アプリの成長に必須!『KPI ツリー』を作成する本当の意味とは?
アプリ運営について調べていると「KPI ツリーを作ったほうがいいよ」「アプリの成長には KPI が重要」という話を耳にすることがあります。
「KPI ツリーって具体的に何?」「作ったとしても、どう活用すればいいの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
KPI ツリーとは、アプリのビジネス目標を達成するための重要指標を体系的に整理したフレームワークです。売上やユーザー数といった最終目標から、それを構成する細かな要素まで、ツリー状に分解して可視化します。
本記事では、アプリ開発会社の株式会社ペンタゴンで代表を務める筆者が、アプリにおける KPI ツリーの設計方法から実際の活用事例まで、詳しく解説していきます。
ちなみに、当社では 数々のアプリ開発実績があり、クライアント様の KPI 設計もサポートしています。アプリのグロース戦略でお悩みの方は、ぜひ一度、株式会社ペンタゴンまでご相談ください。
アプリにおける KPI ツリーの具体例
まず、実際の KPI ツリーがどのようなものかを見てみましょう。
◆EC アプリの KPI ツリー例
売上(最終目標)
├── 新規ユーザー売上
│ ├── 新規ユーザー数 × 新規CV率 × 新規平均購入単価
│ └── インストール数 × 新規登録率 × 購入完了率
└── 既存ユーザー売上
├── MAU × 既存CV率 × 既存平均購入単価
└── 継続率 × アクティブ率 × リピート購入率
◆サブスクリプションアプリの KPI ツリー例
MRR(月次経常収益)
├── 新規MRR
│ ├── 新規登録数 × 有料転換率 × 平均単価
│ └── インストール数 × オンボーディング完了率 × トライアル→有料転換率
└── 既存MRR
├── 既存課金ユーザー数 × 継続率 × アップグレード率
└── MAU × 課金率 × 平均単価 × チャーン率(解約率)
このように、最終的なビジネス目標から、それを構成する具体的な要素まで分解して可視化することで、どこに課題があるかが明確になります。
なぜ「KPI ツリー」はアプリの成長に欠かせないのか?
アプリのグロース戦略を作っていく上で、KPI ツリーの設計が重要となる理由は以下の通りです。
理由① 課題の特定が容易になる
KPI ツリーにより、売上低下の原因が「新規ユーザー獲得の問題」なのか「既存ユーザーの離脱問題」なのかを明確に切り分けできます。
例えば、売上が前月比 20%減少した場合:
- 新規ユーザー売上:前月比 10%減
- 既存ユーザー売上:前月比 30%減
この分析により、既存ユーザーの継続率改善が最優先課題だと判明します。
理由② チーム全体での目標共有
各部門が異なる指標を見ていると、施策の方向性がバラバラになりがちです。KPI ツリーにより、マーケティング、開発、CS 全てのチームが同じ目標に向かって動けます。
特に、アプリ開発においては開発チームとマーケティングチームの連携が重要です。KPI ツリーを共有することで、「なぜこの機能開発が優先されるのか」「なぜこのマーケティング施策が必要なのか」という理由が全チームに明確に伝わります。これにより、チーム間のコミュニケーションが円滑になり、より効果的な施策実行が可能になります。
理由③ 施策の優先順位が明確になる
限られたリソースの中で、どの施策に注力すべきかの判断基準が明確になります。KPI ツリーの各要素に対する改善インパクトを計算し、最も効果の高い施策から実行できます。
例えば、EC アプリで売上向上を目指す場合、「新規ユーザー獲得に 100 万円投資して売上 50 万円アップ」と「既存ユーザーの購入単価改善施策に 50 万円投資して売上 80 万円アップ」なら、後者の方が投資対効果が高いことが数値で判断できます。このような定量的な判断により、感覚に頼らない戦略的なリソース配分が実現できます。
理由④ PDCA サイクルの高速化
