Webサービスを収益化するには?収益化のポイントや収益モデルについて解説
Webサービスを収益化するにあたって、方針の見通しが立たなかったり、収益モデルについての情報を必要としている担当者も多いのではないでしょうか。
当記事では、収益化やマネタイズの基本的な考え方や具体的な収益モデルについて詳しく解説していきます。
収益化・マネタイズとは
マネタイズとは「収益化」を意味します。Web上でのビジネスが広がることで、無料のWebサービスを収益化するという意味で使われるようになりました。
例えば、基本無料で提供するWebサービスを有料サービスや商品購入へと促す施策、それを実行するためのビジネスモデルの構築という意味合いで使用されています。
Webサービスは粗利が大きい
まず粗利とは「会社がサービスや商品を販売した際に得られる利益」のことです。「売上-売上原価」という計算式で算出され、損益計算書の「売上総利益」に該当します。
例えば製造業であれば、製品を生産するために原材料を仕入れなければ、売上を生み出し続けることはできません。
しかしWebサービスの場合は、有料ツールといった使用料は発生するものの、売上に対する売上原価の割合は著しく低いです。自社の給料や開発会社の外注費は販管費に該当するため、Webサービスの場合は売上原価に人件費は含まれません。
他業界・他業種と比べると粗利が大きいのが、Webサービスの収益化にあたっての魅力だといえます。
Webサービスで収益化する3つのポイント
Webサービスで収益化するポイントは下記の通りです。
- Webサービスの企画・設計が重要
- ターゲットユーザーの悩みを解消しているかどうか
- 初期費用をできるだけ抑える
詳しく解説していきます。
Webサービスの企画・設計が重要
Webサービスを開発するにあたっては、企画・設計の段階が重要です。
Webサービスを開発することで、どのように自社や顧客の課題を解決できるのかを考える必要があります。また商品を売りたい、サービスの紹介から成約に繋げたいなど、自社がどのような成果を生み出したいかも、合わせて考えなければなりません。
開発会社に外注を依頼することも有効な手段です。しかし企画・設計の段階から丸投げというスタンスだと、発注者と開発者の間の認識にズレが生じやすくなります。結果として、工数の増加やスケジュール遅延が重なり、公開まで至らないといった事態を招くことになるでしょう。
Webサービスの収益化を成功させるために、企画・設計の段階から自社の担当者が、自らアイデア出しを積極的に行って参画することが大切です。
ターゲットユーザーの悩みを解消しているかどうか
Webサービス開発の失敗事例として「ユーザーのニーズを十分に汲み取れていない」ケースが見受けられます。
Webサービスを開発する側の立場としては「自社の強みを活かしたい」や「自社が保有する技術やノウハウを駆使して、凄いWebサービスを作ってみたい」という感情が先行してしまいがちです。
しかしターゲットユーザーの分析が適切でなければ、「作ったけど売れない」という失敗のパターンに陥ってしまいます。具体的にはユーザーヒアリングの実施や価値定義についての熟考、集客方法の検討について考えなければなりません。
プロダクトアウトかマーケットインか、構想の立て方自体はどちらでも問題ありません。「誰を集客したいのか」で悩んでいるなら、まずはターゲット選定やペルソナの作成から始めるようにしましょう。
初期費用をできるだけ抑える
収益化の見通しが立たない状態で、高額な初期費用を投じてしまうのは、リスクが大きいです。まずは初期費用をできるだけ抑えながら、Webサービスの開発・運営を行っていくことが収益化につながるでしょう。
具体的に初期費用を抑える方法としては下記の通りです。
- 要件を自社で細かく決めておく:開発会社に意図を明確に伝えることで、打ち合わせの時間を減らせたり、スケジュール遅延などのリスクを低減できる
- デザインや素材など、自社で用意できるものは揃えておく
- 複数社に見積もりを取ることで相場を把握する:開発会社に直接問い合わせを行えば、仲介手数料の5~10%を支払わずに依頼が可能
