アプリはリリース後にも費用がかかる!運用保守費の相場とは

一般的にアプリ開発は「リリースがゴール」という考え方が多いですが、実はそうではありません。実際には、リリース後の運用やユーザーに対するサポートこそが重要なのです。例えば、新たな機能を追加したり、ユーザーの意見を元に改良を重ねたりすれば、よりユーザーのニーズにマッチしたサービスが形作れます。

アプリの毎月の運用保守費用の相場は、月10万円以上です。障害時の対応やサーバーが稼働しているかの監視、より良いユーザー体験のための改修など運用保守費には様々な内容が含まれているのでこちらの記事で、その内容やポイントなどを解説していきます。

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リリース後に必要なアプリの「運用」と「保守」

アプリを開発した後の業務は、大きく運用と保守にわけられます。ここでは、アプリの「運用」と「保守」の概要と範囲について解説します。

◆運用と保守の内容

アプリの運用

アプリの運用とは、公開されたアプリケーションが安定的に動作し続けるために、日々アプリケーションとシステムを監視し、必要な操作を行う業務です。

具体的なタスクには、アプリケーションがサーバー上で実行されている場合、ネットワーク、サーバーのハードウェア、および関連するソフトウェアの監視と運用が含まれます。またサーバー環境全体、ソフトウェアとハードウェアの統合運用もこのプロセスの一環です。

事業全体に影響を及ぼす可能性があるため、アプリケーション運用は24時間365日の連続稼働が要求され、特にWebアプリにおいては非常に重要です。

アプリの保守

アプリの保守とは、アプリやシステムに発生した障害の原因を突き止め、一刻も早く復旧することや、再発防止に向けてアプリ・システムを改善・改変することです。また、アプリのメンテナンスアップデートや機能追加も、アプリ保守の業務範疇です。

具体的な作業内容は、システム・アプリ障害の究明・復旧、改善提案・改変、OSアップデートへの対応、アプリの機能追加などが挙げられます。アプリ保守は信頼性を高め、ユーザー満足度を向上させるために不可欠な業務です。

アプリの運用・保守にかかる費用の相場は?

冒頭でも触れた通り、アプリは開発して終わりというわけにはいきません。リリース後に不具合が生じる場合もあれば、ユーザーのニーズに合わせて新機能を追加する場合もあります。そして、その度に保守・運用費が発生します。

この運用保守費を見誤ると、トラブル対応が十分に行えずアプリの信頼性を落としたり、ニーズに合わないアプリに陥ったりしてしまう可能性があります。とはいえ、どの程度の予算を見積もっておくのが妥当なのでしょうか。ここからは、アプリの運用費の相場についてご紹介します。

アプリの運用保守費用の相場は10万円~

当社は、2023年2月にインターネット調査を実施し、アプリ開発に携わったことがある354名にアンケート調査(以下、アンケート調査と呼ぶ)を行いました。その結果、アプリの毎月の保守費用に関して、約半数以上が10万円以上要していることが判明しました。

◆運用保守費についてアンケート結果

アプリ開発費用に比例して、運用保守費用も高額になる傾向です。アンケート調査でアプリ開発に「2,000万円以上かかった」と答えた14名のうち、12名が運用保守費用は71万円以上と回答しました。

なお、アプリの維持費の中でもっとも大きな割合を占めるのが、アプリの保守にかかる費用で、年間では「開発費用の約15%」を見込むのが一般的です。

ただし、保守費用はシステムの規模や搭載されている機能、利用者数、ビジネス要件などの要素によって異なります。開発費用の15%程度というのは、ハードウェアやソフトウェアに対する最低限の運用保守費用をさしますが、状況によっては追加の費用が発生する可能性もあるため注意しなくてはなりません。

◆アプリ開発にかかった総額と運用保守費の関係図

対応するOS数によっても変動

基本的に、OSごとにアプリを開発するため、例えばiPhoneとAndroid版のアプリを同時にリリースしている場合、それぞれに運用費と保守費がかかってきます。また、iOSとAndroidアプリどちらも登録料金がかかります。iOSアプリの場合は、「Apple Developer Program」に開発者登録が必要で、年間およそ1万円(99US$)の登録料金がかかります。一方、Androidアプリの場合は、「Googleディベロッパーアカウント」の作成が必須で、およそ2,700円(25US$)の登録料金が必要です。アプリを開発する際は、このようなランニングコストが発生するので、念頭に入れておきましょう。

さらに、旧バージョンのOSに対応する場合にも別途費用がかかります。したがって対応バージョンを増やすと、開発コストや運用保守費膨らんでしまう可能性があります。特に、対応機種が多く、最新以前のバージョンも多く使われているAndroidアプリでは、相場よりも費用が高くなる可能性があり、注意が必要です。

