォーマンスの監視、ユーザーフィードバックの収集と対応など、継続的な改善のための取り組みも欠かせません。
ハイブリッドアプリの開発は、Web技術とネイティブ開発のバランスを取りながら進める必要があります。特に重要なのは、プロジェクトの初期段階での「どの部分をハイブリッド化するか」という判断です。この判断を適切に行い、計画的に開発を進めることで、効率的かつ高品質なアプリケーションの開発が可能となります。
ここでは各知識について簡単にご紹介しましたが、アプリ開発を実際に進める場合、知っておくべき知識はたくさんあります。アプリ開発全般の基礎知識を以下の記事に詳しくまとめましたので、併せてご参照ください。
【モバイルアプリ開発のはじめかた】開発の流れや外注の方法を解説
まとめ
この記事では、ハイブリッドアプリとネイティブアプリについてご紹介しました。
ハイブリッドアプリは、OSに依存することなくどのような端末でも起動することができ、ネイティブアプリはOS毎の開発は必要なもののスムーズな動作と多様な機能を搭載することができます。記事内でご説明した通り、ハイブリッドアプリとネイティブアプリにはそれぞれメリット・デメリットがあります。
アプリ開発を進める場合は、それぞれの特徴をよく理解し、ターゲットやアプリの目的に応じてアプリの種類を選ぶようにしましょう。
もし「アプリ開発の外注を検討していて、一度相談したい」などお考えでしたら、アプリ開発会社の「株式会社ペンタゴン」にぜひご相談ください。私たちが貴社のアプリ開発をサポートし、成功へと導きます。
「株式会社ペンタゴン」の開発実績については、こちらをご覧ください。
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