ただし初期費用を抑えることばかりに着目しすぎると、ユーザーのニーズに沿わないWebサービスになってしまう恐れがあります。必要な機能を定めた上で、どのような費用削減が可能なのかを考えるようにしましょう。
Webサービスにおける5つの収益モデル
Webサービスにおける収益モデルは下記の通りです
- 買い切り型
- サブスク型
- 手数料(マッチングサービス)型
- 広告型
- 自社商品・サービスの販売
買い切り型
買い切り型のWebサービスでは、ユーザーは購入した商品を所有します。
購入した後はずっとユーザーのものになりますが、一度に支払う金額は多くなります。購入後に新しい商品にアップデートされることもありません。新たに購入する場合は、その度に支払いの必要が生じます。
買い切り型の商品・サービスをを提供する企業側のメリット・デメリットは下記の通りです。
【メリット】 | 【デメリット】 |
一括購入されることで、一度に多額の収益を得ることができる | 次の売上を得るまでの不安定性が高まる(季節の影響を受けやすい業界や製品など) |
契約が単純なため、時間と労力を削減できる(追加料金などの条件設定が不要) | 顧客が一度の多額の支出を行うことから、市場の変化や需要の変動に対する柔軟性が失われる |
顧客が所有権を持つため、製品の保守やアップグレードを必ずしも行う必要がない | 競合他社との新製品と比較された場合、市場競争力が低下するリスクがある |
収益化モデルとしてはサブスクリプション型に注目が集まりがちですが、買い切り型モデルとのメリット・デメリットと合わせて比べてみてください。
サブスク型
サブスクリプションは、商品やサービスを所有・購入するのではなく、一定期間利用できる権利に対して料金を支払うことを指します。
具体的な種類は下記の通りです。
- 自動更新サブスクリプション
課金の期間中はサービスを継続的に利用できる
(例)Netflix,Spotify
- 非自動更新サブスクリプション
課金することで期間限定のサービスやコンテンツを利用できる
(例)ストリーミング配信のスポーツのシーズンパス
サブスクリプションを提供する企業側のメリット・デメリットは下記の通りです。
【メリット】 | 【デメリット】 |
安定した収入を得ることで、将来の利益を試算しやすくなる | 解約は簡単にできるので、解約リスクを考慮する必要がある |
顧客データの収集がしやすい | 無料トライアルのみを利用するユーザーに対するコストも発生する |
収集したデータの活用によってサービスの最適化を図ることができる | コンテンツを更新し続ける必要があるため最適化させる負担が大きい |
有料サブスクリプションは各分野で成功の可能性を秘めていますが、デメリットや課題も抱えていると抑えておきましょう。
手数料(マッチングサービス)型
手数料型とは、企業がマッチングサービスを提供することで、マッチングが成立した時点で顧客から手数料を得るモデルのことです。
マッチングモデルの収益ポイントは2つに分けることができます。
- 送客ベース(サイトへの誘導、資料請求、お問い合わせなど)
具体例として、価格.comのような商品比較サイトが挙げられます。
- 成約ベース(商品売買の成立など)
メルカリやFrillなどのプラットフォームは、売買が成立した時点で手数料が発生するモデルとなっています。
例えば人材紹介のマッチングサービスは多数存在していますが、下記のように競合が少なさそうな領域を狙うのも有効です。
- 外資系企業から解雇された日本人と日系企業のマッチング
- サラリーマン×副業に特化した人材紹介
- 退職代行から第二新卒向けの求人紹介
またビジネスマッチングでも下記のような例が挙げられます。
- 中小企業診断士と中小企業の経営者のマッチング
- シルバー人材と事務や軽作業の仕事を提供する企業のマッチング
- 繁忙期に人手不足な賃貸管理会社と宅建保有者のマッチング
手数料(マッチングサービス)を提供する企業側のメリット・デメリットは下記の通りです。
【メリット】 | 【デメリット】 |