アプリのリリース後に必要となる主な運用コスト7項目

アプリのリリース後に必要となる主な運用項目は次の7つになります。

◆運用コスト7つの項目

項目①サーバーのレンタル

項目②ドメイン

項目③SSL証明書

項目④アプリストア登録

項目⑤アプリの不具合対応

項目⑥アプリのアップデート

項目⑦OSのアップデートへの対応

以下では、この7つ運用コストの項目について解説していきます。

項目①サーバーのレンタル

まず、アプリを運用している限り、毎月のサーバー代が運用コストとしてかかります。Webサイトと同様に、スマホアプリもインターネット上にデータベースを持つ必要があるため、サーバー利用料金が毎月発生します。

サーバーはなるべくお金をかけずに、低価格のサーバーを選びたいところです。しかし、質や耐用性にこだわらずに安いサーバーを選んでしまうと、アプリの利用が集中した際に制限がかかり、一部のユーザーが通信エラーになってしまうなどのリスクがあります。

例えば、大規模な広告キャンペーンやTV・ラジオなどのメディアに取り上げられると、アクセス集中の可能性があります。単にサービスの安定性を考慮するだけでなく、マーケティングも絡む部分なので、そうした観点からも最適な性能を持ったサーバーを利用するようにしましょう。

しっかりと対策しておけば、サーバーダウンなどのトラブルを避けることができるので、既存の顧客との信頼関係を維持することができるでしょう。

基本的に、サーバー代は接続するユーザー数に応じて値段が上がるので、小規模なアプリであればあまり大きな金額にはなりません。しかし、サービスが順調に成長したときには、増強の判断をして、コストをかけていく必要があります。

項目②ドメイン

次に必要な運用コストとして挙げられるのがドメインです。

ドメインとは、インターネット上の住所のようなもので、サービスの看板と言えるでしょう。サイトやWebサービスに触れるとき、あまりドメインやURLを意識しない方もいるとは思いますが、目に触れる機会が多かったり、近年はSNSでリンクをシェアする機会も高まったりしていることから、注意が必要なポイントです。

また、ドメインはユーザーに信頼感を与えたり、サイトの力に影響を与えたりする重要な要素でもあります。例えば、サービス名に紐づいたドメイン名であれば覚えやすく、たどり着きやすくなります。

また、所在が明確な国内のサイトであることを表す「.jp」ドメインは、信頼性のある組織であるというイメージをユーザーに与えることが可能です。webサービスとしてドメインを取得する際には、多少費用がかかっても信頼性のある独自ドメインを取得するのが一般的です。

このドメインの費用は、取得した時と更新する時に発生します。相場は年間1,000~2,000円程度ですが、取得するドメインによってはこれよりも高くなる場合もあります。

項目③SSL証明書

アプリのリリース後にはSSL証明書の費用も発生します。SSL証明書とは、データ通信の暗号化と、通信先のサーバが本物であることを確認するためのものです。

SSL証明書の費用は、無料のものから、年間で最大約10万円かかるものまで幅広く存在します。近年、情報セキュリティへの意識が社会全体で高まっており、SSL証明書によって「なりすまし」を防ぎ、ユーザーに安心感を与えることが一般的です。そのため、サーバやドメインがアプリの基盤として必要な場合は、SSL証明書を取得することをおすすめします。

項目④アプリストア登録

アプリをリリースするためには、アプリストアへ登録しなくてはならないため、そちらの費用も必要です。アプリストアとは、「App Store」や「Google Play」など、ユーザーがアプリを購入・ダウンロードできるプラットフォームをさします。

例えば、Google Playの登録費用は25米ドル(約3,680円)で、更新費用は不要です。一方、App Storeでは登録費用が99米ドル(約1万4,572円)で、さらに毎年99米ドル(約1万4,572円)の更新費用がかかります。

※1米ドル=147.19円で計算(2024年8月16日現在)

アプリ運用において、複数のアプリストアに登録することは一般的です。更新手数料の値上がりを考慮し、十分な予算を確保しておくことをおすすめします。

項目⑤アプリの不具合対応

アプリの不具合への対応費用も必要です。

実際にアプリをリリースして、はじめて不具合や機能の改善点が分かるというケースは少なくありません。アプリの利便性の向上のためにも、不具合とトラブルは早急に対処しましょう。トラブルの対応が遅れると、ユーザーからのアプリへの信頼が損なわれてしまいます。

放置しておくと、結果的にアプリのユーザー数が減ってしまい、売上の減少にも影響するでしょう。売上が減少すると、さらに改修に回せる金額が減ることにもなりかねないため、あらかじめ不具合対応には相応の運用コストを見積もっておくと安心です。