各 KPI の変化を継続的にモニタリングすることで、施策の効果をリアルタイムで把握でき、素早い改善サイクルを回せます。
従来の月次レポートベースの分析では、施策の効果が分かった時には既に 1 ヶ月が経過してしまいます。しかし、KPI ツリーによる日次・週次のモニタリングにより、施策実行から 1 週間以内に効果測定が可能になります。これにより、効果の低い施策は早期に修正し、効果の高い施策はさらに強化するという高速な改善サイクルが実現できます。
KPI ツリーに含まれる主な指標の解説
KPI ツリーを設計する際は、各業界やビジネスモデルに共通して使われる基本的な指標を理解しておくことが重要です。ここでは、アプリ運営で頻繁に活用される主要な KPI とその意味、計算方法を整理してご紹介します。
これらの指標を組み合わせることで、先ほどご紹介したような効果的な KPI ツリーを構築できます。
◆ アプリ KPI の主要指標一覧
指標 | 読み方 | 意味 | 計算式 |
---|---|---|---|
MAU | マウ | 月間アクティブユーザー数 | 1 ヶ月間にアプリを利用したユニークユーザー数 |
DAU | ダウ | 日間アクティブユーザー数 | 1 日間にアプリを利用したユニークユーザー数 |
WAU | ワウ | 週間アクティブユーザー数 | 1 週間にアプリを利用したユニークユーザー数 |
ARPU | アープ | ユーザー 1 人あたりの平均収益 | 総収益 ÷ アクティブユーザー数 |
LTV | エルティーブイ | 顧客生涯価値 | ARPU ÷ チャーン率 |
CAC | キャック | 顧客獲得コスト | マーケティング費用 ÷ 新規獲得ユーザー数 |
継続率 | けいぞくりつ | ユーザーがアプリを継続利用する割合 | Day7 継続率 = インストール 7 日後も利用しているユーザー数 ÷ インストール数 |
離脱率 | りだつりつ | ユーザーの離脱率 | 月間離脱ユーザー数 ÷ 月初アクティブユーザー数 |
これらの基本指標を理解した上で、自社のビジネスモデルや成長段階に応じて最適な指標を選択し、KPI ツリーに組み込むことが重要です。例えば、サブスクリプション型アプリでは「継続率」と「LTV」を重視し、EC アプリでは「ARPU」と「コンバージョン率」を中心に設計します。
また、これらの指標は単独で見るのではなく、相互の関係性を理解することが大切です。MAU が増加しても ARPU が下がれば全体の収益は伸び悩みますし、CAC が LTV を上回る状況が続けばビジネスとして持続不可能になります。
【事例で解説】アプリの KPI ツリー設計例
実際のアプリを想定して、ビジネスモデル別に KPI ツリーの設計例をご紹介します。
事例 ① サブスクリプション型の健康管理アプリ
ビジネス目標 : MRR(月次経常収益)の最大化
◆KPI ツリー設計
MRR
├── 新規MRR(40%)
│ ├── インストール数
│ ├── オンボーディング完了率(目標:80%)
│ ├── 無料トライアル開始率(目標:25%)
│ └── トライアル→有料転換率(目標:15%)
└── 既存MRR(60%)
├── 既存課金ユーザー数
├── 月次継続率(目標:90%)
├── アップグレード率(目標:5%)
└── 平均単価
健康管理アプリは習慣化が重要なため、継続率を最重要 KPI に設定。オンボーディングでの離脱を防ぐため、完了率も重点的に追跡。
サブスクリプション型の健康管理アプリでは、ユーザーの習慣形成がビジネス成功の鍵となります。そのため、単純な登録数よりも「継続利用」に重点を置いた KPI 設計が必要です。オンボーディング完了率を 80%に設定しているのは、初回利用時にアプリの価値を十分に体験してもらうことで、長期継続につなげる狙いがあります。また、既存 MRR の割合が 60%と高く設定されているのは、健康管理という性質上、継続利用者からの安定収益を重視するビジネスモデルだからです。
