マーケティングを見据えたアプリ開発を行うには?実践のポイント解説
スマートフォンが普及したことで、最近ではアプリマーケティングの注目度が高まっています。モバイルファーストと言われる昨今において、アプリマーケティングを展開することは、ユーザーとの接点を増やす重要な施策です。
また、既存のマーケティング手法に加えてアプリマーケティングを展開することで、広告効果の最大化を図ることも可能です。
とはいえ、アプリマーケティングを実施するのであれば、それに見合った機能を搭載したアプリを開発しなければなりません。例えば、新規顧客の集客を目指すのか、顧客データの管理を第一とするのかによって、アプリの内容も変わるでしょう。
そのため、開発を検討する段階でマーケティングを見据えておく必要があります。この記事では、マーケティングを見据えたアプリ開発について、概要から実践のポイントまで解説します。
アプリマーケティングとは
アプリマーケティングは、スマートフォンアプリを用いて顧客と接点を作り、商品やサービスの購入につなげるマーケティング手法です。
アプリマーケティングを行う主な目的は、「アプリの利用者の増加」と「継続利用の促進」の2点です。つまり、アプリマーケティングのゴールとは、「アプリの集客とエンゲージメントの両方を高めながら、収益アップにつなげること」といえるでしょう。
ここでは、アプリマーケティングが求められる理由と背景を解説します。
アプリマーケティングが重要視される背景
アプリマーケティングが重要視される理由には、人々がスマートフォンを扱う時間が増えたことが挙げられます。
従来のWebマーケティングでは、Webサイトの充実やSEO、リスティング広告、バナー広告などが主流でした。しかし、スマートフォンが普及するようになったことで、マーケティングの方法に変化が起きるようになったのです。
昨今ではパソコンよりもモバイル端末を使ってインターネットを利用するユーザーの方が多く、モバイルファーストと言われる時代になりました。Webサイトや各種サービスも、モバイル端末に寄せたもの、もしくはモバイルオンリーのものもリリースされるようになっています。
スマートフォンが持つ機能の中でも、従来のガラケーと一線を画すものこそが「アプリ」です。
アプリには生活に役立つものから仕事に役立つもの、プライベートで楽しめるエンタメ性のあるものまで、豊富なバリエーションがあります。ニールセンデジタル株式会社の2019年12月の調査によると、スマートフォンの利用時間の92%をアプリの利用時間が占めており、残りの8%がWebブラウザ、という結果が出ています。
また、月に1回以上利用するアプリ数は平均34.6個となっており、生活に欠かせないものといっても過言ではありません。
こうした背景もあり、アプリを通したマーケティング活動はますます重要性を増しています。
具体的なアプリマーケティングの手法
アプリマーケティングにはさまざまな方法があります。ここでは一般的な5つの手法についてご紹介します。
ASO(アプリストア最適化)
ASOとは、各アプリストア内における自社アプリケーションの検索順位を上げるための手法です。アプリストアの最適化を行えば、検索順位の上昇だけでなく、ダウンロード率のアップも見込めます。
検索エンジンの最適化を表す「SEO」を知っている方は、ASOを「アプリにおけるSEO対策」と置き換えてもらえれば理解しやすいのではないでしょうか。
具体的なASO対策は以下の通りです。
- ユーザーの検索意図を探り、それをアプリ名や説明に反映させる
- アプリ内にレビューページへの導線を作る
- アプリ利用時のスクリーンショットや動画を載せる
など
このほかにもさまざまなポイントを作り込むことでアプリを魅力的に見せ、ダウンロードの獲得を狙います。
自社サイトを活用したプロモーション
自社で運営しているオウンドメディアや、LP(ランディングページ)を活用して、アプリを宣伝する手法です。
特にLPは広告や検索エンジンとの相性が良いため、LP内でApp StoreやGoogle Playなどのアプリへ誘導するリンクを貼り付けておくことで、顧客にインストールを促せるでしょう。
また、オウンドメディアの運用も行っているのであれば、記事内でアプリへの誘導を促すのも効果的です。