項目⑥アプリのアップデート

アプリのアップデートには機能追加や改善のための費用がかかり、これらはスクラッチ開発とそれ以外の手法で工数や金額が大きく異なります。また、『自社開発か外注開発か』によってもコストが異なります。

◆金額別のアップデート項目表

具体例として、メールアドレスを用いたログイン機能の追加は約20~40万円かかり、SNSアカウントでのログイン機能は10~25万円で比較的安価です。ただし、iOSアプリでは「Sign in with Apple」を導入する必要があり、そのための費用も発生するので、結果的にコストが高めになるケースが多いです。ショッピングアプリにおける決済システムは、既存システムを利用する場合で20~50万円、新規開発時はさらに高額になります。実店舗を持つビジネスに役立つGoogleマップ機能をアプリに組み込む際は、約10~20万円かかります。さらに、ソーシャルゲームアプリでの課金制システムの設置は50~100万円で、全体の調整や複雑な機能追加を行うと総額で300~1,000万円に達することもあります。

デザイン変更に関しては、どの程度の改修化にもよりますが、外注した場合50~100万円が一般的な費用です。このように、機能追加やデザイン変更といったアップデートには高額なコストがかかるため、依頼先によって見積もりが異なることを考慮し、複数社から相見積もりを取ることが重要です。

項目⑦OSのアップデートへの対応

最後に、OSのアップデートへの対応も運用コストとして発生します。

アプリと同様に、スマートフォン自体もより便利になるように、Apple社(iOS)とGoogle社(Android)によって定期的にOSがアップデートされています。スマートフォンそのものを動かすOSがアップデートされると、様々な機能の追加や、不具合の改善が行われます。

利便性が高まる反面、今まで問題なく動いていたアプリが正常に起動しないなど、予期せぬ不具合が起きることもあります。具体的には、起動エラーが発生してアプリが落ちてしまう、ブラックアウトする、画面のフリーズなどが挙げられます。

このように、OSのアップデートによって不具合が起きる場合は、アプリユーザーの多くが影響を受けるものです。そのため、不具合への素早い対応が求められます。

素早く対応するためにも、あらかじめOSのアップデートへの運用コストも見積もっておく必要があります。

アプリの運用保守は自社?外注?

アプリの保守運用は、内製でも外注でも実施可能です。ただし、どちらも一長一短あるため、自社に適した方法を選択しなくてはいけません。外注でアプリ開発した場合は外注した会社に、継続的に保守運用を依頼することがおすすめです。プロジェクトに関わったメンバーがそのまま運用を行うことで、プロダクトへ対しての理解が高く認識が合い点や、意図を汲み取った提案やアウトプットが出せる点が大きなメリットになります。

◆アプリの運用保守の依頼先

ここではアプリの保守運用を自社で行うケース、外注するケースの概要と、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

自社で保守運用を行う

「自社で保守運用を行う」とは、外部のベンダーやサービスプロバイダーに依存せずに、内製でアプリを管理し、維持することです。

自社で保守運用を行うことで、アプリケーションの全ての側面について自社で完全なコントロールが可能になります。これにより、必要な変更やアップデートを迅速に行うことが可能です。長期的に見れば、自社での保守運用は外部ベンダーに依存するよりもコストを節約できる可能性があります。特に、大規模なアプリケーションではこの傾向が顕著です。

また、自社で保守運用を行うことで、アプリの動作や問題解決に関する知識が社内に蓄積されます。これは、将来的な改善や新たな機能開発を行うときに役立つでしょう。

ただし、自社で保守運用を行うためには、専門的なスキルと知識を持つスタッフが必要です。また、これらのスタッフを採用し、維持するためのコストも発生します。

さらに、アプリの保守運用には多くの時間と労力が必要です。そのため、コア業務に割くべきリソースを奪われる可能性があります。特定の問題や困難な問題に対処するためには、深い専門知識が必要となる場合もあるでしょう。

したがって、ITスキルの高い人材を社内に確保していることが必須です。

アプリ開発の外注先に保守運用も外注

アプリの開発を委託した外注先に、保守運用を任せるケースもあります。

アプリ開発の外注先は、アプリの構造や仕組みを深く理解しているため、問題が発生した際の対応が迅速かつ適切に行える点がメリットです。

自社で専門スタッフを雇用するよりもコストを抑えられます。さらに、保守運用にかかる時間とリソースをコア業務に集中させることも可能です。

ただし、アプリ開発の外注先との間で意思疎通がうまくいかない場合、誤解やミスが生じる可能性があります。開発会社に過度に依存すると、自社で問題を解決する能力が低下する可能性も高いでしょう。また、開発会社が倒産した場合や、契約が終了した場合のリスクも考慮しなくてはいけません。

