アプリ開発のユーザーフィードバック、データの収集方法や実装すべき機能

アプリの評価やレビューなどユーザーフィードバックを積極的に反映することで、機能を改善してアプリの品質を向上させることができます。アプリ自体にフィードバック機能を実装すると、利用者の無意識の行動からも開発のヒントがみつかります。ユーザーフィードバックの目的、データ収集と活用のポイントについて解説します。

ユーザーフィードバックの3つのねらい

ユーザーフィードバックは、利用者の評価や感想、使用感、新機能や改善に対する要望などを得ることです。フィードバックの情報は、公開されたデータ、ログから自動的にロ収集できるデータ、インターネットリサーチを実施して収集する情報のほか、カスタマーサポートに寄せられたクレームなどがあります。

大きく分けてアプリ開発の流れは、企画・設計段階、デザイン・開発段階、そしてアプリのリリース後の運用段階の3つのフェーズに分かれます。それぞれの段階においてユーザーの声をプロダクトに反映することが大切です。

ユーザーの期待に応えることによって満足度が高まり、優れたアプリは口コミで利用者を拡げていきます。ユーザーフィードバックは軽視できないプロセスのひとつです。

ユーザーに価値のあるプロダクトの設計

アプリをリリースする前は、既に人気のある競合他社のアプリに関する情報収集や、マーケティングリサーチなどによってユーザーニーズを探ります。こうして集めた情報をアプリの企画・設計やデザインに反映することで、ユーザーに価値のあるプロダクト制作を実現できます。

当然のことながらアプリの作り手側にも、実装したい機能や手掛けてみたい技術がありますが、ユーザーの価値を考慮した上ですりあわせが必要です。利用者の声に耳を傾けて機能を最適化していくことによって、洗練されたアプリ開発が可能になります。

次の記事でも、アプリ開発のポイントについて詳しく解説しています。アプリの設計にお悩みの方は、ぜひ合わせてご覧ください。

フィードバックサイクルを回して利用者を拡大

アプリはリリースすればそれで終了というわけではありません。アプリのストアには、ユーザーの評価やコメントが寄せられます。BtoBのアプリであればカスタマーサポートセンターに問い合わせ、時にはクレームが届きます。

こうしたユーザーフィードバックを放置しておくと信頼を損ないます。重大なバグフィックスには速やかに対応し、要望の多かった機能については前向きに追加実装を検討することが大切です。利用者の声をもとに改善を続けることが、アプリのファンを増やすためには欠かせません。

ビジネスにはPDCAという基本的かつ伝統的な改善のサイクルがあります。リリース前の企画・設計あるいはデザインの仮説が必ずしも正しいとはいえません。継続的にユーザーフィードバックを得て、開発の方向性にズレがないか確認すべきです。フィードバックをアプリのアップデートや次の製品の企画に役立てます。

時期を決めて定点観測的にアプリの利用状況に関するデータ収集をしたり、満足度調査などのアンケート調査を行ったりするなど、定量的な効果を把握する工夫も大切です。

持続的な利用による収益基盤を安定

アプリのジャンルにもよりますが、アプリから収益を得る方法としては、ストアからの販売、アプリ内課金に加えて、サブスクリプション(月額や年額の定額制)が普及しています。特にサブスクリプションのビジネスモデルの場合、継続して利用してもらうことが安定した収益基盤を形成します。アップデートなどの際にチャーンレート(解約率)を下げることが重要なミッションです。

アプリのファン、いわゆるマーケティングでいうロイヤルティの高いユーザーは口コミ効果が期待できるため、広告予算をかけずに宣伝できる効果があります。またメーカーや開発会社のファンになってもらうことで、他のアプリを使ってもらうクロスセル効果が期待できます。ビギナー/スタンダード/プロなど機能と利用方法に合わせて上位のアプリがある場合は、アップセルとして上位バージョンへの乗り換え促進もスムーズに行えます。

ユーザーフィードバックの収集、5つの領域と手法

あらゆるユーザーがアプリの使用感を能動的に伝えるとは限らないものです。思っていることと伝える行為の間にはハードルがあります。ネガティブなクレームを爆発するまでを放置する状態は避けなければなりません。