SNSや動画でのプロモーション
自社で運営するSNSもアプリマーケティングには効果的です。SNSなら手軽に投稿が行え、ダウンロードして欲しいアプリの宣伝も行えます。
また、アプリは実際に使っている様子を見せることも重要になるため、動画でのプロモーションにも力を入れてみましょう。
ユーザーへの訴求だけでなく、フィードバックを得られることもSNSの魅力です。例えば「動画SNS」と呼ばれるYouTubeやTiktokのコメント機能では、カジュアルにユーザーからの意見を直接受け取れます。アンケートなどでは得られないユーザーの本音が収集できる貴重な機会であるため、直接的なレビューやフィードバックが欲しい場合は、積極的に活用してみましょう。
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、SNS上で影響力のある「インフルエンサー」に自社のサービスや商品を紹介してもらう、コミュニケーション型の手法のことです。アプリへの認知獲得が期待できることから、アプリマーケティングでも主流となりつつあります。
インフルエンサーマーケティングを行う際は、「インフルエンサーの選定」が重要です。人気が高いインフルエンサーに頼めば良さそうに思えるかもしれませんが、人気が高いと報酬もその分高くなります。あくまでアプリと親和性の高いインフルエンサーを見つけるのが、アプリマーケティングを成功させるための近道です。
自社でインフルエンサー選びが困難なケースでは、インフルエンサーマーケティングに特化した会社に依頼してみましょう。
広告配信
アプリマーケティングでは広告配信も効果的です。特に主要なアプリストアであるApp StoreやGoogle Playでは、それぞれ「Apple Search Ads」「Google広告」から広告の出稿が代表的です。例えば、運用型広告では、「リスティング広告」と「ディスプレイ広告」の2種類があります。
・リスティング広告(検索連動型広告)
ユーザーが検索した結果に応じて、画面の上部または下部に表示されるもの
・ディスプレイ広告
あらゆるサイトやアプリの広告枠に表示されるもの
このほかにも、さまざまな広告配信手法があります。媒体の中には、ユーザーの興味関心に応じたターゲティングが行えるものもあるため、自社アプリに興味を持ってくれそうなユーザーを狙って広告を届けることも可能です。
アプリマーケティングを実践する効果
アプリマーケティングを行うことで、最も効果があるとされているのが「顧客の囲い込み」です。
スマートフォンは個人が持つものであるため、アプリを継続的に利用してもらうことで、顧客との接触回数を増やすことができます。また、アプリマーケティングでは収集したデータを通して、ユーザーの行動分析・コンバージョン率・アップセルとクロスセルの実施などが行えます。
顧客の利用データを収集することで各種施策やサービスの改良に生かし、さらに良いものを作るポジティブな循環を生み出すことが可能です。
その他、アプリマーケティングには下記のような施策があります。
- プッシュ通知による情報発信
- 位置情報を活用した情報発信
- アプリの継続利用促進
- ターゲティングによる配信の最適化
すでにアプリを開発していたり、これから開発をしたりする場合には欠かせないものなので、ぜひ取り組んでみましょう。
マーケティングに活用できるアプリの機能
アプリをマーケティングに活用するのであれば、あらかじめマーケティング施策に対応した機能を搭載させておく必要があります。
今回はアプリマーケティングに活用できる機能の代表例として、「プッシュ通知」「クーポン配信」「ポイントカード、スタンプ機能」の3つを紹介します。
プッシュ通知
プッシュ通知とは、アプリをダウンロードしているユーザーに情報を届ける機能です。アプリを開いていないユーザーにも最新の情報が届けられます。プッシュ通知のメッセージをタップすればすぐにアプリに移動できるため、ユーザーに次の行動を促す方法としても有効です。
プッシュ通知では、例えば「最新情報のお知らせ」や「クーポン配布のお知らせ」など、特にユーザーに知ってもらいたい情報を配信するとよいでしょう。