重要なデータや情報を外部の会社に委託することで、情報漏洩のリスクが高まる可能性もあります。

アプリの開発会社とは別の会社に外注

アプリ開発の外注先以外の会社に保守・運用を委託する方法もあります。

新しい会社のため、新たな視点やアイデアを提供してくれる点がメリットです。アプリの改善や最適化を実施し、パフォーマンスやユーザーエクスペリエンスを向上させられる可能性があります。また、アウトソーシングとなるため、自社で専門スタッフを雇用するよりもコストを抑えることが可能です。

一方、アプリ開発の外注先ではない会社は、アプリの内部構造や仕組みを完全に理解するまでに時間がかかってしまう点がデメリットといえます。このことは、問題解決の速度や品質に影響を与える可能性が高いでしょう。

その他のデメリットは、アプリ開発の外注先に保守運用も外注する場合と同じです。

必要なときだけ外注

アプリの保守運用を必要なときだけ外注する方法もあります。継続的にリソースを確保する必要がないため、コストが安価に済む点がメリットです。

また、運用・保守の規模や、繁忙期・閑散期など、自社の都合に応じてリソースを柔軟に調整できる点も、必要なときだけ外注するメリットだといえるでしょう。そのため、市況やユーザーニーズに変化にも、柔軟に対応できます。

ただし、必要なときだけ保守・運用を外注する会社とは、コミュニケーションがとりにくい点がデメリットです。アプリの内容や機能、システムなどの詳細を理解してもらうためには、一定の期間が必要になります。その結果、運用・保守対応が遅れたり、適切な対応ができなかったりするリスクが高くなるでしょう。

また、単発で委託する会社の場合、機密情報の漏洩リスクが高まる点にも注意しなくてはいけません。

アプリ開発を外注するなら、運用コストも事前に確認を

アプリを開発した会社に継続的な保守運用を外注する場合には、事前に確認すべきことと、コストを抑えるにはどうするべきかを把握することが重要です。以下で、それぞれの内容を解説します。

外注先に確認すべきこと

アプリ開発の外注先に保守・運用を委託する前に、コストを明確に把握しましょう。開発費用だけでなく、保守体制や運用コストも含めて詳細に説明してもらうことが重要です。

また、外注先のコミュニケーション能力の高さも確認しましょう。コミュニケーションが円滑でない場合、アプリの開発イメージ共有が難しくなり、望まない結果につながる可能性があります。

さらに、外注先との契約期間や対応可能時間を明確に確認しましょう。特定の時間帯に対応できるか、長期的に契約を締結できるかどうかを把握することは重要です。

アプリの保守・運用において、外注先がどの範囲まで対応できるかを明確にしておくことも欠かせません。例えば、障害対応やアップデート、新機能の追加など、具体的な業務内容を詳細に話し合いましょう。

これらの要素を事前に確認することで、外注先とのコミュニケーションが円滑になり、アプリ開発プロジェクトが成功に近づくことでしょう。

コストを抑えるには?

アプリ開発と運用・保守をコストを抑えながら効率的に行うためには、事前の確認と計画が不可欠です。綿密に準備を進めることで保守運用における要件を明確化し、不要なものは削ったり、自社内で対応して外注費を抑えたりして、過剰なコストを縮小しましょう。

アプリの開発会社に継続的な保守運用を外注することで、効率的な運用と品質向上につながる可能性があります。ただしこの効果を得るためには、委託先の適切な選定と密接なコミュニケーションが欠かせません。

また、必ずしも開発を行った会社がそのまま保守運用に就く必要はありません。保守運用部分のみ別の企業に委託するケースもあります。

保守運用の見積もりを新たに依頼する際は、あらかじめ見積もりの項目や金額の決まり方など基礎知識を押さえておきましょう。見積もりの際は、複数の外注先から相見積もりを取ることで、適切な価格設定を比較できます。複数社の提案をもとに検討し、コストと品質のバランスを見極めましょう。

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まとめ

今回はアプリ開発に関する、リリース後の運用費についてご紹介しました。

アプリは継続的に利用してもらう必要があるため、より良いものを目指してアップデートを繰り返すことが肝心です。しかし、そうした運用をスムーズに進めていくためには、あらかじめ運用にかかる費用を想定しておき、予算と工数を確保しておくことが欠かせません。

今回ご紹介したように、運用には維持にかかる費用のほか、機能追加やOSアップデートの対応などにかかる費用も押さえておく必要があります。

この運用コストを事前にしっかりと確認しておき、アプリの開発だけではなく、リリース後の保守体制を万全のものとしましょう。

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