プロが語る「失敗するアプリ開発」事例7選
アプリ開発における失敗は、実は珍しいことではありません。
「開発が終わらない」「審査に通らない」「ユーザーからの評価が低い」など、当社が日々受けるご相談の多くは、ある共通したパターンに分類できます。
本記事で紹介する7つの失敗事例は、現場で耳にしてきた「リアルな失敗事例」です。
- ①スケジュール管理の甘さ
- ②審査対応の軽視
- ③オフショア開発の丸投げ
- ④UI/UX軽視による低評価
- ⑤要件定義不足
- ⑥テスト不備によるバグ多発
- ⑦運用設計の不備
これらの失敗を事前に理解し、対策を講じることで、アプリ開発のプロジェクトがスムーズに進むと考えています。本記事では、アプリ開発会社「株式会社ペンタゴン」で代表である筆者が、アプリ開発で失敗するパターンについて詳しく解説します。
アプリ開発が失敗する7つの共通パターン
失敗するアプリ開発には、必ずといっていいほど共通する特徴があります。
ここでは、実際の現場で頻繁に発生する7つのパターンをご紹介します。
失敗事例① スケジュール管理が甘く「終わらない開発」になる
「いつまで経ってもリリースできない…」という悩みは、アプリ開発現場で最も多い失敗事例の一つです。
その原因は以下のような要素が複雑に絡み合っていることが多く見受けられます。
- 要因①要件定義が曖昧なまま開発が始まってしまう
- 要因②途中で機能追加が繰り返される
- 要因③進捗管理やレビュー体制が甘い
これらが積み重なると、スケジュールがズルズルと遅れ、最悪の場合プロジェクトが中止になることもあります。
対策としては、MVP設計(必要最小限のアプリ設計)による優先順位付けと、マイルストーンを明確にした進行管理が重要です。
MVP開発についてこちらの記事でも詳しく解説しています。
失敗事例② アプリ審査の要件を軽視して公開に至らない
App StoreやGoogle Playの審査に落ちて、何度もやり直しになるというのは意外とよくある話です。
よくある審査リジェクトの理由には、以下のようなものがあります。
- 理由①プライバシーポリシーの記載漏れ
- 理由②テストアカウントの未提供
- 理由③デザインガイドラインに違反している内容
- 理由④Apple/Googleのガイドラインにて必要とされている機能の不足
アプリの審査は「公開直前のチェック項目」ではなく、開発初期から考慮すべき要件です。
開発会社やディレクターと連携し、事前に審査を通すための設計と資料準備を進めておきましょう。
当社では、スマホアプリの審査に精通したコンサルタントが設計段階から要件のレビューを実施し、審査落ちのリスクを下げることができます。こちらの記事「アプリの審査リジェクト原因をまとめ」などで、アプリの審査のノウハウを蓄積しています。
失敗事例③ オフショア開発に丸投げしてプロジェクトが迷走
コスト削減のためにオフショア開発を選ぶ企業は多いですが、適切な体制を整えずに丸投げしてしまうと失敗のリスクが高まります。
以下のようなトラブルが頻発します。
- トラブル①意図しない実装がされてしまう
- トラブル②時差や文化の違いによりコミュニケーションが不足
- トラブル③納品後のフォローや改善対応が不十分
このようなリスクを回避するには、国内側でのディレクション体制の構築が必要不可欠です。
設計書・仕様書をプロトタイプやビジュアルで共有し、進捗を定期的にレビューする文化を根付かせましょう。
「いい感じにして」「よしなに頼む」など曖昧な指示は一切通じないので、コミュニケーション面でストレスを抱えることもあります。実際に、オフショア開発会社とのコミュニケーションをご相談いただくケースもあります。
失敗事例④ ユーザーからのレビュー評価が伸び悩む
「★1レビューが多く、インストール数が伸びない」という状況に陥るアプリは少なくありません。
原因の多くは、以下のようなUI/UX設計の甘さにあります。
- 原因①複雑な画面遷移や操作性の悪さ
- 原因②期待する動作と実際の挙動のズレ
- 原因③ロード時間が長い、動作が重いなどのストレス要素
ユーザーは、第一印象でアプリの評価を大きく左右します。そのため、リリース前に必ずユーザビリティテストを実施したり、リリース後はユーザー行動分析を実施し、使いやすさの調整を行いましょう。
私が体験した事例としては、某大手アパレル会社のアプリ開発を担当しておりました。オフショアで開発された形跡もあり、設計が不適切だったため、ローディングに20秒近くかかっていました。アプリストアのレビューは荒れており、低評価が多数がありました。私が設計から改善提案させていただき、再実装。ローディングを3秒程度までに短縮したこともあります。