事例 ② EC 連携のファッションアプリ
ビジネス目標: 売上高の最大化
◆KPI ツリー設計
売上高
├── 新規ユーザー売上(30%)
│ ├── インストール数
│ ├── 会員登録率(目標:40%)
│ ├── 初回購入率(目標:20%)
│ └── 新規平均購入単価(目標:8,000円)
└── 既存ユーザー売上(70%)
├── MAU
├── 月次購入率(目標:15%)
├── リピート購入回数(目標:2.5回/月)
└── 既存平均購入単価(目標:12,000円)
ファッションアプリはリピート購入が重要なため、既存ユーザーからの売上を重視。季節性もあるため、月次での細かな分析が必要。
ファッションアプリでは、既存ユーザーからの売上が 70%を占めるよう設計されています。これは、ファッション商品の特性上、顧客の好みやサイズが把握できた既存ユーザーの方が高い購入確率とリピート率を示すためです。また、既存ユーザーの平均購入単価(12,000円)が新規ユーザー(8,000円)より高く設定されているのは、アプリ内での購買履歴に基づくレコメンド機能により、より高額な商品の購入が促進されることを想定しています。季節性を考慮して月次での詳細分析を行い、春夏・秋冬シーズンごとの KPI 変動も追跡します。
事例 ③ 来店促進型の飲食店予約アプリ
ビジネス目標: 予約経由の来店売上最大化
KPI ツリー設計
予約経由売上
├── 新規予約売上(25%)
│ ├── インストール数
│ ├── 位置情報許可率(目標:70%)
│ ├── 初回予約率(目標:30%)
│ └── 新規来店単価(目標:3,500円)
└── 既存予約売上(75%)
├── WAU(週間アクティブユーザー)
├── 週次予約率(目標:20%)
├── リピート予約率(目標:60%)
└── 既存来店単価(目標:4,200円)
飲食店アプリは週末の利用が多いため、WAU を重視。位置情報を活用した近隣店舗の提案が重要なため、位置情報許可率も追跡。
飲食店予約アプリでは、位置情報許可率を 70%と重要な KPI として設定しています。これは、ユーザーの現在地に基づく近隣店舗の提案がアプリの核となる価値提供だからです。また、既存予約売上の割合が 75%と非常に高く設定されているのは、飲食店利用の特性上、お気に入りの店舗への再訪問が多いためです。WAU(週間アクティブユーザー)を重視するのは、飲食店利用が平日よりも週末に集中する傾向があり、月次よりも週次での利用パターン分析が重要だからです。リピート予約率 60%という高い目標設定により、顧客満足度の向上と店舗との継続的な関係構築を重視しています。
KPI ツリーを有効活用するための5つのポイント
作って終わりではなく、KPI ツリーを継続的な改善に活かすためのポイントをご紹介します。
ポイント① ダッシュボードとの連携
Google Data Studio や Tableau などのツールと連携
KPI ツリーの各指標をリアルタイムで可視化できるダッシュボードを構築します。これにより、チーム全員がいつでも最新の数値を確認でき、データドリブンな意思決定が可能になります。
ダッシュボード構築時は、KPI ツリーの階層構造をそのまま反映させることが重要です。トップレベルの最終目標から、その構成要素となる細かな指標まで、ドリルダウンして確認できる設計にします。また、各 KPI に対して前日比・前週比・前月比の変化率を表示し、異常値が発生した際にはアラート機能で即座に通知される仕組みも整備します。さらに、モバイルからでもダッシュボードを確認できるようにすることで、外出先でも KPI の状況を把握できます。
ポイント② 週次・月次での定点観測とチームレビュー
定期的なレビュー会議の開催
毎週金曜日に KPI レビュー会議を開催し、各指標の変化と要因を分析します。単に数値を確認するだけでなく、改善施策の効果検証と次の打ち手を議論することが重要です。