企業側がユーザーフィードバックを積極的に行っている場合は利用者からの情報が集まり、フィードバックに無関心な場合は、まったく情報が得られない傾向にあります。さらにいえば、自動的に評価を収集できる機能をあらかじめ実装する工夫によって、ユーザーを煩わせずにフィードバックの収集が可能になります。

利用者の行動履歴のログを収集することも踏まえて、ユーザーフィードバック収集に関する5つの領域と手法を解説します。

フィードバック機能の実装

アプリのダウンロード時にパーミッション(許諾)が必要になりますが、アプリのエラーや障害時には、ユーザーに対して状況をエラーメッセージで伝えるとともに、その情報を開発や運営側においても把握できるようにしておきます。

アプリに不満を感じたユーザーは、フィードバックをすることなく利用をやめてしまうことが多いものです。というのは、わざわざ不満を報告すること自体が面倒くさいと考えるからです。会員登録が必要なアプリでは、退会する場合にユーザーフィードバックを得られる機能を実装しておくことで、改善すべきユーザーの声を拾える場合があります。

ユーザーの行動履歴(ログ)の取得

フィードバック機能の実装に関連しますが、ユーザーがどの機能を使っているか、どの機能に処理の時間がかかっているかなど、行動履歴のログを収集します。使われていない機能を把握し、つまずいている画面の推移などの情報を開発に活かすことが大切です。アプリのパフォーマンスやUI/UXの改善のためにログを積極的に活用します。

ユーザーの評価やレビュー

App StoreやGoogle Playのストアにおける評価やレビューは、アプリの利用状況などを知る上で重要なユーザーフィードバックです。アプリ内に評価や感想の記載を促す機能を実装する場合、メッセージを表示させる適切なタイミングと頻度が求められます。ファーストインプレッションも大切ですが、アプリを使い始めたばかりの場合には機能を熟知していないため、ある程度使った後でフィードバックをもらうと深い情報が得られます。

アンケート調査やキャンペーン

競合他社と比較したい場合は、競合分析ツールを使って定量的なデータを収集するほかに、第三者にインターネットリサーチなどのアンケート調査を依頼してユーザーの声を収集できます。費用がかかりますが、グループインタビューやデプスインタビューなどによる方法も考えられます。

プレゼントキャンペーンの応募時に簡単なアンケートフォームを設置してユーザーの嗜好などを知ることも可能です。利用しているアプリのほか、よく見るメディア、買い物の頻度といった情報を収集することにより、ユーザーのライフスタイルが推測できます。こうした洞察を新機能の企画開発に活用します。

カスタマーサポートやヘルプデスクの問い合わせ

特にBtoBのアプリでは、使い方に困ったユーザーのためにカスタマーサポートやヘルプデスクの設置が重要です。問題が生じたときに詳細を知る受け皿になり、対応によって企業の信頼性を向上させる役割を果たします。オペレーターが問い合わせ内容をデータベース化ならびに分類して、緊急度や頻度の高いものは開発側にフィードバックしてバクの修正などに対応します。

こうした窓口に寄せられる情報を、ユーザーフィードバックとして活用するとよいでしょう。クレームの中に開発のアイデアが隠されている場合もあります。サポート部門と開発部門を別々の外部のスタッフにアウトソーシングしている場合もありますが、問題意識や情報を共有することによりアプリの満足度を高められます。

フィードバック機能の実装

ユーザーフィードバックの収集方法をあらゆる視点から挙げましたが、次にアプリの企画・設計段階で標準装備として加えておくべき機能をピックアップします。当然といえば当然の機能もありますが、あらためて見直すとよいでしょう。

エラーメッセージ

アプリに何らかの不具合が生じた場合にエラーメッセージを表示させます。同時に何が起こったのかログに記録しておくことが理想的です。ただし、収集するときのデータには匿名性が求められます。

プログレスバー、ローディングインジケーター

アプリのダウンロード時、あるいは何らかのファイルをアップロードする際に進捗を示すのがプログレスバーやローディングインジケーターです。待機時間にアニメーションなどを表示してストレスを改善します。ローディング時間などをフィードバックとして得ることで改善に役立てられます。