ただ、プッシュ通知を過剰に使いすぎると、ユーザーの迷惑となる恐れがあります。最悪の場合は、アンインストールにつながるリスクも伴うので注意が必要です。プッシュ通知を活用する際は、ユーザーが不快に思わない「通知の頻度」と「時間帯」を意識しましょう。
クーポン配信
クーポン機能をアプリに搭載させることで、利便性を向上しつつユーザーの利用を促進できます。
実店舗のあるサービスの場合、従来の紙クーポンでは常に持ち運ぶ必要があり、必要なときに限って忘れることも珍しくありませんでした。その点、アプリのクーポン機能ならスマホ1つで完結し、出し忘れる心配もなくなります。
オンラインサービスの場合も、クーポンの配布をプッシュ通知で知らせることで、ユーザーの訪問や利用を訴求できるといった効果が期待できるでしょう。
魅力的なクーポンを届けることができれば、ロイヤリティの向上やリピーターの獲得の効果も望めます。
ポイントカード、スタンプ機能
クーポン同様に、ポイントカードをアプリに完全に移行する会社も増えています。紙のスタンプカードもクーポンと同様、ユーザーが忘れてしまうと機能しません。加えて、従業員側にもスタンプを押したり、カードを管理したりするコストがかかります。
その点、アプリにスタンプ機能が備わっていれば、出し忘れたり押し忘れたりすることがなくなるほか、顧客単価も上がりやすくなり、より正確な情報分析もできるようになるでしょう。
アプリマーケティング実施のポイント
ここからは、アプリマーティングに取り組む際のポイントを、開発段階とアプリのリリース後に分けてご紹介します。
アプリの開発段階
アプリの開発段階において、重要なポイントは数多くあります。
一般的に、アプリ開発の流れは以下の通りです。
- 1.企画フェーズ
- 2.設計フェーズ
- 3.開発フェーズ
- 4.リリース以降
まず、企画フェーズではユーザーゴールとビジネスゴール、アプリの機能を検討します。
ユーザーゴールとはアプリを利用するユーザーの目的を考えることです。企業側のメリットではなく、ユーザー側のメリットを優先的に考えましょう。
対して、ビジネスゴールとはお店の認知度の向上など、ビジネス運営に役立てられるメリットなどのことです。この点をきちんと設定しておかないと、アプリ開発をする意味を見失ってしまいます。
そして、アプリの機能は評価に直接影響するものなので、どういった機能が必要なのかを考える必要があります。
次に、設計・開発フェーズで注意すべきポイントです。
このフェーズは実際にアプリの根幹を作る部分なので、慎重に決めることが大切です。
自社のサービスやユーザーを考慮したとき、ネイティブアプリが合っているのか、それともWebアプリなのかなど、リサーチを行います。» ネイティブアプリ開発とは?Webアプリ,ハイブリッドアプリとの違いを比較解説
その他にも、対応するOSの種別、設計の拡張性・柔軟性にも気を配るようにしましょう。拡張性と柔軟性のない設計では、新たなマーケティング機能が実装できない可能性もあります。
そして、このフェーズでは顧客の視点に立った開発を心がけるようにしてください。
多くの人に愛されるアプリというのは、機能性が富んでいるだけで人気が出るわけではありません。ユーザーに愛される要因はさまざまな理由がありますが、必要な要素はデザイン性やユーザビリティの高さでしょう。多くの人を魅了するデザインであれば、その他のアプリよりも目につきます。そして、継続的に親しんでもらうためには、利便性も欠かせません。
最後に、アプリをストアにリリースする際にもポイントがあります。
具体的に注意が必要なものとしては、キーワード・アプリ名やストアのカテゴリ選択、アイコンなどが挙げられます。アプリ名やキーワード、カテゴリ選択などは、ユーザーに見つけやすくするための重要な項目です。同じカテゴリやジャンルに属する競合アプリをリサーチしながら進めていくと良いでしょう。
また、覚えやすいアプリ名であることは必須条件ではありますが、誤って商標侵害をしないよう事前の先願調査をおすすめします。先願調査とは、出願されている商標を確認するものです。
起こりうるリスクを回避しておくこともマーケティングでは重要です。リリースと同時に何かトラブルが起きぬよう、注意を払いましょう。
アプリのリリース後
