アプリ開発の専門家が語る「Flutterにはできないこと5つ」と対策

モバイルアプリ開発の現場で注目を集めているFlutter(フラッター)。Googleが開発したこのUIフレームワークは、効率的なクロスプラットフォーム開発を実現し、多くの企業で採用されています。しかし、アプリ開発プロジェクトの成功には、Flutterの特性と制約を正確に理解することが不可欠です。

Flutterで実現できないことはないのか?」「自社のアプリ開発でFlutterを採用しても問題がないか」そんな悩みを抱えている方も多いと思います。

結論から言うと、Flutterで「できないこと」は、スバリ、次の5つです。

  • 高機能な動画プレイヤーの実装
  • 高度なオーディオ処理
  • AR・VR機能の実装
  • リアルタイムの画像・動画編集
  • OSレベルのUI/UXカスタマイズ

本記事では、アプリ開発会社「株式会社ペンタゴン」で代表を務める筆者が、「Flutterの制約」について詳しく解説します。アプリの開発を検討中の方は、ぜひ株式会社ペンタゴンまでご相談ください。

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知っておくべきFlutterにはできない5つのこと

さて、Flutterにはできないことを解説していく前に、この記事で言う「Flutterでできないこと」とは、Flutterで実現できるかもしれませんが、工数的な無理があったり、あまり推奨できない、という意味になります。アプリ開発のプロジェクトにおいてどれだけリスクを取れるのかという状況によっても、Flutterを採用すべきかどうかの判断は変わってきます。それでは詳しく解説していきます。

できないこと① 高機能な動画プレイヤーの実装

Flutterでできないことの1つに、高機能な動画プレイヤーがあります。Flutterは多くの機能を提供する優れたフレームワークですが、高機能な動画プレイヤーの実装にはいくつかの制約があります。

具体的な制約

  1. カスタムコントロールの実装が複雑
    再生ボタンやシークバーなど、独自のUIを作成するには多くのカスタマイズが必要です。
  2. プラットフォーム固有のコーデック対応が限定的
    動画の再生には、iOSやAndroidのネイティブコーデックに依存するため、特定の形式に対応できない場合があります。
  3. ストリーミング再生時の細かい制御が困難
    バッファリングや帯域制限、画質調整などの高度なストリーミング制御は、Flutter単体では対応が難しいです。

YouTubeのような高度な動画プレイヤーをFlutterで実現するには、これらの技術やフレームワークの深い理解が求められます。特に、複雑な要件を満たすには、Flutterのスキルだけでなく、ネイティブ開発の知識も必要になることを認識しておきましょう。

ネイティブ言語で動画プレイヤーを開発することで、これらの制約は無くなりますが、iOSとAndroid別々に実装する必要があるため、開発コストは2倍になります。動画プレイヤーの実装にコストをかけるべきかアプリの特性や予算を考慮して、Flutterを採用するか否か判断する必要があります。

できないこと② 高度なオーディオ処理

Flutterでアプリ開発をする場合、オーディオ処理(音声処理)の実装が難しい場合があります。特にリアルタイム処理や高度なカスタマイズアプリを伴う要件では、Flutter単体での対応が難しい場面がある点に注意が必要です。

具体的な制約

  1. 低レイテンシーのオーディオ処理が困難
    リアルタイムの音声処理が求められるアプリケーションでは、Flutterのレイテンシーが問題になることがあります。
  2. 複雑な音声フィルター適用に制限
    イコライザーやエフェクト処理など、細かい音声加工を行うには、専用ライブラリやネイティブコードが必要になります。
  3. バックグラウンド再生の制御が複雑
    アプリがバックグラウンドにある間のオーディオ再生や通知の制御には、各プラットフォームごとの設定が必要となり、Flutter単体では煩雑になることがあります。

基本的な音声再生やシンプルなオーディオ機能には、just_audioパッケージを利用すると効率的に開発することができますが、複雑なオーディオ機能を有するアプリは、ネイティブ言語で開発するのが無難です。

できないこと③ AR・VR機能の実装

Flutterでできないこと3つ目は、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった高度な3D機能です。Flutterのライブラリにはゲームエンジンもありますが、3D機能を実装するには、いくつかの制約があります。これらの機能を実現するには、ネイティブ開発や専門的なフレームワークとの連携が必要となる場合が多いです。

具体的な制約

  1. ネイティブARKitやARCoreとの直接統合が困難
    AppleのARKitやGoogleのARCoreといったプラットフォーム固有のARフレームワークをFlutterで直接利用するには、多くのカスタマイズやネイティブコードの統合が必要です。
  2. 3D描画のパフォーマンスに限界
    Flutterは主に2D描画を前提として設計されているため、リアルタイムで高品質な3D描画を行うには、性能面で制約があります。
  3. センサー制御の細かい調整が必要
    ARやVRでは、デバイスのセンサー(ジャイロスコープ、加速度計など)を詳細に制御する必要がありますが、Flutterではこれを簡単に実現するための標準ツールが用意されていません。

高度な3DグラフィックスやAR/VR機能が必要な場合は、UnityやUnreal Engineを用いて開発し、それをFlutterアプリと連携させるアプローチが効果的です。

例えば、Unityを使う場合、flutter_unity_widgetを使えば、FltterアプリにUnityで作成したAR・VR機能を組み込むことができます。このようにFlutter単体では、高度な3D表現は難しいものの、Unityを採用することで対処することも可能です。ただし、アプリの基盤をFlutterで開発するのか、Unityで開発するのか、アプリの特性に応じて判断する必要があります。