少額の費用で開始することができる | 新規の競合サイトが簡単に参入できるので、市場の変動や競争が激しくなる |
取引ごとに手数料を徴収できるため、収益の安定性が高まる | 信頼性と評判が重要になるため、詐欺や不正行為に対処するための対策が必要 |
販売者と購入者の取引の仲介を行うため、詐欺や支払い遅延などのリスクを分散できる | ユーザー同士のトラブル解決や顧客サポートに対する負担が発生する |
一定の取引件数を満たすことができれば利益を確保できるため、安定した収益を確保しやすいのが手数料型のモデルの魅力です。
広告型
広告収入とは、自社が運営するWebサービスにユーザーを集客し、広告を掲載したり、掲載した広告がアクションされることで報酬を得る仕組みのことです。
具体的な広告収入のモデルは下記の通りです。
- 純広告(バナー広告、テキスト広告)
- 動画広告(Youtube、Instagram)
- アフィリエイト広告(ASP)
- アドネットワーク(Google AdSense)
安定して広告収入を得るには、大前提としてWebサービスへの一定のアクセス数を確保する必要があります。広告を出稿したとしても、Webサービスと広告の親和性が高くなければ、ユーザーの満足度は低下してしまうでしょう。
また広告出稿は低額で開始できますが、半年から1年程度は成果が出ない可能性も考えられます。安定した売上を見込めないことから、広告型に重点を置くことはあまりおすすめできません。
自社商品・サービスの販売
Webサービスで集客したユーザーをECサイトに誘導することで、販売数を増やして収益化していくモデルです。既に自社商品やサービスがあれば、Webサービスのマネタイズ方法としては主流だといえます。
現時点でネット販売を行っていない場合は、下記の方法で販売が可能です。
- ショッピングモール型のECサイト
ショッピングモール型は、Amazonや楽天のように多くの企業が集まって販売しているECサイトです。具体的には下記の2種類があります。
【種類】 | 【概要】 | 【具体例】 |
出店型(テナント型) | ショッピングモール内に自社店舗を構えて商品を販売する | 楽天市場・Yahoo!ショッピング |
出品型(マーケットプレイス型) | ショッピングモール内に自社商品を出品して販売する | Amazon |
自社でECサイトを構築するメリット・デメリットは下記の通りです。
【メリット】 | 【デメリット】 |
オリジナルのシステムを取り入れることで、追加の開発や改修も自由に行える | 開発コストがかかる(小規模なら100万円以内、中規模なら200~500万円) |
企業や製品のブランディングができる(独自ドメインやサイトデザインなど) | 運用面でも集客コストがかかる(広告出稿やSEO対策など) |
購買データや顧客データの集積が可能なので、次の施策を打ち出しやすい | ECサイトの知名度向上まで一定の時間を要する |
- ショッピング型ECモールへ出店する
ECモールへ出店するメリット・デメリットは下記の通りです。
【メリット】 | 【デメリット】 |
特に大型のECモールでは集客力が高いので、早期から集客を期待できる | 参入している企業が多く競合が多いため、価格競争に陥りやすい |
知名度が高いことから、不信感によって販売機会を逃すことがない | 固定費としてランニングコストが毎月発生する |
運営面でのサポートを受けられるため、ノウハウが無くても安心して始められる | サイトのデザインが画一なので、商品やサービスの世界観を演出しにくい |
企画から一緒にサービスを開発してくれる会社に依頼
開発会社へ依頼を行うなら、企画の段階から一緒にWebサービスの開発を行ってくれる会社に依頼することをおすすめします。
企画の初期段階であるアイデア出しの段階から、発注者の目線に合わせて不安や悩みを解消してくれるかが大切なポイントです。企画・設計だけでなく、適切な集客方法などについて相談することで、収益化に至るまでの道筋も見えてくるかもしれません。
実際に開発会社に問い合わせてみることで、開発会社や担当者の実績や熱意を感じ取ることができるでしょう。