失敗事例⑤ 要件定義が不十分で開発途中に迷走
「やっぱりこの機能も必要だった」といった追加要望が繰り返されると、プロジェクトはすぐに混乱します。要件定義が不十分な場合、以下のような問題が発生します。
- 問題①機能の追加・削除が頻発し、開発コストが膨らむ
- 問題②チーム内で目的が共有されず、優先順位が曖昧になる
- 問題③テストやドキュメントが後手に回る
こうした事態を避けるには、KPIに基づいた機能設計と、ユーザー視点でのストーリー整理が必要です。
実際、経済産業省が公開している「情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集」では、要件定義の不備や契約内容の曖昧さが原因で発生した紛争事例が多数紹介されています。これらの事例は、アプリ開発における失敗事例と共通する要因を含んでおり、事前に対策を講じる重要性を示しています。
失敗事例⑥ テストが不十分で「バグだらけのアプリ」として評価を落とす
開発の最終段階でありがちな落とし穴が、「リリース直後にバグが連発して評価が下がる」というものです。
この背景には、以下のようなテスト体制の不備があります。
- 不備①テスト項目が十分に洗い出されていない
- 不備②手動テストに依存し、検証が漏れている
- 不備③本番環境と異なる環境での確認不足
ユーザーの信頼を得るには、品質管理が不可欠です。
CI/CD導入による自動テストやQA担当者の早期巻き込みなど、予算に応じた体制を検討しましょう。
失敗事例⑦ 運用・改善フェーズを見越した設計ができていない
リリース後の運用を軽視した結果、改善が進まずアプリが陳腐化するケースも多くあります。
以下のような状況に陥っていないか、事前に確認が必要です。
- ポイント①分析ツールが導入されておらず、ユーザー行動が追えているかどうか
- ポイント②改善リリースの計画がなく、初期状態のまま放置されていないか
- ポイント③お問い合わせや不具合報告の受付フローが整っているかどうか
成功するアプリは、リリース後も“育てる意識”を持って運営されています。
運用設計は、開発初期から並行して行うべき重要な工程です。
アプリ開発前に確認したいチェックリスト
上記のような失敗を防ぐには、開発開始前の準備が重要です。
以下のような観点から、自社の準備状況を見直してみましょう。
まずは「目的の明確化」に関するチェック項目です。
- □ アプリを作る理由(顧客体験の向上/業務効率化/ブランディングなど)が明確
- □ 解決したい課題とユーザーのニーズが一致している
- □ 社内で共有されているKPIや成功指標がある
続いて、ターゲットユーザーの理解に関する確認です。
- □ ペルソナ設計ができている
- □ 類似アプリや競合調査を済ませている
- □ 想定するユーザー行動が整理されている
さらに、要件定義や機能設計に関しては以下を確認しましょう。
- □ 実装したい機能が洗い出され、優先順位が決まっている
- □ MVP(最小実行製品)の範囲が明確
- □ Webではなく「なぜアプリにするのか?」が説明できる
最後に運用面です。
- □ リリース後の改善フローや担当者が決まっている
- □ お問い合わせやレビューへの対応フローがある
- □ 改善を想定したスケジュールや予算が設計されている
このように、チェックリスト形式で「開発前の落とし穴」を可視化することで、スムーズなスタートが切れます。
実際に寄せられた相談事例から学ぶ失敗対策
次に、実際に私たちが受けたご相談の中から、典型的な失敗パターンに該当する事例をご紹介します。
ケース①:半年以上遅延したスケジュール
ある新規事業の責任者の方から、「当初4ヶ月でリリースする予定だったアプリが、気づけば8ヶ月以上経っても完成していない」とのご相談がありました。
原因を深掘りしていくと、初期段階でアプリの仕様や機能要件が固まっておらず、開発途中で「これも入れたい」「やっぱり仕様を変更したい」といった要望が頻発。結果として、エンジニア側の再設計・再実装が繰り返され、スケジュールがどんどん延びてしまったのです。
また、開発チームとビジネス側の連携が不十分で、進捗の可視化ができていなかったことも影響していました。
この失敗から学ぶポイント
- ポイント①開発前の「要件定義」と「優先順位付け」が最重要
- ポイント②スケジュールは余裕を持って段階的に組む