アプリリリース後は「プロモーション」や「ユーザーの囲い込み施策」などを中心にマーケティングを進めていきましょう。
・プロモーションの実施
ユーザーを獲得するためには適切なプロモーションが必要です。前半でご紹介したような、ASO対策、広告配信、インフルエンサーマーケティングといった施策や、プレスリリースやWebサイトの作成、SEOでの集客などさまざまな打ち手が考えられます。
これらの中から自社アプリに適したものを見極め、実施していきましょう。
・ユーザーの囲い込み
解析環境の構築やレビューサイト登録から、前述の「プッシュ通知」「クーポン」「ポイントカード」などといった各種施策を進め、ユーザーの心を掴みましょう。各施策の効果を分析し、良いものを伸ばして悪いものを改善していくことも重要です。ユーザーの声を集めて、アプリの不具合や不満点を素早く修正していくことも忘れてはいけません。
また、売上アップに向けてアプリ内の導線設計の改善やアプリ内広告の見直しをおこなうなど、分析をもとに課題を発見し施策を実施し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。
アプリマーケティング成功のポイント
次に、アプリマーケティング成功のポイントについてご紹介します。
アプリマーケティングを成功させるポイントは主に5つあります。
1. アプリ導入の目的が明瞭であること
アプリ開発において、一番最初のフェーズに位置する「目的設定」は何よりも重要です。顧客データの収集・管理を第一とするのか、既存顧客の再来店を伸ばすのか、新規顧客の集客を目指すのか、どれを第一とするかで内容が変わり、開発費用も異なるでしょう。
後から効果検証を行うために、KGIやKPIを設定したうえで開発・運用を進めましょう。
2. アプリ導入後の運用を想定しておくこと
例えば、新規顧客の集客を目的に設定して来店数が増えたとしても、その後のリピートにつながらなければチャンスは水泡に帰してしまいます。
クーポンを用意するのか、ポイント制度を導入するのか、最新情報を発信するのかなど、アプリの機能をフル活用した運用プランを設計しておきましょう。
3. さまざまな情報発信を行うこと
ユーザーは実益を求めているため、サービスや製品の情報を提供し続けるだけでは飽きられてしまいます。クーポンやポイント、割引などを提供できると好印象でしょう。
客足やアプリの利用率が増えないという問題を抱えた場合は、アプリから発信する情報について見直すと良いかもしれません。
4. ユーザーファーストの視点に立つこと
アプリの中には、クーポンなどの特典がもらえるまでのハードルが高いケースも散見されます。来店回数や購入金額に応じてポイントやスタンプが貯まるものは、頻繁に利用しないタイプのものではデメリットになってしまいがちです。
企業側の想定より来店頻度が多くならない場合には、ユーザー目線に立ち返り、メリットを実感できるようになっているか否かを見直してみましょう。
5. 効果測定を行うこと
アプリの導入によって顧客単価がどう変わったのか、来店客数は伸びたのかなど、定期的に振り返りましょう。
例えば、来店客数は伸びているものの顧客単価が下がっているときには、商品・サービス・クーポンの内容を見直す必要があるかもしれません。広告導入コストが顧客一人の購入単価より上回っている場合には、告知方法を検討し直すことも視野に入れましょう。
これらのポイントに注意して、より良いサービスを目指してみましょう。
まとめ
今回はアプリマーケティングについて、概要や注目される背景、実施効果やポイントについてご紹介しました。
アプリマーケティングは、スマートフォンが普及しユーザーとの接触回数が大幅に増えた、今の時代ならではのマーケティング手法と言えます。
世界中で市場競争が激化し、国内人口も減少していることから、顧客を囲い込む施策は欠かせません。顧客を囲い込む施策にもさまざまな施策はありますが、ユーザーの行動データを収集しながら施策を最適化できるのは、アプリマーケティングの強みと言えるでしょう。
ただ、実際にマーケティングを実施する場合には、運用を見据えたアプリ開発を行う必要があります。もしアプリマーケティングの導入を検討するのであれば、この記事でご紹介した実践のポイントを参考に、開発を進めてみてはいかがでしょうか。