できないこと④ リアルタイムの画像・動画編集

Flutterでできないこと4つ目は、高負荷なリアルタイムの画像・動画編集にはいくつかの技術的な制約があります。これらの機能を実現するためには、ネイティブコードの記述が必要になる場合が多いです。

具体的な制約

  1. 高負荷な画像処理でのパフォーマンス低下
    大規模な画像編集や複雑なエフェクトの適用をリアルタイムで行うと、Flutterアプリの描画性能が低下する可能性があります。
  2. フレーム単位の動画編集が困難
    動画のフレーム単位での編集やエフェクト適用は、Flutterの既存ツールでは対応が難しく、ネイティブレベルでの対応が必要になります。
  3. メモリ管理の複雑さ
    リアルタイム処理には大量のメモリを必要とするため、Flutterのガベージコレクションに頼ると、アプリのパフォーマンスが不安定になる場合があります。

リアルタイムの画像・動画編集には、メモリを大量に消費します。上手く実現するには、パフォーマンスの最適化やメモリ管理が重要です。Flutter単体で対応するには限界があるため、ネイティブ言語や外部サービスを活用して、効率的に機能を実現する設計が求められます。

高度な画像や動画編集といった機能が必要なアプリの場合は、その部分だけネイティブで開発し、Flutterで呼び出すか、アプリ全体をネイティブ言語で記述するか、検討することになります。

できないこと⑤ OSレベルのUI/UXカスタマイズ

最後に、Flutterの場合、OSレベルの深いUI/UXカスタマイズには制約があります。OS固有の機能やシステムUIの細かい調整が求められる場合、Flutter単体では限界が生じることがあります。

具体的な制約

  1. システムUI要素の完全なカスタマイズが困難
    ステータスバー、ナビゲーションバー、通知領域など、OSが提供するUI要素の外観や動作を完全に制御することは難しいです。
  2. プラットフォーム固有のジェスチャー制御に制限
    iOSのスワイプ戻り動作やAndroidのナビゲーションジェスチャーなど、各OSに固有のジェスチャーを完全に再現することは複雑です。
  3. OSネイティブの機能との深い統合に制約
    Flutterでは、OS特有の機能(例:カスタム通知、OSレベルの設定画面)を直接操作するには、ネイティブコードの補助が必要になります。

こうした深いUI/UXカスタマイズがアプリの事業戦略上、重要となるケースは少ないので、「OSレベルのUI/UXカスタマイズ」に関しては、そこまで心配する必要はないと思いますが、細かいカスタマイズをするには、ネイティブコードを書く必要があることを認識しておくと良いでしょう。

Flutterを採用すべきかどうかの判断基準

Flutterはクロスプラットフォーム開発の強力なツールですが、プロジェクトに適しているかどうかを判断するには慎重な検討が必要です。以下のポイントを評価することで、Flutterの採用が適切かどうかを判断できます。

判断基準①アプリの核となる機能

まずは、主要な機能がFlutterの得意分野(UI構築、アニメーション、迅速な開発サイクルなど)に該当するかを確認しましょう。もし、Flutterの制約(例えば高度なAR/VR、リアルタイム処理、OSレベルのカスタマイズなど)に直面した場合は、それを解決できる対処法が現実的かどうかを評価します。ここでFlutterを採用するリスクが高い場合は、部分的にネイティブ開発をするか、全面的なネイティブ開発を検討することになります。

判断基準②開発リソース

クロスプラットフォーム開発の効率性を最大限に活かすため、Flutterの開発リソース(人員、時間、予算)が十分にあるかを確認しましょう。もしFlutterの制約がある場合、それに対応するためにネイティブ開発の知識や経験が必要になります。そうしたネイティブアプリ開発の人材のリソースを確保できるかも重要な判断要素です。

判断基準③パフォーマンス要件

アプリのターゲットユーザーやユースケースに応じて、パフォーマンスが重要な要素となる場合があります。Flutterの制約がユーザー体験に悪影響を与える可能性がないかを慎重に検討しましょう。もしFlutterの制約が予想される場合、それを解消するための実装コストが許容範囲内かを見積もる必要があります。

Flutterはできないことよりもできることの可能性が大きい

ほとんどのアプリでは、今回紹介したFlutterの制約が問題となることはないでしょう。仮に制約に直面したとしても、部分的にネイティブコードを記述し、Flutterから呼び出すことで対策は可能です。

重要なのは、プロジェクトの初期段階で「Flutterでできないこと」を理解し、適切な対策を計画することです。

アプリ開発のプロジェクトを成功させるには、以下の点を意識しましょう。

  • プロジェクト要件とFlutterの特性のマッチング
  • Flutterの制約に対する現実的な対処法の選択
  • 必要に応じたネイティブ開発との併用戦略

Flutterは頻繁にアップデートが繰り返されており、こうしたFlutterの制約も徐々に解消されていく可能性があります。定期的に最新の開発状況をチェックし、より効果的な実装方法を探っていくことをお勧めします。

もし「Flutterでのアプリ開発の外注を検討していて、一度相談したい」などお考えでしたら、アプリ開発会社の株式会社ペンタゴン」にぜひご相談ください。私たちが貴社のアプリ開発をサポートし、成功へと導きます。

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