- ポイント③定期的なレビューと報告会で、リスクを早期に共有する体制が必要
ケース②:審査落ちが何度も続いたスタートアップ
別のスタートアップ企業では、App Storeの審査に3度連続で落ちてしまったという相談がありました。
内容を確認したところ、ログイン機能を搭載したアプリであったにもかかわらず、審査担当者用のテストアカウントを用意していなかったことが主な原因。また、アプリ内で収集するデータについての説明不足や、プライバシーポリシー・利用規約の掲載漏れといった、基本的な審査要件を見落としていたことも重なっていました。
この失敗から学ぶポイント
- ポイント①ストア審査には「技術的要件」だけでなく「審査提出の正確さ」も求められる
- ポイント②開発初期の段階で、審査要件(Apple/Google両方)を確認しておく
- ポイント③アプリの仕様に応じた事前準備チェックリストを導入する
ケース③:オフショア開発の仕様ズレで手戻り多発
ある中堅企業では、コストを重視してオフショア(海外)開発を選択しました。しかし、完成して納品されたものが、仕様とまったく異なる挙動だったとのことで、ご相談を受けました。
詳細を確認すると、設計資料は箇条書きレベルの簡易なものであり、開発側は独自の解釈で実装していたとのこと。また、開発チームとのやり取りもテキストベースで週1回程度。仕様の認識違いを修正するために、多くの工数がかかり、結局国内チームで作り直すことに。
この失敗から学ぶポイント:
- ポイント①海外開発チームに依頼する場合は、ブリッジSE(通訳・翻訳役)の存在が不可欠
- ポイント②仕様はテキストだけでなく、画面遷移図・プロトタイプ等で視覚的に伝える
- ポイント③コミュニケーション頻度とレビューサイクルは、国内開発以上に丁寧に設計する
ケース④:レビュー低評価の原因はUI設計ミス
社内で高評価を得ていたアプリが、いざ公開してみるとApp Storeでの評価は低評価。その原因が、UI/UX設計の欠如だったという事例です。「とにかく必要な機能が使えるようになればOK」と考えてしまい、UI/UXの専門家を開発プロセスに関与させていませんでした。
その結果、ナビゲーションがわかりにくい・入力操作が複雑といったフィードバックがユーザーから多数寄せられ、継続率・評価ともに低迷。
この失敗から学ぶポイント:
- ポイント①「使いやすさ」はエンドユーザーにとって最重要項目
- ポイント②開発初期からUI/UXデザイナーをプロジェクトに参加させる
- ポイント③プロトタイプなどを通して、ユーザビリティのテストを実施する
これらの実例からも明らかなように、失敗は偶然ではなく、準備不足や判断ミスによって必然的に起こっているケースがほとんどです。
コスト重視の会社選定にはリスクも
また「できるだけ安く作りたい」というニーズは多くありますが、価格だけで選んでしまうと、後々大きな損失を生む可能性もあります。
以下のようなリスクには特に注意が必要です:
- □ 品質管理体制が不十分で、バグや仕様ミスが多発
- □ 安価な初期見積もりの裏で、追加費用が発生しやすい構成になっている
- □ 納品優先の体制で、プロジェクトの成功を考慮していない
適正価格=信頼できる体制と品質への投資と捉え、金額だけで判断せず、開発パートナーの中身を比較検討することが重要です。
信頼できる開発パートナーの選び方
最後に、失敗を避ける上で重要な「開発パートナー選び」の視点を共有します。
以下の5つの観点をチェックしてみましょう。
- □ 技術力だけでなく、進行管理や提案力があるか
- □ 類似業界や機能での開発実績があるか
- □ UI/UXに対する理解と提案があるか
- □ 問い合わせ時のレスポンスや説明が丁寧か
- □ 要件整理やスケジュール調整を柔軟に行ってくれるか
これらを踏まえて、「一緒にプロダクトを育ててくれるパートナー」かどうかを判断しましょう。
まとめ
この記事でご紹介した内容を参考に、自社アプリの開発を進めてみてはいかがでしょうか。
今回ご紹介したアプリ開発の方法を参考に、アプリ開発企画を進めていきましょう。
もし「自社の事業向けアプリを作りたいけど、実際にアプリ開発の費用はどれくらいになるのか?」
「アプリ開発の外注を検討していて、一度相談したい」などお考えでしたら、アプリ開発会社の株式会社ペンタゴンをご検討ください。
» 公式ホームページ|株式会社ペンタゴン
株式会社ペンタゴンの開発実績については、こちらをご覧ください。
» 株式会社ペンタゴンの開発実績を見る
下記よりお問い合わせできますので、お気軽にご相談ください!