評価・レビュー

一定期間の利用があったユーザーに対して、自動的に評価を促す機能をあらかじめ搭載しておきます。アプリストアの評価に誘導する方法が一般的ですが、開発や運営会社に送信する方法もあります。

評価やレビューのフィードバックを増やす方法として、消費者向けのモバイルアプリでは、ユーザーフィードバックを求める曜日や時間帯にも留意すべきです。

たとえば、社会人の利用者が多いアプリでは、朝の通勤時の10時前後、昼食が終わった2時頃などのように、モバイル端末を見る時間帯の利用時にフィードバックを求めます。さらにECアプリであれば、商品配達完了など特定のアクションを起こしたときのほか、毎週利用しているヘビーユーザーなどターゲットを絞り込んでフィードバックを求めることにより、フィードバックに応じてもらえる確立が高くなります。

カスタマーサポートへのリンク

ネガティブなフィードバックはユーザーの貴重な声とはいえ、クレームを最小限に抑えるための機能が必要です。ヘルプ機能のほかカスタマーサポートへのリンクを実装します。

FAQはアプリ内部に設置するほか、Webサイト上に掲載して、ユーザーから問い合わせ頻度の高いものを目立つトピックとして掲載すると効果があります。ユーザーフィードバックの頻度と連動した動的なFAQを構築すると、求めている情報にユーザーがたどり着きやすくなります。

アプリ改善に向けたフィードバック活用のポイント

続いて、リリース後の運用段階におけるフィードバック活用のポイントです。

アプリのパフォーマンスを改善する

DL数、インストール数、MAUなど運用段階で得られるデータにはさまざまなものがありますが、開発の視点から重視すべきことは、アプリのパフォーマンス改善です。バグフィックスも含めて、特定の処理に時間がかかったり、インターネットに接続を求められたりすることは、ユーザーのイライラを募らせる原因になります。

ストアのコメントも参考になりますが、ユーザーの利用端末や環境はさまざまです。利用している条件に依存している場合があり、冷静に受け止める必要があります。

ストアの評価やレビューは明確な指標を設定する

ストアのレビューについて触れましたが、アプリのKPIとしてストアの評価の星4.5以上を目指すなど明確な目標を設定するとよいでしょう。開発や運用を担当するメンバーのモチベーションアップにもつながります。また、ジャンル別のランキングも指標のひとつとして使えます。

ユーザーフィードバックはアプリの改善と品質向上のためにあり、定性的なレビューと定量的な5段階評価など、定性と定量の両側面による考察が求められます。

新機能や改善のリクエストを検討する

ユーザーから寄せられた新機能や改善のリクエストの大半は、想定内かもしれません。しかし、アプリを熟知したユーザーのコメントから斬新な提案がみつかる場合があります。生産者の立場に立って企画開発まで積極的に参画する生活者をアルビン・トフラーはプロシューマーと呼びましたが、クレームから次の企画のアイデアがみつかる可能性もあります。

ユーザーフィードバックで注意すべきポイント

評価やコメントにはユーザー個々の視点から偏りが生じがちです。キャンペーンなど景品を設定してアンケート調査を実施する場合は、よい回答しか得られない場合があります。一方、行動履歴などのログデータは意識的なバイアスがかかりませんが、ユーザーの実態を必ずしも反映していないかもしれないという前提で扱うべきです。

ユーザーの声が100%正しいとは限りません。アプリのコンセプトにしたがって、対応するかどうか取捨選択が必要です。最終的な判断は開発を担当するメンバーそれぞれの当事者に委ねられています。その判断が他社との差別化につながることもあります。

まとめ

ユーザーの声をアプリにフィードバックするには、さまざまな方法があります。企画・設計・デザインの段階からユーザーを意識して開発し、リリース後はアップデートなどのタイミングで積極的にユーザーフィードバックを改善に活かすことにより、利用者の満足度を高めてアプリを支持するファンを育成します。フィードバックサイクルは持続的に回していくことに意義があります。

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