レビュー会議では、「なぜその数値になったのか」という要因分析に時間をかけます。例えば、MAU が前週比 10%減少した場合、その原因がアプリの不具合なのか、季節要因なのか、競合の新サービス登場なのかを徹底的に分析します。また、各部門の担当者が KPI 改善のための施策案を持ち寄り、その実行可能性と効果予測を議論します。会議の最後には、次週までに実行する具体的なアクションプランと担当者を明確に決定し、次回会議での効果検証につなげます。
ポイント③ 変化に強い設計(仮説・検証の更新性)
KPI ツリー自体の見直しも定期的に実施
ビジネスの成長段階や市場環境の変化に応じて、KPI ツリーの構造も柔軟に見直します。例えば、成長初期は「ユーザー獲得」重視から、成熟期は「収益性」重視へと KPI の重要度を変更します。
KPI ツリーの見直しは、四半期ごとに実施することを推奨します。アプリのライフサイクル、競合状況、市場トレンドの変化を総合的に評価し、現在の KPI 構造が最適かを検証します。例えば、ユーザー数が一定規模に達した後は、新規獲得 KPI の重要度を下げ、既存ユーザーの LTV 向上や収益性改善の KPI 比重を高めます。また、新機能リリースや新しいマネタイズ手法の導入時には、それに対応した新しい KPI を追加し、既存の KPI ツリーに統合します。
ポイント④ 各 KPI に対する具体的なアクションプランの設定
数値目標だけでなく、改善施策も明確化
各 KPI に対して「誰が」「いつまでに」「何を」するかを明確に設定し、責任者を決めます。これにより、KPI 改善のための具体的な行動が促進されます。
アクションプランは SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)な形式で設定します。例えば、「オンボーディング完了率を 2 週間以内に現在の 65%から 75%に改善する。開発チーム A さんが担当し、チュートリアル画面の UI 改善とプログレスバー追加を実施する」といった具体的な内容にします。また、各アクションプランの進捗状況を週次で確認し、遅延が発生した場合は早期にサポート体制を整えます。成功した施策は他の KPI 改善にも横展開し、失敗した施策は失敗要因を分析して次の施策立案に活かします。
ポイント⑤ 外部ベンチマークとの比較
業界平均や競合他社との比較分析
自社の KPI が業界水準と比べてどの位置にあるかを把握することで、改善の余地と優先度を客観的に判断できます。
業界ベンチマークとの比較は、Adjust、AppsFlyer、App Annie などのアプリ分析プラットフォームが提供する業界レポートを活用します。例えば、EC アプリの平均継続率が業界平均 30%に対して自社が 25%の場合、継続率改善が緊急課題であることが明確になります。また、競合他社の公開情報や類似アプリの App Store レビュー分析により、ベストプラクティスを学び、自社の KPI 改善施策に反映します。ただし、業界平均はあくまで参考値として活用し、自社のビジネスモデルや顧客特性に合わせた独自の目標設定を行うことが重要です。
アプリ改善ならペンタゴンにお任せください
KPI ツリーの設計から運用まで、アプリの成長戦略でお悩みの方は、ぜひ株式会社ペンタゴンにご相談ください。
◆当社の KPI 設計サポート内容
- ビジネスモデルに合わせた KPI ツリー設計
- ダッシュボード構築支援
- 定期的な KPI レビュー会議のファシリテーション
- 改善施策の立案と効果検証サポート
大手企業の有名アプリのKPI設計を支援した実績をもとに提案させていただきます。
アプリの WAU 率を 10%向上させた実績もあり、データドリブンなアプリ成長をサポートいたします。
今回ご紹介した「KPI ツリー設計の方法」を参考にして、アプリの成長戦略を検討しましょう。もし「自社のアプリに最適な KPI ツリーを作りたい」「KPI 改善の具体的な施策を知りたい」などお考えでしたら、アプリ開発会社の株式会社ペンタゴンをご検討ください。
下記よりお問い合わせできますので、お気軽にご相談ください!